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side 高良 彰弘。3

更新が遅くなってしまって申し訳ないです(;▽;)

アクセス数20000越えありがとうございます!

泣いて喜んでます!( *°ー°* )

キャーッと、中等部の校門から女生徒の甲高い声が聞こえてきたのは、今朝のことだった。


昨日は和泉が病気で休んでいたみたいだから、今日はおそらく蓮は朝イチ出迎えに行くんだろうなぁとか考えを巡らせながら俺は車に乗っていたけど、まさか朝から悲鳴を聞くことになるとは。


というか、あの何でもできて超ハイスペックの和泉が病欠だとか、今日は嵐なんじゃないかと昨日から密かに心配していたのだけど、来てみれば何だ。

逆に喉がやられないのかと、女生徒の心配をしてしまう。


車から降りて、そっと中等部の校門に目を向けると、蓮の家の車が前に止まっている。


あー、蓮登場でこの歓声か?

でも蓮が和泉と一緒に登校、だなんて前から何度もあったことだし、周りのやつらは微笑ましいく(若干の妬みはありつつも)祝福していたのではないのか。

と考えていると、ふと目に留まった二人の男女。

美男美女の、福眼福眼。

いつもそれは思うのだけど、今日はやたら近いから、ほんとに。


蓮は和泉の髪に指を絡ませて、普段俺たちにのろける顔で和泉を見ている。


いつもはそういうの表に出さずに裏で悶えていたじゃないか。

アピールの方向性を変えたのだろうか。


和泉の方に視線を向ければ、何故か少し怒鳴っているような、感じ。


前までの和泉なら、“蓮様美しい…!”だとか、“この私が滅相もない! 逃げるが勝ちだ!!”とか、まあそんな感じで逃げ出すところではないか。


今日の和泉は病み上がりだからか、蓮に食って掛かっている。

そしてそして、様子がおかしい和泉に、これでもかと甘ったるい視線を向け続ける蓮。

和泉はというと、様子は変われどその鈍さには変わりがないようで、むしろ人前で、それも目立つところで接触されたのが気にくわないよう。


そう、“気にくわない”のだ。

“照れる”とか、そういうのではなくて。



わけがわからないと、考えることを放置する。

高等部の校門で、その様子をひたすら眺めているのは不審者のように見えたかもしれない、と周りを見渡せば、あの大きな女生徒の悲鳴に気がつかないはずもなく、そして蓮と和泉が揃っているとわかり、ほとんどの生徒がそこを眺めていた。


「高良様、おはようございます」

「…ああ」


挨拶される声で我に返って、少し低い声で返事をする。


蓮には和泉という完璧な婚約者がいるからか、滅多に話しかけるバカはいないのだけど。

俺には婚約者もいないし、まあまあ恵まれるとは思うから、俺を狙ってるやつはいるんじゃないかな、という。

そんな考えを持っているからか、軽く人を考えれなくなっていたり。


それより、“高良様”か。

和泉が呼ぶのと一緒の、その響きは。


和泉だけが特別だと、思い知らされてしまうから、だから嫌いだ。









「和泉を送ってきたのか?」



少しいつもより遅めに教室に来た蓮にそう問う。

うん、と満足げに頷く蓮を見て、周りの女子が静かに悶えている。

てか教室まで送り届けるとか。

和泉多分今頃は質問攻めされてるだろうな、ご愁傷さま。とか密かに同情。


「今日は和泉は逃げなかったんだな」

「あー、見てたの?」

「…まあ、あれだけ注目されてれば」

「そっか、注目。よかった、計算通りだ」


あは、と笑いを落とす蓮が、こう、いつもより一層腹黒のような。

こいつは人一倍頭の回転が速いから、計算ずくめというか、とりあえず怖い。


蓮曰く、「俺にとっての計算外は、基本的に和泉の存在だから」らしい。

とにかく怖い、愛が怖い。


「思うことがあって」


ん? と顔をあげる。

蓮は自嘲気味に笑っていた。


「忘れ去られるっていうのは、当たり前だって割り切って、そんで理解してたつもりでいても、つらいんだね」


意味深で、俺には理解ができなくて。


でも蓮がそういう悲しそうな顔をするときは、絶対和泉の話で。

蓮に対しての、和泉に対しての、どこか大人びていて追い付けない、そういう違和感に、その言葉は関係していたりするのだろうか、と。













「小野瀬」

「た、高良様…」



たまたま生徒会で残っていた仕事があって、昼飯の前にちゃっちゃっと終わらしておこうと蓮に先に行っといてくれ。と言って偶然廊下を歩いていたら、和泉と遭遇した。


すごすごと頭を下げて挨拶するから、堅苦しいからやめろ。と言って頭を上げさせる。

立場的には和泉の方が上のはずなのだけど、いつも畏まってる。

まあ、そこら辺の女みたいに媚びへつらうか、傲慢に振る舞うよりは大分いいんだけど。

というか、何で高等部の廊下にいる。


俺を何故か哀れんだ目で見ている和泉に話しかけるが、返事がない。



「………小野瀬?」

「…すみません。一瞬意識が飛びまして」

「……それ、大丈夫なのか?」

「はい、大丈夫です。蓮様がどちらにいらっしゃるかわかりますか?」


蓮を、探しているのか。

前までの和泉なら、徹底的に避けていたはずなんだけどな、愛ゆえで。


「……ああ、食堂じゃないか?」


少し驚いて、返事が遅れる。

不審に思われたか? と繕おうとすれば、和泉のお腹が鳴った。


…珍しいな、ほんと…!

思わず笑ってしまいそうになるのを必死に押さえて、声を絞り出す。


「……昼食べてないのか?」


和泉は和泉で誤魔化そうとひたすら出来のいい頭をフル回転してるようだから、こっちは普通に会話をしてあげることにする。



「……う、はい、すみません」



顔が赤くなってる。

それは、蓮の話をしない限り、滅多にしないことだった。

とりあえずお腹がまた鳴らないようにか、ぐぐぐっとお腹を押さえて、そのまますばやく頭を下げてここから去ろうとする和泉をとりあえず呼び止める。


「今日おかしくないか?」

「へっ、いやぁ、そんなことはっ、はい!」


いや、その返答がまずおかしいのだけど。

挙動がキモいというか、うん。

要領のよく、努力の跡すら出さず、ボロを見せず、そんな和泉に似合わない言動を、今日はよくする。


不審だ、本当に。

中身が入れ替わったような、でも根本的には何も変わっていないような。


思えば和泉は前から少し思考が人とずれていたところがある。

それが全面に出てきたように見えなくもない。



「……まあいい。一緒に食堂行くか。小野瀬」

「……はい、高良様」


落ち着きを取り戻したようで、諦め半分に頷く和泉はいつも通り。

そう、いつも通りの“高良様”。


さっきの言動がとにかくおかしかったからか、いきなり堅苦しくなった態度にイライラとする。


「前から思ってたけどその堅苦しさはどうにかならないのか」



そう言うと考え出した和泉。

…へぇ、即答拒否じゃないのか、ほんと珍しい。

そしていきなりキリッと決心した顔で、


「……あー……っと、じゃあ、彰ちゃんで……」


と、真面目に言ってくる和泉は、やっぱりどこかひたすらおかしいやつだった。


彰ちゃんとか。

いきなり親密すぎないか。

そのチョイスが小野瀬家令嬢らしくも和泉らしくもなく、だからこそ笑いが込み上げる。


さっきは我慢できたが、今度は耐えきれなくて爆笑してしまった。



そんな俺をえっえっとまた挙動不審で見つめてくる和泉を見て、また吹き出してしまった。



「ほんと、今日の和泉は面白いな……!」

「えっいや、すみません。撤回で! はっ、和泉呼びもなしの方向で!」

「やだ」



自分でもキャラ崩壊かと疑う。

今日の泉は顔に出やすいようで、絶望に満ち溢れた表情。


そして頭を抱えてふらりとバランスを崩し、窓に激突した。

幸い周りに人はいなかったが、何をやってるんだこいつは。と心配する反面、やっぱり笑えてくる。



「……大丈夫か?」

「…………顔が笑ってますよ!? アウト!」

「はははっ! ごめんごめん。彰ちゃんついでに敬語もやめろよ?」

「いや、さすがにそれは遠慮させてもらいます!」

「ふぅん、まあいいか。じゃあ行くか」



むりやり言いくるめて、さっさっと連れていく。


あ、これ彰ちゃん呼び拒否権ない感じなの? とかぶつぶつ言っているが、聞き取れない。

そして歩く速度はそこまで和泉は遅くはないし、俺も一応スピードを落としているので追い付けるはずなのに、どんどん和泉が遠ざかって行く。



「……おい、何離れて…、」

「ビ、ビッチ嫌です!」

「はぁ? 意味がわからん。早く行くぞ」



自分でもイラついた声が出たな、と思う。

それを聞いて、和泉は渋々といった感じで無言で大人しくついてくる。


また独り言を呟いている。

そして拒否か何か知らないが、どんどんまた離れていくわけで。



「和泉、遅いんだが」

「つ、つらたん……!!」

「は?」



つらたん、だの。

ビッチ、だの。


やっぱり今日の和泉はおかしいと思う。


高良様視点が終わる気配が全くしない…!


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