追求
「あ、ああ。ノエル、どうしたの?」
ノエルは眉間に皺を寄せて俺を見ている。俺は……あくまで冷静を装うことにした。
というか、悪いことは何もしていないのだ。いや、まぁ悪いことはしていなくはないのだが……ノエルに対し引け目を感じる必要はない。
「……ギンジ。魔物狩り、順調、ですか?」
カタコトの日本語でそう訊ねてくるノエル。
「え……あ、ああ。まぁまぁ、かな……ねぇ、霧原さん?」
俺は霧原に顔を向ける。霧原は何も言わずに無言で俺のことを見る。
「……さっき、弁当、買ってましたよね? おかしくない、ですか?」
「へ? な、何がおかしいの?」
「ギンジ、1人で魔物、狩れません。タカヤいないと、無理。でも、お弁当買えるお金、ある……おかしい、です」
ノエルはどうやら……感付いているようである。
まぁ、考えてみれば魔物をまともに狩っていないヤツがいきなり羽振りがよくなったらそう思うのは当たり前のことで……
「あ、あはは……ま、まぁ……そう……だね」
「ノエル、その原因、わかります。今、このギルドハウスで流行っていること、ギンジ、原因だと思います」
ノエルはその青い目を鋭くさせて俺を見る。俺は思わずゴクリと生唾を飲み込んでしまった。
「え……な、なんのことかわからないなぁ……」
「とぼけるの、無駄です。こんな遊び、今まで誰もやってませんでした。それなのに、ギンジ来てから始まりました……おかしい、ですよね?」
問い詰めるようにそういうノエル……俺はなんとか言い訳を考えようとしたが……無理そうだった。
それならばいっそ清々しく認める……こちらの方がいいと思った。
「あ……ああ。そうなんだよ。俺がちょっと教えたらあっという間に広まっちゃって……で、でもさぁ。別に健全な遊びなんだよ? 賭けるお金も少額だし……ノエルだって、その……近藤さんの所にいた時、そういう遊び、見たことあるんじゃない?」
すると、ノエルはさらに表情を険しくして俺を見る。
「……組長、そういう所、私、連れて行きませんでした。だから、私、知りません!」
少し怒った調子でそういうノエル。
俺は意外だったので、思わず霧原を見てしまう。
「ああ、近藤の親父は賭け事はあまり好きじゃなかったからな」
「あ、ああ……そうなんですか」
「でも! 組長言ってました。賭け事、やっているヤツは疑え、って!」
そういって、ノエルはビシッと俺に向かって人差し指をつきだした。
「ギンジ! アナタ! イカサマ、してますね!?」