ギンジ・ザ・ギャンブラー その5
「いやぁ……良かったなあ」
俺は思わず自分でも少し大げさと思うような感じでそう言った。
未だにノエルは信じられないという顔で俺の事を見ている。
そりゃあ……そうだろう。既に俺は2個石を入れている……そして、3個目は無理だと言っていた。
というより、ノエル自身も、無理だと理解していただろう。
しかし、俺はそれを成し遂げた……どう考えたって、不思議に思うのも仕方がない。
「ノエル」
唖然とするノエルに、俺は声をかける。ノエルは我に返って俺の事を見る。
「……な、何?」
「ノエルの番だよ。石、入れてよ」
俺にそう言われて、ノエルはようやく自分が置かれている状況を理解したようである。
「あ……う、うん」
そういって、震える指先で、なんとか一番小さい石を探している。
はっきり言ってしまおう。無理だ。
どんなに小さい石を入れても、表面からは溢れる。それはノエルも既に理解しているようだった。
そして、ノエルは観念したように、そのまま指先で石を掴み、コップの表面に持っていく。
苦しそうな面持ちで、そのまま石を表面に浸ける……そして、それをノエルは思い切って離した。
「あ」
ノエルは小さく声を漏らす。
コップの淵からは……明らかに黒い液体が無情にも溢れてしまった。
思った通り限界……ノエルはがっくりと肩を落としてしまった。
「ノエル」
そんな傷心のノエルに、俺は声をかける。ノエルは怯えた様子で俺の事を見た。
「あ……ぎ、ギンジ……そ、その、酷いこと、しないで……」
「……へ?」
いきなりノエルが言ってきたそんな言葉で俺は驚いてしまった。
無論、そんなつもりはないのだが……どうにも嗜虐心を煽る怯えた表情をしてノエルはそう言った。
……もっとも、ノエルにはこれから少し無茶な要求をするのだが。
「ああ、そんなことはしないよ。ただ……一つ頼みたいことが有るんだよ」
「え……何?」
すると、俺は思わずニンマリと微笑んでしまいながら、ノエルを見る。
「……俺の魔物狩りのノルマ……免除してくれないかな?」