ギンジ・ザ・ギャンブラー その1
その夜、俺の部屋にはノエルと霧原がいた。
「……えっと……どうして、霧原さんがいるの?」
俺は思わず訊ねてしまう。
「タカヤ、ギンジのイカサマを見張らせます。おかしなことをしたら、タカヤに教えてもらいます」
ノエルは得意気にそう言った。なるほど……霧原は俺の見張り役というわけか。
霧原は鋭い瞳で俺のことを見ている。
「え、えっと……つまり、おかしな素振りを見せたら霧原さんは賭け事を制止するってことですか?」
「ああ、そうだ」
つまり、よっぽどバレバレな手を使ってしまうと、ノエル及び霧原に賭け事を停止させられてしまうということだ。
……まぁ、俺がそんなバレバレなことをするわけがないのだけれど。
その時、台所かピーッと、ヤカンが沸く音がした。
「ああ、できた」
俺はそそくさとヤカンの方に向かい、そして、コップには、昼間、里見に今一度アリッサムの所で買わせてきたコーヒーのパックを浸す。
程なくして黒い液体が染み出してきて、コーヒーが出来上がった。俺はニヤリと微笑んでそれを慎重に持っていった。
「……さて、準備はできた」
そういって、机の上に、コップに並々……というか、ほぼ限界ギリギリまで注いだコーヒーを置いた。
「……これ、今日、ギンジが飲んでた、もの?」
ノエルが不思議そうに黒い液体を眺める。
「ああ。そう。今からこれを使って賭け事をしよう」




