極道との会話から始まる異世界生活 3
「あははっ! 異世界だってよぉ! ホント笑っちゃうよなぁ!?」
それから数時間後……
俺は、なぜか爆笑していた。そして、しきりに隣の霧原の肩をポンポン叩いていた。
「……お前、酒、弱いんだな」
霧原はさも迷惑そうにそう言うが、俺にとっては関係ないことだった。
「あぁ? あははっ! そうそう! あんまり飲んだこと無いからねぇ……でも、嫌いなわけじゃないよ?」
そういって、俺は目の前の缶ビールを一気に口に含む。
……こんなことをしても変わらないのだ。俺は、どうやらかなり危険な異世界に送りこまれてしまった。
そこで、どうにかして一千万円の借金を返さなければならない……
「……そんなことできるわけねぇだろ!」
俺は思わず怒鳴ってしまった。霧原が俺のことを鋭く睨みつける。
「……大体、なんでヤクザが異世界にいるんだよ……異世界って言ったら、金髪エルフ美少女とか、猫耳魔法使いとか……そういうのがいる場所じゃないの!? ねぇ、霧原さん!?」
「……俺に聞くな。分からん」
「それなのに……なんだよ! あのノエルとかいう女の子はよぉ! 全然俺に優しくねぇし……大体ヤクザと知り合いって時点で……ねぇ?」
俺がそう言うと、霧原はなぜか少し考えこんでしまった。
……まぁ、確かに自分の親分が、謎の金髪美少女を囲っていた……子分である霧原にしてみればあまり気持ちの良い話ではないのかもしれない。
「大体……ここに来てから出会ったのはノエルと……ああ! そうだ。隣になんかいたよね? あの幸薄そうな女の人……」
その瞬間だった。コンコンと、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「……え? だ、誰?」
思わず俺は霧原の背後に隠れてしまった。霧原はため息をつきながら立ち上がり、玄関に向かっていく。
そして、扉を開ける。
「……アンタか。何の用だ?」
霧原の口調からして……鍋島ではないようだ。となるとノエル? しかし、ノエルが一体何のようで……
しばらくすると、玄関から二人分の足音が聞こえてきた。俺は思わず身構える。
「おい、来たぞ。幸薄そうな女が」
「へ?」
と、ガタイの良い霧原の背後から現れたのは、申し訳なそうに俯いている黒髪の女性……
「あ……え、えっと……」
「……里見……エレナです」
そういって、里見は、申し訳なさそうに深々とお辞儀しながら、自身の名を名乗ったのだった。




