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side 高良 彰弘。2

アクセス数13000越えありがとうございます!( *˙-˙* )

最近更新が遅れて申し訳ありません。


またまた高良視点でございます、まだ続きます( ˙³˙)( ˙³˙)( ˙³˙)



「最近、ほんとに和泉可愛くなってない?」



口を尖らせて、それでも恐ろしいほど整っている顔を不機嫌に歪める16の蓮が、図書館で教科書をペラペラ捲りながらそう漏らした。


昔から、それこそ初めて会った日から、“和泉可愛い、可愛すぎ。何あれ、ほんと。閉じ込めたい。……てか大体、あの子は俺のものなはずなのに……”とかごちゃごちゃ言ってたくせに、今更。


まあ、中3になって周りの女子より一層落ち着いた雰囲気を漂わせてて、一歩後ろでにこやかに微笑んでいる和泉は、女子からも男子からも憧れられてる。



「蓮は、小野瀬のどこに惹かれたんだ」


ふとそう問うと、教科書に向いていた目がこっちをちらりと一瞥する。


言い出したらキリがないよ。と溢す蓮。



「可愛いとか、見た目じゃないんだよね。もう、なんか、存在が綺麗で、そんな綺麗なものに触れたいと思った。

……それにさぁ、あいつ取り繕ってるけど意外とバカでしょ? ……ずっと、ずーっと前から、あいつはそういう子なんだよね。強がりで、頑固で、なのに周りのことをちゃんと見てるから自分を捨てられる子。基本は遠慮姿勢のくせしてさ、こいつには何してもいいっぽい。って判断した人とか、心を許した人には、自分から一方的に来る。周りにいないでしょ、そんな面白いやつ」




─────そんな、小野瀬 和泉は知らないが。


俺には別人の話をしているように聞こえた。


でも、蓮はそう感じて。

そしてこんなにも溺愛してて。

好きだなぁ。とか平然と口にするんだ。


和泉の話をしている蓮は、俺の知ってる蓮ではなかった。

口調も若干の違和感。

作り笑いではなくて、自然に緩んでる頬。



蓮と和泉は、どこか少しおかしかった。

俺の知らない、踏み入れないところがあるのだと、そう思って。


それでも俺は和泉のことを想うのをやめられなかった。



……そうか。とだけ漏らして、俺は口を開けなかった。













「彰弘さぁ、お見合い全部断ったんだって?」



含み笑いでそう問う蓮。

まぁな。と小さく答えると、へぇ。興味なさげの返答。

視線を向けると、辻井(つじい) (はる)から紙の束を受け取っていた。

……きっと、和泉の身辺調査とか、そういうの。


一条家だからと蓮に与えられた校内にある部屋にはソファとか机とかがきちんと配置されていて、大体そこに蓮が行くときは和泉の情報を辻井から伝えてもらうときだけだ。

そして何故か俺も連れてこられるのだが、まあ辻井は一応女生徒だし、二人にその気がなくても誤解されるといけないからな。

そしてこの部屋は和泉には内緒になっている。




辻井は、蓮が和泉に内緒で雇っている“和泉連絡係”である。


ボディーガードだと色々無理なところがあるから、和泉と同い年の14才の辻井を和泉と同じクラスにわざわざして、月一で和泉の状況を報告させている。

蓮が和泉との接触を禁止しているからか、それに和泉は気づいていないし、小等部後半くらいから一緒のクラスのはずなのに、和泉と辻井はとりわけ仲がいいわけではない。



あ、ちなみに辻井は一条家の経営してるかなり大きい会社に結構な重役として勤めている社員の娘らしい。

辻井のそこら辺のことは蓮が笑って濁すからこっちで調べるしかなくて、だからと言ってがっつり調べるわけにはいかないから曖昧になっているけど、とにかく蓮には逆らえない立場なんだと思う。

まあ、蓮は普段むやみに家の権力を振りかざしたりしないからこそ許されてるんだ。


あと、辻井は小等部から蓮の和泉に対しての溺愛ぶりを見ているからか、蓮に憧れている様子は全くない。

むしろ和泉と蓮を応援しているように見える。




「どうせなら辻井とでも婚約したら? 一応候補には入ってたんでしょ?」



……確かに、辻井の写真はあったけど、何でそれをお前が知ってるんだって言う。

ほんとこわいやつだよ、蓮は。



「申し訳ありませんが、嫌です。私には和泉様がいらっしゃいますので」

「……うん? ちょっと辻井、話し合う必要があるみたいだね?」



はっきりと堅い声で何故か理解不能な理由で断られた上に、勝手に仲間割れ。


息を吐き出して、辻井が入れた紅茶に口をつける。



少し離れた部屋の端で、二人が話し合ってる。

笑顔で問い詰める蓮に、無表情で平然と言葉を返す辻井はすごい。


美人なのに常に堅い顔してるから怖がられてる辻井だけど、そういえばこの前和泉と、辻井様美しいですよね。と世間話程度に話した気がする。


辻井は蓮の和泉接触禁止令をシカトして和泉と仲良くなったのか。


案外、辻井は蓮の腹黒さに慣れてきているのかもしれない。


……というか、そういう計画なのかもしれない。

まだ和泉の友達枠に入れなくても、のちのちは……ということだろう。

辻井は強かだ。


そんで、和泉への愛が蓮ほどに膨れ上がってきてるような気がするのは、きっと気のせいではなく。



コンコンッ



ドアが叩かれて、蓮が辻井との口喧嘩を中断して、ドアの向こうにいるであろう人に、何。と不機嫌そうな声で話しかける。


「失礼します、一条様。優里様が呼んでおります」

「……わかった、行く」



うっわ、負のオーラ。


今日こそは中等部まで和泉を迎えに行って昼一緒に食うとか言ってたもんな。

しかもそれ見透かしての優里先輩の呼び出しだろ。

ほんとに生徒会の仕事なら、次期副会長の俺も呼ばれるはずだし。


いつもなら裕也先輩が優里先輩のことを止めるのが普通なのに、裕也先輩も妹のごとく和泉のこと気に入ってるから、今回は優里先輩に加担したってとこか。



「……俺は行くね。あとで辻井は「私は何も聞こえません」……覚えとけよ、ほんと」



……いや……ほんと、辻井……。


たまに蓮の口調が荒くなるときがあるけど、それは和泉のことを話してるときか、ガチでキレてるときだ。

今のは絶対後者なのに、それでも平然と蓮を見送ってる辻井は鋼の心とかを持ってたりするのか。

10年来の幼馴染みである俺も、キレた蓮には近づきたくないし、キレさせないように必死だと言うのに。


「高良様」

「……何だ?」


辻井の真っ直ぐな目が実は苦手だ。

和泉に通じるところがあって、でも和泉みたいに適度な隙がないからとてもやりづらい。

まあ、辻井がこれでも蓮のお気に入りなのは、和泉に似てるからなんだろうが。



「高良様は────────和泉様を、好いておられるでしょう」



目を見たまま、そう言う辻井。

疑問符なんてつけてない、断言した声。


和泉なら、ここで、首を傾げて、それで、



「私は和泉様が大好きです。愛してます。ラブです、ライクではなく」


淡々と告げる和泉は目を逸らすでもなく、いたって真面目に。

……多分蓮に聞かれたら転校させられるか、クラスを変えられて関わりを持たさないように和泉連絡係から外されるだろう。

ほんと、怖いもの知らずだ。



「……驚かないのですか」

「何?」

「私は、女なので」

「あー……、まあ蓮と行動してたらちょっとやそっとのことじゃ動じなくなってるな」



一条 蓮は別名小野瀬 和泉大好き人間である。

和泉の監視を当然のごとく、そして少しもバレないようにこなしている蓮を見てながら野放しにするのは、結構な図太さが必要となる。


あの溺愛ぶりはなんなんだろうか、たった10年そこらで構築される愛の量ではないだろう。



「私は正直、一条様でも高良様でもいいんです。ですが、和泉様の立場なら一条家か、妥協しての高良家しか御家は許さないでしょう。それを和泉様は誰よりも知っていらっしゃる。とすると、一条様は選ばれなくとも和泉様が大好きなのは変わらないので、和泉家に害を与えることはきっとないでしょう? でしたら一応常識のある高良様の方が…」



つらつらと語っていく辻井の表情はいつも通りの無表情。


てか、お前怖すぎ。

蓮と辻井が手を組んだら最強だと俺は思う、多分そんなときはきっとこないだろうが。



「──────と、そこまで考えて、私は自分に呆れました。大好きな和泉様の幸せを、私なんかが図れるわけがないのに、と」


嘲笑、珍しく少しだけ口角をつり上げた、辻井。


「一条様は、ご存じの通り和泉さまが関わってくると、自己中です。自分勝手です」



……うん、まあ間違ってはないが。

一条家に肩を並べている小野瀬家の跡取りの和泉でさえ、わずかな身分差を気にして恐縮していると言うのに、辻井はかなり容赦がない。



「私も、一条様のことは尊敬していますが、好きではありません。それでも仕えるのは、和泉様のお側にいたいからです。私も負けず劣らず、自分勝手でしょう?」



その笑い、蓮に似てる。



「だから──────高良様も、好き勝手したらどうでしょうか」




困った顔で、そして慣れない笑顔を落とす辻井は、では。と部屋を後にしてしまった。


……俺は、何も言ってないんだが。

まあ、否定する気も、一応、なかった、けど。







膨れ上がらないように。


だって、連と一緒にいたら、きっと、辻井みたいにどんどん好意が増えていく。


奥底に押し込めよう、叶わないそれを。




悟られないように?

気づかれないように?


蓮が、気づかないだなんて、思っていたない。


気づいていて、見過ごすとは。

何を考えてるのか。




「友人だろうと、ひとつ執着したもののためなら、無感情に何だってするくせに」




蓮のその一面に気がついたのは、蓮が和泉に出会ってから。



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