よーん。
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たくさんの人に読んでもらえて嬉しいです。
久世 樹先輩。
前世でも今世でも私と二つ違い。
久世先輩は、顔は整っていたけど寄せ付けないオーラがあって……ていうか、目付き悪くて警戒心が強かったんだよね、先輩って。
そんで成績もよくて部活(陸上部)もうまくやってて美形だし、とにかく完璧な人だったから迂闊に近づけないけど、基本面倒見のいいおかんだったから陰では慕っている人がたくさんいたけど、先輩は特定の人をそばには置かなかった。
いやていうか、前世でも美形で優秀で陸上部のエースで勝ち組だったのに、今世で蓮様ってどんだけだよ!!
まあ、久世先輩は黒髪で冷たい雰囲気のイケメンさんで、蓮様は栗色の髪の柔らかい王子様な雰囲気だから、違うっちゃ違うんだけどさ。
でも私は1回久世先輩に絶望を味わせたいと切実に思う。
私は同じ部活の後輩で、基本的に流されるままに生きてた私は死ぬほど不器用だったから、先輩のおかん体質を目覚めさせてしまったわけで、なぜか餌付けをされたり……まあ色々世話を焼いてもらい、そして私は先輩に懐いてかなり仲が良くなったわけである。
何度も言うけど、私は自己主張が強いタイプじゃなかった。
けど、先輩にはがんがんいった。
恋愛感情があったわけじゃないですよ、だって釣り合わないし。
まあふざけて、愛してます! とか言ってた気がするけど、あくまで冗談で。
先輩は無愛想だけど、よほどうざくない限りは相手してくれるから、何かそれがすっごく嬉しかったから、だから自分から絡んでいけた。
で、私はそのとき【アリス】……というか“小野瀬 和泉”にかなりハマっていたので、先輩に強引に押し付けて、そんでそんで意外にも先輩は【アリス】にハマった。
先輩いわく「気が向いたから最初だけ読んだら和泉が可愛かった」らしい。
でーすーよーねー!!!! とやったらテンションの上がった私は先輩に【アリス】というか“小野瀬 和泉”のことを詳しく語りまくり、見事に先輩は小野瀬 和泉推しになりましたというわけですよ。
まあ、だから“一条 蓮”になったというわけではないだろうけども。
あ、忘れてましたよ。
久世先輩も私と一緒に交通事故で死んだんです。
またまた軽く言ったけど、ヘビーだから!
だって両方高校生だったのに死ぬとか、ほんと悲劇!
まあそれは置いといて、同じ日に死んだので年の差は変わらないし、まあ何か印象が強かったのか知らないけど、蓮様が久世先輩という確信みたいなものがあったんじゃないかなぁと思うわけで。
だからって何で数少ない記憶の中で先輩のことをやたら覚えてるんだ? っていう疑問は残ったままなんだけど。
……そういえば、事故に遭ったのは帰り道だと思うけど、何で久世先輩と一緒だったんだ……?
そりゃ、懐いてはいたけど、家は反対方向だった気がするし、送ってもらうような関係ではないはず。
というか、事故に遭う前の記憶が、本当におぼろ気で……あれ、何だっけ。
大切なことを、忘れている気がする。
「……み…………茜……?」
目を開けたら、蓮様の顔。
あー、そっか……久世先輩だ。
抱き締められて、名前を呼ばれて、そろそろ限界で、久世先輩の前で倒れたんだった。
今は私の部屋のベッドの上だと、思う。
「いきなり倒れて、まあバカだからキャパオーバーは仕方ないと思うけど。で、担いで外で待ってた東野のとこ行って、小野瀬家の車に乗せて家まで運んだ」
説明ありがとうございますと言いたいところだけど、感動の再会したばっかりなのにバカだとかひどくないっすか、ねえ。
「東野とお前のお父さんにすっげー睨まれた俺の気持ちわかります?」
東野は“小野瀬 和泉”の運転手として作中に出てくるだけあって、わりとイケメンである。
もう蓮様はいいから東野と和泉をくっつけろと最後ら辺でファンは思っていた。
「……いや、先輩。蓮様のお顔でその口調逆に萌えます」
「黙って。オタク」
「ええっ。てか先輩も【アリス】好きだったじゃないですか!」
「それは茜が…………あー、もういい」
ええ、気になるじゃないですか。
てか、先輩あっさりしすぎじゃありません?
もっと戸惑ってもいいところなのに、先輩につられて私も普通に会話してるし。
……てか、先輩、“遅い”とか言ってたけど、いつから前世の記憶があったんだ?
私が記憶を思い出す前、和泉をやってた頃から中身は久世先輩だった?
そんで私と同じく、和泉は“橋本 茜”何だろうなぁとか思ってた?
「思い出したのは初めて会ったとき。いつだっけ、七歳くらいかな?」
「……なな、さい」
「うん。あー茜じゃんって何か根拠もないのに思ってた。でも茜は全然思い出してないみたいだったし、とりあえず様子見かなーって思いながら“一条 蓮”してた」
何でなんだろう。
何で私も先輩も、姿形が変わって、その上漫画の中の登場人物なのに、お互いをわかったりするんだろう。
思い出していない、穴だらけの記憶の中に、大切なものがあったりするんだろうか。
「…………あー、茜、記憶完璧じゃないんだ?」
「だって今日、思い出したし。……先輩は、わかるんですか?」
「今日かよ。行動力すごいね」
話を逸らす久世先輩を見つめると、先輩は蓮様で、蓮様はするけど先輩はしないみたいな柔らかい笑顔をしてて。
その笑顔はとても好きなんだけど、でも何故か胸がきりりと痛むから、だから。
「…………運命、だよ」
そう言って、笑って。
くしゃりと私の頭を撫でた久世先輩。
久世先輩らしくないその台詞は、何だかよくわからないけどやけに説得力があって。
それでいいかな、なんて、思ったりして。
「泣いてた」
私の頬をゆるゆる撫でる。
それが恥ずかしくてばっと顔を逸らすと、楽しそうな笑い声が聞こえる。
……こいつ、楽しんでるぞ……!!
「もう今日は寝れば。明日朝迎えに来るから」
私のベッドの横に座って話をしていた先輩が立ち上がって、体を起こしていた私をとんっと押して横にさせる。
逃げられるようで不安になって、ぐいっと高等部の制服の裾を掴む。
「……先輩」
「ゆっくりでいーじゃん。だから泣かないで。それでも不安になったら、俺の前で泣けば」
そうやって、また私の頭を撫でるから、不覚にも安心してしまって、瞼を閉じた。
今私は中三で、蓮様(久世先輩だとかごっちゃになるから統一することを先輩と話し合った方がいいかもしれない)は高二。
ヒロインが来るのは私が高一のときだから、あと一年。
蓮様が先輩なんだから、あのヒロインのビッチさを知ってる先輩がヒロインに恋する可能性は低いけど、ないわけではない。
てかそうでなくても復讐くらいしてもよくない?
それにもしターゲットが高良だとしてもいじめは発生すると思うし、蓮様に和泉以外が近づくのですら反感を買うし、そのいじめの首謀者を無視するのは和泉の立場上無理だ。
だから学園追放の可能性はなきにしもあらず。
そしてここは【アリス】の世界だ。
ヒロインの都合よく事が運んでも、補正というものがあってもおかしくはない。
───────ヒロインが入ってくるそれまでに、私にできることは何なんでしょう、先輩。