side 高良 彰弘。
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いやぁ、間が空いて申し訳ないです。(震) 頑張ります。
たからさまヽ(´▽`)/
小野瀬 和泉を初めて見たのは、俺と蓮が七歳のとき。
うまく隠してはいるけど他人に全く興味を示さなくて、同い年とは思えないくらい優秀で落ち着きのあった蓮が、初めて興味を持ったらしい子。
そんな認識だった。
蓮と和泉が婚約者として初めて会った三日後くらい(和泉との初対面のとき、帰ってから何故か倒れて寝込んだらしい)、やたらと蓮が乗り気ではなかったはずなのに婚約者の話をしてくるから、俺までも興味を持った。
「じゃ、会わせろよ」と軽く言うと、「何で彰弘に俺の和泉を?」と真顔で返されて困った。
今思えば、あの目は七歳児の目ではなかった。
そして蓮らしくなく、執着心丸出しな。
何故かそのとき恐怖を感じて、それと同時に“こいつをここまで変えるやつ、見てみたい”と関心は深まった。
もちろん、和泉にご執着の蓮にはそれは悟られてはいけないから、必死に抑えてはいたけども。
そして何日かして、無理矢理和泉のところに行く蓮についていった。
今思えば、その行動力は俺にしては珍しいなぁと。
1つ下の和泉は、かなりの美形だった。
さらさらの黒髪を腰ら辺に長く落として、少し青みがかった大きな瞳は長い睫毛で縁取られていて、何事にも興味津々にその瞳が動くたびに、ばさばさと睫毛も動く。
少し背は低めで華奢で細くて、庇護欲が掻き立てられるな、と。
けど、守ってあげたいと思う気持ちと裏腹に、強く強く抱き締めたくなった。
そして、青みがかった大きな瞳は明らかに蓮に恋をしていた。
それを見て、胸がざわついたのは、きっと、そう、なんだろうけど、蓮には言えない。
親友だろうと言えないことの1つや2つはある。
───蓮は和泉に悪い虫がつかないか、和泉に内緒でバレないようにボディーガードをつけて、和泉の行動を報告させていることを内緒にしているけど、俺は知ってる、やるだろうなと思ったから。
まあ、つまりつまり、蓮と和泉は両想いなのだ。
どちらも好きオーラ駄々漏れの茶番。
だが、和泉は少しおかしかった。
「あら、高良様」
「……今日も勉強か?」
毎日毎日勉強で近所の図書館に通っているのは、蓮がぶつぶつと負のオーラを漂わせながら言っていたので知っていたが、たまに俺が立ち寄ると鬼気迫る勢いで机にへばりついている。
正直、気持ち悪いと思った。
ふわふわとした白いワンピースを素晴らしく着こなして、にこやかに微笑む和泉はどこからどう見ても小野瀬家の令嬢なのだけど、ガリガリと音を立てながら紙が真っ黒になるまで数式を書き込む和泉は何を目指しているのか。
しかもその問題は二つ上の俺らがやっているものよりも難しい問題で、俺は蓮にずっと負けていたけどちゃんと悔しさはあって、だからこそその婚約者にまで負けることが許せなくて、だから俺はもっともっと勉強にもスポーツにも取り組んだ。
そのおかげで、蓮と一緒に天才児だと褒め称えられるまでになったけど、やっぱり蓮には勝れなくて。
そんな中、和泉は知っているのかは知らないけど、俺らよりも和泉は“神の子”だと特別視され、その上回りまくった期待の更に上の結果を出す和泉を、どこか俺は尊敬していた。
そして、蓮なんかよりも嫉妬していた。
「小野瀬は、どうしてそんなに頑張るんだ」
嫉妬に狂った13歳。
11歳の和泉に問うた。
「……蓮様に追い付けるように、少しでも隣に並んで蓮様が恥ずかしい思いをなさらないように、です」
淀みなく、迷いなく、つらつらと俺に微笑みながら言った和泉の頬は、うっすら赤みがかっていて。
────── い や だ
嫌?
何が?
和泉が頑張ることが?
その理由が、蓮だということが?
もう、何もしなくたって。
蓮の隣は蓮を上回る完璧な和泉の他にいない。
だから、だから、蓮のものになるまでは、俺を見たっていいじゃないか。
そんな、直球な和泉は。
俺に蓮に対する好意を嬉々として語るわりに、蓮のことは避けているようだった。
そして、ついでに俺も避けられ出した。
様子から窺うに、“王子様のとなりにはお姫様じゃなきゃ!”などという和泉らしくない幼稚な考えが原因だと思われる。
お姫様は、和泉しかいないじゃないか。とはさすがに言えなかった……というか、きっと、言いたくなかったのだと思う。
バカな俺は、和泉の心が俺に向くことを、勝手に期待していた。