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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第二章 異世界賭博放浪記
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鬼の怒り

「あ……霧原さん……」


 俺がそう言うと霧原はそのまま俺の首根っこを思いっきり掴む。


「言ったよな? 俺は……こういうことをする相手は選べ、って!」


 霧原のドスの利いた声が頭に響く。正直、漏らしているのではないかと思わんくらいに、俺は恐怖していた。


 既に霧原に殴られた頬の感覚は忘れていた。むしろ、目の前で鬼の形相で俺に怒っている霧原だけを俺は見ていた。


「霧原ちゃーん? あんま怒らんと。カタギ相手に可愛そうやで?」


 鍋島がそんな呑気なことを言ってくる。それを聞いて、霧原は俺の首根っこを掴んでいた手を離した。


「……鍋島さん。アンタもアンタだ」


 そういって、霧原は鍋島のことを鋭く睨みつける。


「……『ハイエナの鍋島』。極道の世界ではアンタと博打を打つなんて馬鹿な真似、するやつは一人もいねぇんだ。何も知らねぇカタギをそそのかして、何やってんだ?」


「酷いわぁ、霧原ちゃん。ワシは別に無理強いしたわけやないで。伊澤さんがやりたいって言ったからやっただけや」


「……そうなのか?」


 そう言って、霧原は俺のことを見る。俺は何も言わずに小さく頷いた。


 それを見て霧原は大きくため息をついた。


「……わかった。じゃあ、鍋島さん。この回だけ、俺にやらせてくれねぇか」


 と、いきなり霧原はそんなことを言い出した。


 鍋島もキョトンとした顔で霧原の事を見る。


「なんやて? 霧原ちゃん……それはアカンで。こういうことは一度始めたら、始めた奴が最後まで責任持たないとアカン。いくら霧原ちゃんのお願いでも駄目なもんは駄目や」


「……わかった。じゃあ、俺もそれ相応のもんを賭けよう」


 そう言うと鍋島の前に霧原は立つ。


「ほぉ……何を賭けてくれるんや?」


「腕だ。腕一本。アンタに負けたらくれてやる」


 霧原がそう言うと鍋島はニヤリと微笑んだ。


「ほぉ……鬼の霧原がそこまで言うんなら、しゃあないなぁ……ええで。その勝負乗ったるわ」


 そういって、鍋島は嬉しそうに承諾した。


「え……ちょ、ちょっと! 霧原さん!」


 その場で座り込んでいた俺は、慌てて立ち上がる。


 そして、鍋島に対峙した霧原に話しかける。


 しかし、霧原は鋭い視線で俺を睨む。


「……話しかけるな。そこで反省していろ」


 そうドスの利いた声で言われてしまうと、俺はもう何も言えなくなってしまったのだった。

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