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勇者魔王の日常冒険譚  作者: ゆーひら
【サルタンとフィア編】
114/122

109. 崩壊の序曲

「サル様、こんなところにいた」


 フィアが部屋の一室を訪れる。

 そこは誰の部屋とも決められていない、何も置いていない部屋。その真ん中に、サルタンが1人昼寝をしている。


「もうすぐご飯の準備が____」


 フィアがそう言って一歩、部屋の中に入ったときだった。


 ドン、という轟音とともに、魔王城が一瞬グラリと揺れたのだ。


「っ!?」


 フィアは驚き、よろけて壁に手をつける。


 突然の出来事____。その正体は、すぐに判明した。


「オラァーー!! 出てきやがれ、魔王ーー!!」


 慌ててフィアが部屋の窓から外を覗くと、そこにいたのは大勢の悪魔たちの姿。


「な、なに……?」


 見るからに血の気の多い、とても穏やかではないその雰囲気に、思わずフィアはたじろぐ。


「やっ、やべえって! 城の外! 悪魔たちに囲まれてるぞ!」


「とんでもねー数ですよ! どーするっスか!」


 ただならぬ城外の様子に、リリとウル太郎も部屋に集合する。2人とも……いや、フィアを合わせて3人ともに、不安げな空気が漂っていく。


「騒ぐな」


 だがそんな空気を、魔王サルタンはその一言で一蹴した。


「サル様……」


「いいから、ここにいろ。一歩も出るな。分かったな」


 どっこいせ、と気だるげに起き上がると、サルタンは1人、戦地へと赴いていった。



______________



 そこからは、只々圧巻だった。


「すご……」


「うへぇ……あんな数を、たった1人で……」


 ものの数分の出来事_____。

 圧倒的不利を物ともせず、闘いを集結させたのはもちろん____『魔王』サルタン。


「…………」


「ふん、こんなモンか。雑魚どもが」


 大地に横たわるその群衆を、サルタンは一瞥する。

 だがその表情は、その眼に映るのは、今までとは違う「何か」_____。

 その感情が何かを知る由もないまま、彼の目の前にはまた一人……。

 見たことのない金髪の青年が、そこに立っていた。



「流石だね。素晴らしいよ、魔王」


 その青年には、他のものとはなにか違う……異質なものを感じさせる。サルタンはふと、そう思った。



「なんか新しい奴が出てきたッスよ、姉御」


「ほんとだ。まぁ、今さら新しい奴が1人で出てきたところで、魔王様にゃどうって事ないだろ。あと、『姉御』じゃなくて『リリ』って呼べって」


 城のベランダで呑気そうにその光景を眺める2人。

 だが……ただ1人、フィアだけは全く違う反応を示した。


「_____!? あの、人は……!?」





「……? なんだ、テメーは」


 拳を構え、腰を落とすサルタン。


「ふふ、初めましてだね。私の名は____」


 サルタンはその青年の言葉を遮り、間髪入れずにぶん殴り、地面へ激突させた。


「テメーに興味なんかねェよ。そこで一生寝てろ」


 動かなくなったその青年を見下ろしたあと、サルタンは魔王城へと足を動かす。


「さて……腹ごなしにゃあなったな……」



 サルタンが敵を全滅させたのを、興奮した様子で眺めるリリとウル太郎。


「うおお! やっぱし一撃!」


「さすがスゲェッス、魔王様!」


 だが、その2人とは正反対の様子で、フィアは声を震わせていた。


「______ない……」


「……? どしたの、フィア様」


「いけない……」


「え……?」


 フィアのただならぬ様子に、2人は顔を見合わせた。



 そんな彼女らの元へと、サルタンは腕を鳴らしながら魔王城へと歩を進める。


「フィアに飯でも作ってもら____」


 その瞬間。

 後方から感じる殺気____。


 サルタンはピクリと反応し、振り返る。


「……! テメェ、まだ____」


 その先にいるのは____先程倒した筈の青年。

 だがその青年は今、確かに両の足で立ちながら、サルタンの前に君臨している。


 そして青年がスゥ、と手をサルタンに向けた瞬間____。


「っ!?」


 サルタンは吹き飛ばされる。

 数メートルほど後方に追いやられ、地面にはその足跡(そくせき)がくっきりと残る。


 サルタンにとって最も不可解だったのは____『今何をされたのかが分からない』というところだった。


「これで、少しは興味持ってくれるかな? 魔王」


 黒い瞳をした青年は、邪悪な笑みを浮かべながらユラリユラリと動き出す。



 そして____その青年の『なにか』を知っているフィアは、急いで城の外へと駆け出した。

「いけない、サル様を助けなくちゃ……! このままじゃ____」


 おぼつかない足で走りながら、息を切らしながら、フィアはもう一度呟く。


「このままじゃ、サル様が殺されちゃう……!!」


____そうなって欲しくない、という願いを込めながら____。




 かくして、魔王と対峙した青年。


「改めて聞いて欲しい。私の名はアドネー……」



 この青年が____



「『創造神』、アドネーだ」



_____世界を『崩壊』させる。

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