ナベシマ・ザ・プレイヤー その3
……意味がわからなかった。
指……指って手の先にある……指のこと?
「え……えっと……冗談ですよね? 鍋島さん?」
すると、鍋島はいきなり懐から鈍く光る刃を取り出す。
そして、それを机の上に思いっきり突き立てた。
「阿呆。冗談でそないなこと、言うわけ無いやろ」
鍋島の目が……完全にマジだった。
俺の脳内を瞬時に警戒警報が鳴り響く。
「え……え……だ、だって……」
「だっても阿呆もないねん。ええか? アンタ、ワシの賭けの誘いに断らんかったよな? ワシだって、鬼やない。はっきり言ってくれれば、無理やり賭け事なんてやらさへんねん。せやけど、アンタは断らなかった……つまり、それはこの賭けに乗ることを承諾したってことやねん。違うか?」
……信じられないが、鍋島は本気のようだった。
俺はふと、目の前の3つのコップを見る。
こんな確立三分の一……
しかも、こんな不確かな賭け事に自身の身体の一部を賭けるだって……?
「じょ……冗談じゃないよ……」
「……まぁ、伊澤さん。そう難しく考えるのはやめようや。せやなぁ……特別に、優しいワシから一つ提案があんねん」
「え……提案?」
今にも泣き出しそうな俺がそう言うと、鍋島は嬉しそうに俺を見る。
「せや。普通は一回ミスする度に一方ずつ指をもらっていくもんなんやが……今回は特別や。5回連続でミスったら指を一本もらう……そういうことでどうや?」
……五回連続でミスる? いやいや。さすがにあり得ない。
確立が三分の一とはいえ、五回もやればどれかには当たる……いきなりイージーモードを鍋島は提案してきた。
「……え、ええ。それなら……」
「さらに! もし一回でも当てれば……伊澤さんの借金、半額にしてもええで!」
鍋島は調子よくそう言う。
しかし、俺にとってもその提案、かなり魅力的だった。
半額……そうなれば、俺が元の世界に戻れる確立もぐっと高まるではないか。
それに、五回中一回でも当たればいい……それならば、むしろ、もらったようなものだ。
「……わかりました。この賭け。乗りましょう」
俺がそう言うと鍋島は嬉しそうだった。
「決まりや! さぁ、さっさとどのコップにビー玉が入っているか、選んでくれや!」
鍋島が笑った時、どこか、魚がかかった釣り人のような顔をしていた気がしたが……そんなことは些細なことだと思ったので放っておいた。