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きゅー。

アクセス数8300越えありがとうございます!(*´∇`*)

少し間が空いてしまった上に、内容も少ないような気がします……。

よろしくお願いします!

「ビッチヒロイン撃退策会議ー!」


いえーい! とテンション高めに右手を突き上げると、蓮は冷めた目で見てきて、恥ずかしくなって手を下ろす。

私は同じテンションでがんがん来てほしかった。


気を取り直して一枚の紙を前にボールペンを持つ。



「ていうか、俺思うんだけど蓮は俺なんだからそのビッチ? ヒロインを好きになったりしないし。この会議意味ある?」

「あっま──────い! あまいですよ!」



この世界は【アリス】だよ!?

そりゃ、私たちは生きてるし、原作通りにはならないのはわかってるよ。

でも強制力というものがありましてね、私はそれが不安なんだよ。


もし、だけど。

蓮が可愛くあざといヒロインを好きになったらどうするの。

一生懸命頑張ってるヒロインを見たらどうするの。

彰ちゃんと二股かけられたらどうするの。

彰ちゃんと仲悪くなったらどうするの。



「……ならないでしょ。一生懸命なのは和泉もだし」

「っだから、そういう話じゃないですから!」

「ただ笑って、ただいい子で、ただ俺に好意を向けてるくだけのやつは好きじゃないよ。張り合いがないでしょ」


……好きな子に張り合いを求めてどうするんだこの人。



「……というか」


はあ……。と蓮がだるそうにため息をつくから顔を上げる。




「俺、好きな子いるしね」





カッツーン。と床にボールペンが落ちる音だけが響く。


…………はぁぁぁ!?

声にならない叫びを知ってか知らずか、目の前の蓮は優雅に紅茶に口をつけている。

私はパクパクと口を動かして、落ちたペンを拾う余裕もなく。



「ふ、アホ面」



わかってるし!!!

アホ面だろうよ! 私は悪くないがな!?



「……え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ。いつの間に!」



人を好きになるなとは言わない!

そんなこと思うほど私はこの人に依存はしてない!


でも一応婚約者だし、大体婚約者いるくせに好きな子とか作ったりするからヒロインもビッチ化するじゃないかと。


てか、久世先輩は好きな子なんていなかった、はずだ、恐らく。

周りに群がるやつらをうっぜえ。と一掃してしまう人で、そんなときの記憶が七歳くらいからあったなら、一条 蓮になったからってそう簡単に好きな子なんて、



「うん、それこそ前世からだしね」



……ぜん、せ、?



人を寄せ付けない久世先輩。

私を何だかんだ言いながら受け入れてくれた久世先輩。

たくさん話して、たくさん叱られて、そしてたくさん優しくしてもらった。



安心していた、私だけの久世先輩だと。


……どうして?


ただの先輩後輩だったじゃないか。

その記憶はきちんとある。

ある、のに。


どうして無意識に、そう思っていたりしたんだろう。

それが蓮に変わったって、その関係に変化はないとも、どうして信じていたんだろう。




──────何かを忘れているような気がする。



忘れて、る?




「……誰、ですか」

「んー? 何、気になるの?」



はは、と向かいのソファーに腰掛けてる蓮は笑う。

気になる、けど、それより知りたいことがある。



「……っ、今日は帰ります」



ボールペンを素早く拾って私の座ってるソファーと蓮の座ってるソファーの間にある目の前の机にだんっと置いて、立ち上がる。



「和泉、待って。いきなりどうし……、」



私の手を掴みながら立ち上がって私の顔を覗き込んだ蓮の動きが止まる。

息を飲んで、戸惑ってるのを感じた。


……きっと、私は涙目だ。

泣いては、ない。



「先輩、」



その言葉に、掴んでいる手の力を強くした蓮は口を開こうとする。



「私は誰ですか。……違う、橋本 茜だけど、なのに、何で知らない感情があるの……?」



二つ上の先輩。

一緒の部活の先輩。

餌付けされてた先輩。


そんな人に対しての、いつのまにか出来上がっていた独占欲。


それは、記憶を取り戻す前の私が蓮のことを好いていたからではない。

だって王子様のとなりにいるのは、お姫様であってほしくて。

そのお姫様は私ではなくてよかったの、努力したって王子様に認められなきゃお姫様にはなれないんだから。


だから、その感情は憧れに近い好意で、それを知ってたからこそ、その独占欲は。



“バカだな、お前は”

“……ですよねぇ……”

“……バカなお前を、幸せにしてやってもいい”




それは、どうして。




「っ教えてくださいよ……!」

「……和泉、ゆっくりでいいって言ったよね」

「何で、ですか。先輩は知ってるんですよね!? ゆっくりなんて嫌ですよ! どうして先輩は、平気なんですか…!?」



ドアの向こうがざわざわしている。

多分、他の生徒会役員が仕事をしていたときに、私と蓮の声が聞こえて、珍しく私が声を荒げたりしてるから混乱してるんだろう。


……混乱状態は私もだ。

今はちゃんと話せる気がしない。





「蓮。この話はまた今度しましょう。ぶっちゃけもうビッチ(ヒロイン)とか蓮の好きな人とかどうでもいいです。今日は帰ってとりあえず落ち着きます」

「は、ちょっと待って、どうでもいいの? ……まあ、いいけど、さ。いやよくないんだけど、うん、あー……じゃあ送る」



蓮らしくなく、しどろもどろにごにょごにょと何か言ってたけど、すぐ立ち上がって行こ。といつもの声色で首を傾げてきたから、送ってもらうことにする。

送る、と言っても、待機してる運転手(東野)のおころまで一緒に行くだけだけど、そんなんで婚約者アピールできるなら、うん。



会長専用の部屋から出ると、来ていた役員が一斉にバッとこっちを見る。

まあ、喧嘩してたように聞こえたんだろうけど、ただ私が取り乱しただけだからそんな困惑した視線向けないで。



「お邪魔しています、先輩方」



にこっ、と微笑めばその場の空気はとりあえず和んだ。

うん、よかったよかった。



「和泉」


では。と頭を下げて、蓮の後ろについて生徒会室から出ようとしたとき、彰ちゃんらしき声に呼び止められて振り向く。



「何でしょう、高良様」



……そんな、眉を潜めなくても。

だってこのアウェイ空間で、“彰ちゃん”とか呼べるわけないじゃないですか……。



「……よく、わからないんだが。大丈夫か?」



……大丈夫ではないよな。

てか、何が?


今日様子がおかしかった(自覚はある)ことなのか、蓮と口論みたいになってたことか。



「……いや、また明日」

「? は、」

「高良様が“また明日”って!!!!!!」



はい。と言おうとすれば、役員の女子生徒数人がバタバタと倒れる。

うん、何!?


いや、そりゃクールが売りの彰ちゃんだから、珍しいのかもしれないけどさ。

久世先輩と比べれば愛想いい方だよ!?

先輩の強い当たりを受けていたからか、彰ちゃんを全然クールだとは思えない……。



「和泉、早く行こ」

「……うえ、いやいや、あれ」

「んー? そんなの彰弘が和泉にあんな表情向けるからじゃん。自業自得だよ」


あんな表情って、いつも通りだったじゃん……何。


「じゃあ、彰弘。後始末よろしくね」

「……チッ」


彰ちゃん、腹黒王子様に舌打ちとか強いなおい!











「ん。じゃあ、ゆっくり休みなよ? 考えすぎで寝不足とか怒るからね?」

「……ないとは断言できませぬ……」

「あ?」


あ? って!! こわっ!!

強い当たりに慣れてるからって、怖くないわけじゃないんだからな!



怯えながら車に乗り込んで、笑顔でひらひらと手を振る蓮に、私もおずおずと手を振り返す。



「どうかなさいましたか、和泉お嬢様」

「……何もないわ」



……疲れた。

記憶思い出し直後な上に病み上がりだぞ、このやろー。


寝る。

帰ってすぐ寝る。

メイドさんにおいしい紅茶入れてもらって、それ飲んだあとすぐ寝る。








「……バカなお前を、幸せにしてやってもいい」







…………あれは、何の記憶?



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