異世界だからこそ
「え……な、なんや? そないな目で見て……ウチ、何かしましたか?」
霧原に睨まれて、アリッサムは突如として狼狽えだした。
「……俺はこの席に座ってからずっと考えていた……鍋島の親父さんがもしイカサマをするとしたらどんなイカサマをしているのか、って」
そして、霧原は今一度鍋島の方に顔を戻す。
「『ハイエナ」とまで呼ばれた親父さんだ。おそらく……絶対に成立するイカサマをしているだろう、と俺は踏んだ」
「ほぉ……それはつまり……どういうことや?」
「……絶対に見破れない……俺たち人間の常識の範囲内では予想できないイカサマだな」
霧原にそう言われ、鍋島は押し黙る。
常識では予想できないイカサマ……それって……なんだ?
俺にも理解できなかった。
「……フッ。霧原ちゃん。それはおかしいやろ。ワシも人間やで? そのワシだって予想できないイカサマ……それをワシができるっていうんか?」
「ああ。そうだ……いや。おそらく親父さんも俺たちが元いた世界ではできないイカサマだった……だが、ここが俺たちが住んでいた世界とは違う世界だということを踏まえると……親父さんがやったイカサマは大体予想できる」
そう言われて瞬間的に場が固まった。俺は理解した。
そうだ……ここは異世界。
俺たちの世界では絶対にできないことをすることが可能な手段を持った者達が存在している世界。
俺は思わずノエルを見る。キョトンとした顔でノエルは俺を見返す。
「ま……まさか!」
俺は今一度霧原の方を見る。霧原はニヤリと俺のことを見る。
「ああ……このイカサマは……魔法を使えるヤツが絡んでなきゃできないイカサマだ。つまり……アリッサムの姐さん。アンタ……魔法で玉を別の場所に移動させてただろ?」




