博徒のプライド
「しかし……霧原ちゃん、ええんか? ワシがイカサマしていることわかっといて勝負を挑むってのは……ちょっと無謀やと思うけどなぁ」
鍋島はバカにした様子で嬉しそうにそう言った。
しかし、霧原は動じる様子もなく鍋島のことをジッと見ている。
「……ああ、問題ない。俺にできるのはそのイカサマを見抜くことだからな」
「ほぉ……言うやんけ。ほな、さっさと始めようか。霧原ちゃんの腕一本がかかった大博打を」
鍋島はそう言うと先程と同じように拘束でコップを動かし始める。俺は思わずその光景に見入ってしまう。
……この時点では怪しい動きは……ない。つまり、コップを動かしている最中はイカサマをしていないということである。
「……さて、選んでもらいましょか。霧原ちゃん」
鍋島は嬉しそうにそう言った。霧原の目の前には、コップが3つ置かれている。
霧原は鋭い瞳でコップを見ている。
「……ギンジ、大丈夫?」
「え?」
と、俺が霧原と鍋島の勝負を見ていると、背後から声が聞こえてきた。
見ると、そこにいたのは……
「ノエルと……里見さん」
心配そうに金髪碧眼の美少女と……幸薄そうな女性が心配そうに俺のことを見ていた。
「ギンジ……イカサマ、ナベシマにバレた?」
「え……ち、違う! イカサマは……バレてないよ……ただ……」
そう言って、俺は今一度霧原と鍋島の方を見る。霧原はジッと3つのコップを見たまま動かない。
「……霧原ちゃん。はよう選んでももらわんと……いつまでも終わらへんで?」
鍋島がそう言うと霧原が……動いた。
霧原は指を動かして……真ん中のコップを指差す。
「ほぉ……これでええんか?」
そういって、鍋島は嬉しそうにコップを掴む。
そして、そのままコップを開けようとした……その時だった。
「違う」
と、霧原はドスの利いた声で言った。
「え……違うんか?」
鍋島が唖然としていると、霧原は鋭い瞳で鍋島を見る。
「ああ……開けるのは……俺が指差した以外のコップだ」




