ナベシマ・ザ・プレイヤー その2
そして、舞台は整ってしまった。
目の前には鍋島……そして、その妻のアリッサムがいる。
「さぁ、始めよか。これ、何かわかるやろ?」
そういって、既に俺の目の前に並べられているものに、俺は目をやる。
3つのコップ……特におかしなところはない。普通のコップだ。
「……コップ、ですか?」
「せや。で、これ。普通のビー玉や」
そういって、鍋島は指の先で挟んだビー玉を俺に見せる。
……なんとなくだが、これから鍋島がやろうとしている賭けを、俺は理解していた。
「さて……このビー玉をコップの中に入れるで」
そういって、鍋島はビー玉をコップの中に入れる。そして、今度はコップをそのまま床に伏せた状態にする。
「さぁ、よぉく見とくんやで」
そう言うと鍋島はいきなりコップを動かし始める。真ん中のコップを右に。右のコップを真ん中に……目にも留まらぬ速さで、ビー玉が入ったコップを確認するのは、既に不可能だった。
しばらくその動作が続いたかと思うと、途端に、鍋島の動きが止まる。
「……さぁ! わかるやろ? 伊澤さん。これがどういう賭け事か?」
鍋島に言われて……意味は理解していた。
……3つのコップ、そのどれかにビー玉は入っている……確立は三分の一だ。
「……えっと……これ、賭け事なんですよね」
俺が確認すると、胡散臭いおっさんはわざとらしく大きく頷く。
「せやで。無論、伊澤さんにはそれ相応のものを賭けてもらうで」
「……借金ですか?」
なんとなくだが……俺はそう思った。大方、賭けに負ければ借金が二倍、三倍……そういう話なのだろう。
しかし、鍋島は怪訝そうな顔で俺を見る。
「……何言っとるんや。こういうことに賭けるものいうたら……これに決まっとるやろ」
そういって、鍋島は人差し指を立てる。
「……え?」
すると、鍋島はニンマリと嬉しそうな顔で俺の事を見た。
「もちろん、極道の賭け事の代償は……指に決まっとるやろうが」




