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異世界で、ケジメつけます!  作者: 松戸京
第二章 異世界賭博放浪記
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ギンジ・ザ・ギャンブラー その3

「に、二倍……ぎ、ギンジ……本気?」


 さすがのノエルも驚いたようだった。信じられない様子で俺を見ている。


「ああ。本気だよ。俺、嘘はつかない主義でね」


 ニヤリと自信満々でそう言う俺に、ノエルはもはやそれ以上は突っ込めないようだった。


 小さくため息をつくノエル。


 すると、ノエルは俺が渡した中で一番大きい石を掴み、それをコーヒーの中に入れた。


「お、おお……!」


 表面は大きく揺れたが……コップからは一滴も溢れなかった。


 ノエルは少し緊張していたようだったが、事を完遂すると自信満々で俺のことを見る。


「簡単。あと一個、大きい物を入れられれば、私の勝ち」


 なるほど……確かに、後、一つ大きな石が入れば、表面はぎりぎり均衡を保てるかそうでないか……という感じだ。


「あ、あはは……意外に強いじゃないか。そうだなぁ、俺もどんなに小さい石でも三個目はかなり厳しそうだなぁ」


 そう言いながら俺は、今度は黒く小さい石をコーヒーの中に鎮める。


 表面はかなり動き、既に淵から零れ落ちそうだったが……なんとか耐えた。


「ふぅ……で、ノエル。マジで大きい石を入れるわけ?」


「……入れる。私、できる」


 かなり真剣な面持ちで、ノエルはそう言いながらかなり大きめの石を持つ。


 俺は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。


 これでノエルがコーヒーを零してくれれば楽である……もっとも、零さなければ賭けは続くわけだが……それ相応の手段は既に講じている。


 ノエルの手は少し震えていた。


 思わず俺も緊張してしまう……


 と、石はノエルの指先を離れた。


 既にコーヒーの表面はほぼ限界といわんばかりに激しく揺れる……そして……


「……耐えた」


 霧原のドスの聞いた驚く声が、俺の部屋に響く。


 実際、コーヒーの表面は激しく揺れたが、コップの淵からは一滴も溢れなかった。


 さすがのノエルも大きく息を吐く。そして、得意気に俺の方を見る。


「ギンジ、勝負、着いた」


 ノエルは誇らしげに微笑みながら、俺が思った通りのセリフを吐いたのだった。


 無論、俺はノエルがそのセリフを言うのだとなんとなく予想していたのだけれど。


 そして、俺は知っていた。


 こういう勝負で、勝利を確信した奴は、既に敗北しているのだということを。

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