はじめてのまものがり 1
先頭を歩くノエルについて、村を出る。村を出ると広大な草原……初めてこの世界に来た時に見た光景を同じ光景が目の前に広がっていた。
「えっと……ノエル。魔物って……どんなヤツなの?」
俺がそう訊ねても、ノエルはニコニコしているだけだった。日本語がわからないわけではないので……教えてはくれないらしい。
「……おそらく、今日狩ることができるのは、フェンリルだと思います」
と、そんな俺に里見が暗い声で返答してきた。
「フェンリル? どんな魔物なんだ?」
「……犬というか、狼というか……そんな感じの魔物です」
里見の説明は要領を得なかったが……犬型の魔物ならば、なんとなく序盤の感じだな。
だったら、トカレフで一撃かもしれない……といっても、俺がトカレフを撃ち、魔物にその弾をあてることが出来るかは別問題なのだが。
「あ! いましたよ!」
と、ノエルが素っ頓狂な声をあげる。
見ると、俺達の少し前方に狼のような犬のような……とにかくそんな生命体が存在していた。
「あれが……フェンリル?」
「……ええ。そうですね」
里見がそういうので……そうなのだろう。
「はーい! では、みなさん。がんばってくださいね!」
そう言うとノエルはなにか笛のようなものを懐から取り出した。
そして、それを口に加えたかと思うと、けたたましい音が辺りに響いた。
「な……何?」
思わず耳を塞いでしまう音……しかし、次の瞬間にはノエルの姿はなかった。
「え……の、ノエルは?」
「おい。あの小娘のことはどうでもいい。今は、アイツに集中しろ」
と、霧原が険しい声でそう言う。俺はそう言われて今一度フェンリルがいる方向へ顔を向けた。
フェンリルは、なぜか怒りの形相でこちらを睨んでいたかと思うと……そのまま一目散に俺達のいる方向へと駆け出してきたのである。