狩るか狩られるか
「悪いな。四万ペスカ。貰って行くよ」
無論、俺は勝った……いや。狩った。
丁度いいカモになる存在を狩ったのである。
兵士風の男は悔しそうな顔をしている……といっても、別におかしなことはないはずである。
コインの表裏の確立は2分の1……負けることも当たり前なのである。
「……ちょ、ちょっと待てよ」
そのままその場を離れようとする俺に、男の声が聞こえてきた。
まぁ……ある程度予想はできたことではあるが、やはり男は声をかけてきた。
俺は拒むこと無く振り返る。
「ん? 何?」
「な、なぁ……もう一回いいか?」
と、男がそう言うと、連れの男が少し怪訝そうな顔をする。
「お、おい……次の参加料はもしかすると四万ペスカか? 負けたら八万ペスカだぞ? ちょっとやりすぎじゃ……」
「ま、まぁ……そうなんだが……」
男はさすがに迷っているようである。八万ペスカ……俺が魔物を狩ったのでは到底到達できなそうな金額である。
これは……是非とも頂いておきたい。いや、もしかすると、この男からはそれ以上の金額を引き出せるかもしれない……!
俺はそう直感的に感じると、男の方に近寄っていった。
「わかった。やろう」
そういって俺は、今度は四万ペスカをおもいっきり机に叩きつける。男たちは少し面食らったようだった。
「ただし……これは俺の全財産だ」
「え……」
男は完全に呆然としてしまった。
無論、真実である。
現在俺はこの賭けで勝ち取った4万ペスカしか持ち合わせていない。
つまり、ここで負ければ完全に一文無し……それどころか、負け払いは借金しなければいけないレベルである。
「で……どうするね? 俺はこれ以上の金額は賭けられない……もし、アンタがそれ以上を望むなら……俺は知り合いに借金してでもアンタに負け分を支払うが」
これは、俺の誠意である。
角刈りヤクザや根暗女から借金できるかどうかはわからないが……とにかく今から俺は全財産を賭ける……
つまり、相手の男にもそれ相応のものを賭けてもらう、という意味の行動だった。
「ほ、本当か?」
「ああ。本当だ」
そう言うと、兵士風の男はポケットに手を突っ込んだ。
中から出てきたのは……ペスカの札束だった。ざっと見、100万……いや、200万ペスカはありそうである。
「だったら……参加料として200万ペスカだ。今俺が持っている手持ち全部賭けるぜ」
獲物は……エサに食いついたようだった。