俺と彼女と妹と。
俺と彼女と彼女の妹の決断。俺と彼女と友達と。の第2話
「どうしたの?結城くん」
結城くん····えええええ!?なんでこいつ俺の名前しってんの!?
俺は正直こわくなった。こいつが変質者じゃん。
「俺の名前···」
「結城魁斗、でしょ?···え?間違ってる?」
「そうじゃなくて、なんで俺の名前しってんの!?」
変質者め、俺の家柄を知っていて監禁でもしようと言うのか!?
「1-Aの結城魁斗でしょ!?」
だからなんで知ってんだ!?
「まさか···お前···」
ストーカーなのか?犯罪者じゃん。
「え、何?どうしたの結城くん···いきなり黙って···なんか怖いんだけど」
お前が怖いよ!!なんで俺の事知ってんの!?
「なんで俺の事知ってるんだよ」
「俺の事って?」
「だから、俺の名前とかさ、クラスとか」
「ぷぷぷ····」
え?なにこいつ。犯罪者だと思ってたけど、魔王なのか!?「あはは、なんで知ってるかって?それは私が魔王だからさ!!」みたいな?
「もう、自分のクラスメイトくらい覚えてよね」
え?ええ??えええええ!?
「な、なにを!?」
「私、結那。市川結那」
「俺、結城魁斗」
あ、あまりの驚きに何故か名乗っちゃった。
「知ってるって」
ですよねー。そういやこいつ、朝話し掛けてきた奴じゃん。もういろんな意味でびっくり。
「········」
「ど、どうしたの?結城くん」
「········」
俺はクラスメイトと話したくない。友達にもなりたくない。こいつとなんて話すかよ。
「まあ、あがってよ。ここじゃ暑いでしょ?」
俺は首を横に振る。
「結城くんって、クラスメイトと話すのが嫌なの?」
いやっていうか、無理。
「おにいちゃーん!!きがえたよ!!いっしょにあいすたべよ!!」
「おう!!」
「わ、私だけ無視はしないでよ!!」
「むし?」
「よーし、いこう圭太!!」
~市川家~
「はい、アイスどうぞ」
「ありがとー!!!」
「あ、ありがとう···」
「い、いらないなら別に····」
「どうしたの?けんか?」
「け、圭太は気にしなくていいわよ!!」
「よーし、圭太!!食うか!!」
「うん!!」
つ、つめてー!!そうか、アイスだもんな。どうしたんだろ俺。なんかボーッとしてた。市川さんを見てると、なんか変な気持ちになる。それに苦しい。
「どうしたの?おにいちゃん」
「え?あ、ああ。アイスが冷たくておいしいなーって!!」
はは、何やってるんだろ俺。
「私、買い物行ってくるわね。結城の分も買い物したほうがいいの?」
「え?いや、俺は···」
「おにいちゃん、きょうとまってくれるんだって!!」
「「えええええ!?」」
ど、どうして急にそんなことに!?俺は家に帰りたーい!!!!!
「と、泊まるの?」
「え、いや、俺は····」
「わ、私はいいわよ、別に」
俺は嫌っス。
「おねえちゃん、はやくー!!おにいちゃんがおなかすいたって!!!」
え!?俺はなにも···てか他人の家でお腹空いたなんて言う奴いるかよ!!!
「わかったわよ。結城、あんた今日絶対食べてってね。」
「え、いくら払えばいいの!?」
「お、お金なんていらないわよ!!じゃ、じゃあね···!!」
いっちゃった。俺はここで何をしているのか。中学生なったばかりだぞ?混乱しまくり···。
「はあ、よし圭太····寝てるのか」
そっとしておこう。
「あの····」
ん?···って、だれだよ!?
「お姉ちゃんの友達ですか?」
「いえ、違います」
「そうですか···」
なんか気まずい。···手に持ってる携帯電話みたいなのは何?
「もしもし警察ですか?」
警察に電話か。って
「おい!!俺は圭太の友達だよ!!」
「本当ですか?」
「本当だよ!!」
「あ、すみません、勘違いでした」
一応電話は切ってくれた。でも、この怖い人は誰?
「どちらさまですか?」
ヤバい、聞いてしまった。
「え···?」
なんか不審者を見るような目で見られてる!?
「ああ、市か···結那の妹さん··ですか?」
「そうですけど···」
めっちゃ不審がられてるよ、絶対。よく見るとめっちゃかわいい···かわいい···。
「なんでニヤニヤしてるんですか···?」
え、やばどうしよ···なんて言い訳しようか····。
「君、名前は?」
「へ?····結衣···ですけど····」
結衣か結那と名前似てるな。
「結衣ちゃんかー、かわいい名前だね!!」
「!?」
なんか表情かわった。あれはどういう気持ちなんだろうか。
「わ、私は別に」
ガチャ
「あ、ええと···失礼しました」
嵐のように去っていった。
「今、妹いた?」
「なんか警察に通報されそうになった」
「え!?」
驚くなよ····お前も同じ事してただろうが。
「さあて、ご飯作ろうかな。あー今日見たいテレビあったんだー。まあいいか、妃美香に内容聞けば」
「いいよ、俺作る」
「え?」
「今日の夕飯俺作るから、市川さんはテレビ見てていいよ」
「え?」
同じ反応されても困るー
「どゆこと?」
「だから、夕飯は俺が作るって言ってんの」
「作れんの?」
「作れなきゃ言わない」
どこまで疑うか···いいや、検証してみよ。後何回疑うか····。
「俺が作るから、市川さんはテレビみてて。見たい番組あるんでしょ?」
さあ、どうでるか?
「ごめんね、ありがと。あるものでチャーハンでも作って。圭太チャーハン好きだから」
え?ええ?えええええ!?
「検証始めた瞬間疑わなくなるだと!?」
「検証?なんの話?」
ヤバい、誤魔化さなきゃ。
「ん?独り言」
「そう」
こいつ···ちょろい····。
よく見ると、かわいいな。サラサラの髪の毛、大きな瞳、白い肌、細い手足、やわらかそうな唇、中学生にしては大きめの胸、おいしそうな肉、おいしそうな·····え?おいしそうな??俺なにを考えているのか···。
ここで初めて俺は自分の空腹に気付いた。
「わあ、おいしい!!」
「そうか?おいしいか圭太!!」
「おねえちゃんがつくるごはんよりおいしい!!」
「確かにお姉ちゃんのよりおいしい」
な、結衣まで認めてくれるとは·····。
「········」
無言の市川さん···。ここは俺が
「おいしい?市川さん」
「え?ああ、おいしいよ····」
「体調···悪いのか?」
「え?大丈夫よ。大丈夫····大丈·····」
ん?なんかこれヤバいんじゃないの!?
「大丈夫か!?」
市川さんがいきなり倒れるなんて····過労しかないだろ。
「結衣、市川さんの部屋はどこ!?」
「え?ああ、階段をのぼって右側」
「わかった、ありがと」
市川さんを、市川さんを死なせてたまるかああぁぁぁ!!!ってほど大袈裟でもないか。
「結衣は圭太にちゃんと食べさせて寝かせておいてくれる?」
「うん、わかった」
「···おにいちゃん···おねえちゃんは··だいじょうぶ···なの····?」
大丈夫か?そんなの
「大丈夫に決まってんだろ!!」
「そうだよね!!」
「あ、魔王が目覚めた!!」
「魔王って誰よ」
あ····やっぱりかわいいなこいつ····。
「結衣と圭太は?」
「あいつらはもう寝た」
「···そう」
「市川さんも寝たら?もう12時過ぎてるよ?」
「そう....」
「·······」
かわいい子のお世話楽しい····ふふ····
「あ····」
ん?
「12時?」
「うん」
「結城、帰らなくていいの?」
「市川さんが寝たら帰るよ」
「バカ·····補導されるから早く帰りな」
「え?あ、じゃあそうする····」
もうちょっと居たかったな。かわいいこのお世話なんて、めったに
「早く帰りなよ」
え?なに?帰ってほしいの!?
「わ、わかってるって」
なんか動揺してきた·····
よし、食器も洗い終わったし、帰るか····。市川さんどうしてるかな···?見てこようかな····。
ここだっけ?
ガチャ
「だ、誰!?」
「え?市川さんなんで起きてるの!?」
「なんであんたがいるのよ!!」
「なんで寝てないんだよ!!」
「いきなり開けたから、びっくりして起きちゃったのよ!!!」
「いいから寝ろ···よ····」
「どうかしたの····」
泣いてる?市川さんなんで泣いてるの?
「市川さん、俺帰るから」
「早く帰ってよ」
「食器、洗っておいたから」
「ありがと。早く帰って」
「じゃあね」
「······」
なんで泣いてたんだろうか···
ガチャ
「どうしてよ····どうしてみんな、私を置いてくのよ···どうしてよ····どうしてよ····いかないでよ····」
市川さん?
細く掠れた声。市川さんはずっと悲しかったのかな。寂しかったのかな。俺と同じ気持ちだったのかな。
「市川さん」
「なによ、まだいたの?早く帰りなよ」
「市川さん···」
「な、なによ····」
「もっと素直になりなよ」
「え?」
「素直じゃない俺が言うのはアレだけど····俺も寂しい時はあるよ。だからちゃんと···」
「結城!!私と一緒にいてよ!!私は···私は···!!」
「寝てないとダメだよ。市川さん」
「う····うぅ···うぅぅぅ···」
俺は一晩中、市川さんの頭を撫で続けた。手が痛かった。疲れた。眠かった。でも結那はきっと、ずっと寂しかったんだろう。だから、せめて俺は···隣に居てあげたかった。俺にはそれしかできないから。
「結城!!起きなさいよ!!」
え?ん?なにがなんだか···そうか、これは夢か。
「結城!!起きなさいってば!!」
夢···これは夢なんだ·····ん···ん···?
「あーやっと起きたよ····」
「市川さん!?」
「な、なによ····!?」
「ごめん市川さん」
「え?」
「俺、寝ちゃったね···俺は起きて看病してなきゃダメなのに····」
「·······」
「俺···」
「結城はさっきまで起きてたよ」
「え?」
ど、どゆこと?
「ありがとね」
ええ??
「ずっと頭を撫でてくれてたの知ってるよ」
「え?あ、はい、どうも」
ど、どゆことかさっぱり····
「お姉ちゃん、ご飯は??」
「あーっ!!忘れてたーっ!!!」
「市川さんは熱を計って」
「え?」
市川さんはきっとまだ熱があるだろう。熱が無くても病み上がりだ。無理させるわけにはいかない。
「結衣ごめんな」
「え?あ、はいいぃ」
なんだ、その反応は。
「いま作るから待ってろ」
「市川さん?」
「なに?」
「熱あったのか?」
「ないよ、ほら」
「ほんとだ。じゃあ、お粥作ったから食べて」
「え?あ、ありがと」
「熱いから気を付けてね」
「うん」
「俺が食べさせてあげようか?」
「え!?なに、どうしたの急に?」
反応がかわいい····
「ほら、口開けて····」
お、口開けたぞ···かわいい····って、なにやってんだ俺!?なぜか知らんけど、これが恋なのか?って、そんなことよりも、学校でどうするかだろ!?
「結城···?」
「ああ、悪い····ほら」
「····おいしい···」
かわいい···
「市川さんー?」
「何?」
「結衣はもう学校いったし、圭太は幼稚園のバス乗ったよ。それと食器も洗っといたから」
「あ、ありがと」
「はやく学校行こうぜ?」
「わ、わかってるって」
学校、どうするかな。市川さんに相談するか。
ガチャ
「え?」
「え??」
「ちょ、結城!?」
「あ、悪い市川さん。わざとじゃないんだ」
着替え中だったか。うっかりだ。
「ちょっと····そんな見ないでよ····」
「スタイルいいね」
なんて言えな···って言っちゃった····
「見んなバカ!!!」
えへへ怒った市川さんもかわいい·····
俺は市川さんに恋をした····それはもう、確実だろう。
「ねえ、市川さん」
「どしたの?」
「学校では俺のこと、無視してね。じゃなくて、俺に話し掛けないで。」
「え···なんで····」
「俺、市川さんの事ずっと信じられなかった。市川さんだけじゃない、クラスのみんなも教師も····」
「·······」
「でも今は市川さんの事、信じてるよ」
「え?」
「俺は市川さんのことが好き」
「え!?」
「何度でも言うよ。俺は市川さんのこと好きなんだ」
「えええ!?」
「唯一信じることができる市川さんに、1つお願い」
「な、なに?」
「学校では俺に絶対に構わないで」
「嫌よ」
即答!?
「私だって結城のこと好きだよ····」
え、どういう好き?
「だから嫌。結城を無視するのもされるのも嫌」
「唯一のお願いを聞いてくれないの?」
「結城がどんなにお願いしたって嫌よ!!!」
「でも····」
「はやく学校いこ、結城」
「え?あ、はい」
もうこんな時間。そろそろ出る時間か。
じゃ、いこうか。
~学校~
「結城、その本なに?」
「何って、小説」
「へぇ」
「市川さん読む?」
「結城が読み終わったら貸してほしいな」
「うんわかった」
市川さんかわいい·······
「最近あの2人一緒にいない?」
「確かに~」
「地味すぎる結城と結那が?ありえなーい」
「市川はわたさないぞ····」
「市川はお前のもんじゃねえよ」
「まあまあ」
はあ、あいつら市川さんの噂とか俺の悪口ばっかいってんじゃん。なにが楽しいんだよ。
「ねえ結城」
「なに?市川さん」
「結城、今日も私の家くるの?」
「うーん」
「圭太は毎日楽しみにしてるみたいだし」
「まあ、今日はいけないかな」
「そう、わかったわ」
「明日は来てね」
「え、行けたらね」
「明日は来てほしいな。いっぱい結城のこと知りたい」
「俺も市川さんのこと知りたいな···」
「ふふ··」
笑顔の市川さんかわいい·····
「おにいちゃん!!」
「よお、圭太。元気だったか?」
「うん!!」
「そうかー!!」
「ちょっと結城、手伝ってよ」
「え?ああ、ごめんごめん」
なぜかすっかり市川家に馴染んでる気が····
「結城、髪の毛長くない?」
「そうかな?」
「あ、確かに市川さんより長いかも」
「はい、ゴム」
「え?」
「結城、それで髪の毛結びなよ」
「えええ!?」
「案外女の子っぽいかもしれないしさ」
なんか嫌だな、それ
「ほい」
「え?結城ってカッコいい」
え?
「どゆこと?」
「結城さ、いつもメガネとマスクで顔隠してるし、髪長いからさ、こうやってるとなんかイイ」
「そ、そうかな?」
ピンポーン
「あ、俺出るよ」
だれだろ?ちょっと恥ずかしかったから逃げてきちゃったし。
「えと」
「こ、こんにちは」
誰だ、こいつ
「こんにちは」
挨拶はしてみたものの···
「あの、結那さんいますか?」
「いるよ」
「あ、じゃあお願いします」
「市川さーん、なんか呼んでるんだけど」
「え?あ、妃美香じゃん」
「え?誰?」
「同じクラスのさ」
「え?あんな人いたっけ?」
「いたよ」
「結那?」
「どうしたの妃美香?」
「これ、ノート」
「あ、ありがと。これなきゃ課題終わらないんだよねー」
「でさ、今の男の人誰?」
「え、あ」
「彼氏?」
「え?ち、違うよ!!」
「そうなの?じゃあ誰?」
「い、いとこかな」
「かなってなによ···って電話~·············ごめん、結那また明日ねー」
「え?うん。じゃーねー」
「ねえ結城」
「ん?」
「結城はなんでクラスで友達を作ろうとしないの?」
「それは····」
「あ、ごめん。言わなくていいよ」
「え?」
「お互い今のままでいたいから」
「わかった。まあ、実は記憶ないんだけどね」
「え?」
「なんか記憶ない」
「ええ!?」
「なんか、起きたら人を避けるようになってた。」
「えええええ!?」
「なんか人がすごく怖かった」
「え?」
「すごく怖かった。看護師も、医師も怖かった。医師は、トラウマを抱えてるんじゃないかって言ってた。」
「トラウマ?」
「無意識に人を避けるとか、人と触れ合うのに恐怖を感じてしまうような、深刻なトラウマ」
「ただいまー」
「おかえりー結衣ちゃーん」
「え?あ、ただいまです」
「どうしてかいつも結衣の反応が変なんだけど」
「そ、そんなことはないです!!」
「そうか?」
「私も変だと思うけど?」
「お姉ちゃんまで·····」
「ご飯作るの、結衣手伝いしてくんない?」
「いいですけど·····」
「ねえ結衣」
「はい!?」
「敬語やめてよ」
「え?あー····うん、わかった」
「私お風呂はいってきていいかな?」
市川さんのお風呂シーン····見たい···
「いいよ」
「結衣この野菜切って」
「ほいほい」
「結衣肉切れる?」
「うん切れる切れる」
「結衣鍋が沸騰する前に火を止めてね」
「ほいほい」
よいしょっと·····えっと、お風呂はー····あった!!
ガシャッ(お風呂の扉を開ける音)
「え?」
「あ、市川さん」
「ちょ、結城閉めなさいよ!!」
「え?嫌だけど」
「嫌とかじゃなくてー!!!」
「もうちょい見たい」
「閉めなさい!!!」
「もうちょい見たらね」
「結城のバカーッ!!!」
俺なんか悪い事した?
「結衣できた?」
「うん、こんなんでいいの?」
「うわぁ、結衣料理上手!!!」
「そ、そんなことないよ·····」
「わあ、おねえちゃんがごはんつくってる!!」
「お、圭太。今日は結衣が料理作ってくれてるんだよ!!!」
「おねえちゃん、ごはんつくれるの?」
「つ、作れるし!!」
ははは、結衣かわいい。って俺なに考えてんだろ。
結局、結衣に手伝ってもらって作った料理はおいしくできた。
~学校~
「結城!!」
「ん?」
「今日、体力テストだって」
「へえ」
「へえって、結城できるの?」
「運動は好きだよ」
「え?そうなの!?」
「うん」
「体力テストやるから、みんなグラウンドに出てー」
「「はーい」」
俺も行くか
「ほら、結城行こ」
「うん」
「なあ、ちょっといいか結城」
「·······」
誰こいつ
「どうしたの?石川くん」
石川か。知らね。
「あ、いや、ちょっと結城に用事があって」
「そう、じゃあ私は先に行くわね」
え、ちょっと市川さん待ってくださいよーっ!!
「なあ、結城」
「·······」
「お前、最近市川と一緒にいるのが多いけどさ」
「·······」
「付き合ってるわけ?」
どうしよ。でもなんでこんな事聞くの?あ、もしかして
「石川くんって、市川さんのこと好きなの!?」
「え、それは、まあ、うん」
「はっきりいえよ」
「え、あ、う、好きだよ!!!悪いか!!!!」
「え、好きなの?」
マジか。半分冗談だったのに。
「へぇ石川って結那の事好きだったんだー」
誰!?
「ひ、妃美香!?」
「で、いつから好きだったのー?」
「う、うるせえ!!」
なにこいつら。こいつらの方がお似合いじゃん。市川さんを諦めろ。
「でも、石川と結城が話してるなんて珍しいね」
「石川くんがなんか無理矢理話し掛けてきた」
「俺は無理矢理なんて話し掛けてないぞ!?」
「うっわ、石川さいてー」
妃美香って、意外にかわいいな。って、俺はまたなんてことを。
「ちょっと、いつまで話してるのよ!?」
「あ、市川さん」
「い、市川!?」
「よぉ、結那!!」
「市川さん、石川くんが市川さんのこと好きなんだって!!!」
「「「!?」」」
俺、マズイ事いったかも?
「お、俺は別に市川のことなんて·····」
「え、どういうことなの!?」
「結那モテモテだねー」
「モテモテじゃないわよ!!」
照れる市川さんかわいい。
「石川くんはねー相当前から市川さんのことが好きだったんだって!!!」
「そ、それ以上いわないでくれーっ!!!」
「わ、私はどうしたらいいの!?」
そんなことよりさ
「はやくグラウンド行こうよ」
「え?あ、あ、そうか」
「行こ、結那~」
動揺する石川くんと市川さん。妃美香は笑顔だなー。
「おい、結城って体育とかできるのか?」
「できるわけねえ」
「俺のが優秀に決まってるし!!」
「それなら俺はもっと優秀だな」
なんだよ、こいつら。俺は小学校でも運動ばかりしてたんだぞ。お前らが勝てるわけ
「どうした?結城」
「なんだよ石川くん」
「俺と勝負しねえか?」
「いいよ」
「俺と結城で、体力テストで結果が高いほうが市川をゲットできる」
「いいよ」
いいけど他人を勝手に景品にするのはどうかとおもう。
まずはソフトボール投げ
「よ、石川!!!野球部のエース候補!!」
え?マジか。まあいい、ほかでがんばろ
「28メートル!!」
え?全然飛んでないじゃん。
「33メートル!!!」
「おお」
「さすが野球部」
「まだ1年の部活始まってねえよ!!」
「次、結城いけよ」
俺かよ。
ソフトボールって、こんなにツルツルしてたっけ。ずっしりと重い、ソフトボール。俺はソフトボールが好き。って、俺はなにを
「結城、はやく投げろよ」
「え?あ?あ、はいはい」
体力テスト中だったー。忘れてた··。
はあーっ!!!ゴン
「1メートル!!」
え?1メートル!?くそ、もう一度あるし。
はあーっ!!!! ゴン
「38メートル!!!」
「え?マジで?あの結城が!?」
「嘘だろ?おい」
俺はひきこもりとかじゃないかな?
「おーい結城~」
石川くんだ。
「お前すごいな、見直した!!」
「石川くんもすごかったよ!!」
「え?あ、ありがとう·····」
市川さんは····お、ちょうど投げてる。 って、26メートル?···と28····けっこう飛ぶな。
「市川、すごいぞー!!!」
お、石川くん積極的。あ、市川さん手を振ってる。俺に。
「次、上体起こし」
「なにそれ?」
「石川くん、上体起こししらないの?」
「う、うん」
「腹筋を鍛えるやつ」
「ああ、知ってる!!」
だろうな。
30秒か、ながいな。
「はじめーっ!!」
1··2···3··4·····5·······6···············
「ぜぇ···はぁ····」
「石川くん大丈夫?」
「これだけは負けたくないからな」
「37回だよ」
「くそ、次は40回いって」
「測定は1回ね」
「うおおおい!!!」
「次、俺ね」
「はじめーっ!!」
1···2···3···4···5····6···7···8···9···10···············
「ふぅ、どうだった?」
「そ、そんなばかな」
「どうだったの?」
「46!?ありえない」
現実見なよ。
「市川さーん、何回だった?」
「私26回」
「私は24回だよー」
水谷さんは24回か·····圧勝!!
体力テストは終わり、石川くんも終わった。
「石川?どうしたのあんた!?」
話し掛けてあげる市川さん、優しいね。
「結城が····運動できたなんて······」
「私も驚いたわよ····」
俺は驚かないけどな。
「結城すごいね!!」
妃美香の褒め方がかわいい。笑顔で拍手して·······って、俺は何を·····。
今日も1日があっという間に終わった。だけど、充実してた。
~市川家~
「おにいちゃん!!」
「よお圭太!!」
「おにいちゃん、きょうもとまってくれるの?」
え、今日も!?
「泊まりたいなら泊まりなさいよ···」
え、じゃあ
「泊まるよー」
「やったあ!!」
子供は無邪気でいいなー
「よし、圭太。今日は絵本を読んであげるからな」
「わーい」
「そろそろお風呂の時間なんだけどな」
誰かと思ったら結衣か。
「え?あ、はい。あー、圭太か」
圭太は結衣と一緒に風呂に入ってるんだっけ。で、いま圭太は寝てる。だから困ってるのか。
「圭太起きろー」
起きるか!?起きた。
「うぅー、おにいちゃん、ねむいよー」
「風呂入るぞ、圭太」
「え?おにいちゃんと?やったー!!!」
「ほら、いくぞ結衣」
「え?私もですか!?」
「え?なんで驚く?」
「いや、別になにも」
「じゃ、いこうよ」
「はい····」
今日わかったことがある。結衣は市川さんとそっくりだ。顔も体型も。違うのは髪の長さだけか。
その夜、なぜか俺は市川さんのベッドで市川さんと一緒に寝ていた。
「ねえ結城」
「ん?」
「石川とは仲良くなれた?」
「まあ、悪い人じゃないとは思うよ。水谷さんも」
「妃美香も気に入ったんだ。」
「友達になれたらなーって思った」
「2人は友達だと思ってるんじゃない?」
「そうかな?」
「うん」
「石川と水谷さんは友達か·····ねえ、市川さん」
「どうしたの?」
「付き合って」
「え?」
「俺の彼女になってよ」
「何!?いきなりどうしたの·····!?」
「俺、市川さんのこと好きだよ。ずっと一緒に居たいと思った」
「私···も···一緒に居たいと···思ってるよ····」
「俺は市川さんを誰にも渡したくない。」
「だけど····もし付き合ったら、この生活はどうなるの?家事を放置してデートとかするの?」
「あいてる時間にデートすればいいんだよ。家事もちゃんとやる。デートしたいときは家事を結衣に頼めばいいじゃん。」
俺は市川さんを自分だけのモノにしたい。俺をきちんと見てくれるのは市川さんしかいないと思ったから。
「でもさ、やっぱり私と結城は恋人にはなれないよ。私は結城のことが好きだけど···でもやっぱり男として見れない」
え?マジで?男として見れないって、友達としか見れないってこと?
「結城はさ、やっぱり家族みたいなもんだよ。恋人になって今の関係が壊れるのは嫌だよ」
だから関係は····
「結城、気付いてる?結衣の気持ち」
え、結衣?
「結衣ね、結城の事好きなんだって」
結衣がそんなこと·····
「昨日、私に相談してきたの」
結衣が相談?結衣は俺の市川さんに対しての気持ちを知っているはずじゃ·····。
「結衣が私に結城くんと付き合っているのか聞いたとき、私は付き合ってないって答えた」
市川さん····それでも俺は····!!
「今は家の中で仲良くやっていけてるよ。でも、もし私達が付き合い始めたら、どうなると思ってるの!?」
市川さん泣いてるの?
「市川さんの言いたい事はわかった。でも、それでも俺は市川さんとつき·····」
「なんにもわかってないじゃない!!」
市川さんがここまで感情的になるのは初めてだ。俺はやっぱりダメな男なのかな。いつも市川さんを困らせてばかりだ。
「もういいよ結城。もうこの家には来ないで。」
「え?」
「もう嫌なの。結城の事で悩むのも、結衣のことで悩むのも」
「市川さん·····」
「結衣と付き合ってあげてよ。それでこの家には二度と来ないで」
「で、でも····!!」
「結城のことを嫌いになる前にはやく私の前から消えてよ···!!」
俺は泣いている市川さんを見て、なにかしなきゃと思った。俺にできるのは思いを伝えることだけ。だから俺は
「ねえ、市川さん」
「な、なによ」
「こっちむいてよ」
「嫌よ」
なぬ。なら
「え!?なに!?」
俺は背後から市川さんに抱きついた。
「もう、なによ···」
市川さんの髪の毛はサラサラで、艶々だ。身体中から良い匂いがするから、抱きつきたくなる。
「ずっとこのままでいたい」
「結城?どうしたのよ···」
なんかこっち向いてくる市川さん。チャンス。
俺は市川さんの唇に自分の唇を重ねるようにして、力強く、押し付けた。
唇が重なっている間俺の頭の中は真っ白だった。唇が離れると、すぐに俺は
「最初に謝っておきます。ごめんなさい。市川さんはこんなこと望んでなかったかもしれないし、ファーストキスは、大切にとっておきたかったかもしれない。もしそうなら、俺は凄く自分勝手な行為をし」
「嬉しいよ。凄く嬉しいよ」
「え?」
俺は言葉を遮られ、驚いてしまった。
「私は、前も言ったけど結城が好き。嫌なんてことは無いよ」
「なら!!」
「でもね、結衣を···たった1人の妹を悲しませたくないの!!!」
「·······」
運命は残酷だな。普通に恋をしたつもりだったのに。両想いでも付き合えないとか。どうなってんだよ。
「俺は市川さんと一緒にいたい。でもそれは恋人としてって意味で。結衣には悪いけど、俺が好きなのは市川さんなわけだし」
「ねえ、結城。結城は、自分を振った相手が同じ家に居たらどう思うの?」
「でも結衣は妹なんだし。同じ家にいるのは」
「結衣を妹じゃなくて女として見てあげてよ」
「自分を振った相手が同じ家に、しかも彼女と一緒にいるんだよ?私なら絶対居たくない」
「なら、俺と市川さんが付き合って、俺はもうこの家に来ないとかは?」
「私は姉妹なのよ?家できまずくなるのは嫌」
コンコン
「お姉ちゃん起きてるの?」
「え?あ、結衣、今電話中」
「あ、ごめん」
「で、どうする?結城」
「結衣とも話したい」
「結衣、電話終わったわよ」
「うん」
「·······」
「·······」
「あ、結城さんも起きてたんだ」
「うん」
「ねえ結衣」
「どうしたの?お姉ちゃん」
「結衣は結城のこと好きなんだよね?」
「え···? す、好きです·····。」
「結城以外に好きな人いないの?」
「いない」
即答か···良いのか悪いのか。
「そう····なの····」
「いいよ、お姉ちゃん。私のことは気にしなくていいのに。私はお姉ちゃん達が付き合ってないって言ったから、結城さんに告白したいと思ってただけ。2人が恋人になったら、お似合いだし、私も嬉しいもん」
「結衣····。でもお姉ちゃんは····」
あ、それなら
「2人とも俺の彼女になればいいじゃん」
名案じゃね?
「········」
何言ってんのこいつって顔を2人でしないでーっ!!
「2股ってことだよね?」
「俺は名案だと思ったんだけど」
「迷案ねぇ」
「ど、どうかな?」
「私は無理かな」
「私も」
「俺は最高だな」
「「········」」
「うーん、難しいな~」
「結城、やっぱりわた」
「お姉ちゃんはさ、いつも私の為にいろいろしてくれた。お姉ちゃんの同級生なんだから、恋人になるのはお姉ちゃんのほうがいいと思うよ」
「でもそれじゃ、結衣はどうなるの?」
「だから、私は気にしないでって」
「でも」
「お姉ちゃんはどうしていつもそうなの?もっとわがまま言いなよ」
「私は結衣に幸せになってほしいから····」
「幸せってなに?私が結城さんと付き合って幸せだと思うの?結城さんと付き合ったって罪悪感しかないよ。私はお姉ちゃんが結城さんと付き合うべきだと思う」
「私は···!!」
「そんなに結城さんと付き合いたくないの?」
「そんなことないけど····」
なんか不安なんだけど。
「お姉ちゃんはわがまま言いなよ。私にそんなに譲る気でいたら、他の人にとられちゃうよ?お姉ちゃんはそれでいいの?」
「私は···結城が好き····だから結城·····私の彼氏に·····なって···?」
「もちろん」
「それでいいんだよ、お姉ちゃん」
市川さん号泣。うっわ、凄い泣いてるよ。
「お姉ちゃんなんか飲み物持ってくるね」
「俺もいってくるね」
「なあ結衣」
「な、なんですか?」
「俺は結衣のこと嫌いなわけじゃないからな?だからさ、もし市川さんに捨てられたら、結衣が拾ってくれよな?」
「ふふふ·····そのときは私も捨てるよ」
えええええ!?
「マジか····酷い」
「冗談だって、結城くん」
「結衣の冗談きついんだけど···」
「ねえ、結城くん」
「ん?」
「お姉ちゃんとキスしたの?」
「し、してないよ??」
「したんだね」
「うぅ···」
どうしてわかったんだ···。
「私ともキスしてくれない?」
「え?」
「おねがい、一度でいいの、一度でいいから。」
「いいよ。ほら、いくよ?」
俺は人生2度目のキスをした。
俺達は、そのままあまり変わらない生活を送った。変わったのは、俺達の仲が深まったことかな。
「なあ結城」
「誰?」
「俺だよ、俺、俺」
「直接名乗る、新手のオレオレ詐欺か」
「ちげーよ!!石川だよ!!石川聡史!!!」
「知らねえ」
「おい!!」
「うるさい。なんの用?」
「そうそう、結城って市川と付き合ってんの?」
「それ私も気になるー」
水谷妃美香か。
「市川さんに聞けば?」
「えー、いいじゃん魁斗くん。それくらい。」
「で、結城。どこまでいったんだ?」
「キ·····」
「ちょっと妃美香達何話してんの?」
あ、市川さんいたんだ。
「ねえ、結那~あんたたち付き合ってんの?」
「え?なに!?付き合ってるけどさ·····」
「マジで!?どこまでやったの?」
「キス·····」
「石川ショックだよな~」
「石川ショックだよな!!」
俺水谷さんと仲良くなれるかも。
「そうだ、私3人を呼びにきたのに。体育だから、はやくグラウンド出てね」
~放課後~
市川さんどこだろ?部活はまだ始まってないしな。教室にはいなかったし。まあいいや、あの人が全然来ないとこでゲームしてよ。
「·······で·······さ」
「····は·········」
誰かの話し声が聞こえる。
俺は一瞬で駆け寄った。
「結城のことを嫌いになれとは言ってない。だけど俺を見てくれよ!!!」
「私は結城が好きなの!!!結城以外の男子から何を言われても好きなのは結城だけなの」
たった1週間で俺は市川さんのことがなによりも大切になっていた。だがそれは続かなかった。俺の忘れていた記憶が戻り、それが原因で全てが崩れることになるとは。あの日、俺が言っていた約束を果たすべきか。それとも今の恋を大事にするべきか。