是か非か
「な……何を言っとるんや……ウチにそないなこと……できるわけないやろ!?」
アリッサムは……わかりやすぎるほどに動揺していた。
さすがの俺でもアリッサムが何かしら隠しているということは、さすがにわかった。
「そ……そうやで。霧原ちゃん。何の根拠があってそないなこと言うんや」
さすがの鍋島も少し動揺しているようだった。
しかし、霧原は余裕の表情でニンマリと微笑む。
「簡単だ。俺と伊澤は……そこにいるノエルの魔法、とやらでこの世界に連れてこられた……そして、この世界ではその魔法とやらは至極一般的に使われている……それならばアリッサムの姐さんが魔法を使っていてもおかしくないだろう」
「せ、せやけど……だ、ダーリン! ウチそないなことできへんよ~!」
「……すまん。アリッサム。少し黙っといてくれへんか」
鍋島がドスの利いた声でそう言う。
アリッサムも不味いと感じたのか、それ以上は喋らない。
「……なるほど。せやけど、それは理由にはならへんで。もし……仮にもし、アリッサムとワシが組んで魔法を使ってイカサマをしていたとする……せやけどなぁ、霧原ちゃん。ワシが失敗するかもしれへん魔法を頼ると思うんか?」
鍋島の言うことは最もだった。失敗するかもしれない魔法に頼る……もし、俺が鍋島の立場だったらそんな危険なことはしない。
なぜならば玉が確実に移動することが判明しなければ、相手をイカサマに嵌めていることにはならないからだ……それならばそんな危険な真似はしない。
「……そうだな。だからアンタは玉が消えたことを確認することはできた……そうじゃないのか?」
鍋島がぎくりととする。アリッサムの表情も引きつっている。
……なるほど。玉が消えていればまずはとにかくイカサマは成立する。
なぜなら、どのコップを選んでも玉は入っていないからだ。
問題は……今だ。
今みたいに、コップの中身を確認されている時……なんとかしてコップの中に玉を戻す必要がある。
「……だけど、消すことができるなら……簡単に戻すこともできるんじゃ……」
「それ、難しい」
と、俺の隣でそういったのはノエルだった。
「え……どういうことだ?」
「……転移魔法、特定の場所の物を消して、自分のもとに引き寄せるのは簡単……でも、特定のものを特定の場所に出現させるの、ちょっとむずかしい」
ノエルは真剣な表情でそう言っている……ということは嘘ではないようである。
「それじゃあ、あのアリッサムは……」
ノエルは小さく頷く。
「どんなに魔法が上手くても難しい技術……つまり、コップの中に玉がない可能性、あり」




