ナベシマ・ザ・プレイヤー その4
俺はゴクリと生唾を飲み込む。
落ち着け……後二回しかないんだぞ……
既に鍋島はコップの配置を終えている。
そして、ニンマリとした顔で俺を見ている。
確立は3分の一……大体30%……
……いや、無理だ。この中から一つを当てるなんて……
それこそ、俺だったら、間違いなく当てる自信がないと3つの中から1つなんて選ばない……
「伊澤さん」
俺がまるで崖の淵を歩くような思いをしていると、鍋島がそう話しかけてきた。
「え……な、なんです? 鍋島さん?」
「アンタ……少しアホちゃうか?」
いきなり鍋島はそんなことを言ってきた。俺はわけもわからない思いで鍋島を見る。
「え……ど、どういう意味ですか?」
「この3つのコップをから、たった1つ、ビー玉が入ったコップを選ぶ……それって、ものすごく難しいことやで?」
そんなことは……わかっている。
しかし、鍋島はそれ以外に俺に伝えたいことがあるようだった。
「……つまり?」
「せやから……アンタだったら、カモにしたい相手にどういう状況でこの賭けを持ちかけるんや?」
「え……そ、それは……」
絶対に、自分が勝てる状態……
「あ」
俺は気付いた。鍋島が何を言いたいのか、を。
そして、俺は鍋島を見る。鋭い視線は既に俺を獲物としてみているようだった。
「な? せやから……ワシが一体どういうことをしているのか、よく理解せんと……アホみたいに指を切るハメになるで」
そうだ……なぜ気づかなかったのだろう。
どう考えたって、こんな胡散臭い男が正々堂々勝負してくるはずがないのだ……
つまり、俺は今、俺が今まで他人してきたように……
鍋島に、イカサマされているのである。