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永遠の戦士  作者: ブラック無党
美女と野獣
27/125

王都にて―初任務―

お待たせしました。


毎度のことですが、放置された誤字脱字を見かけたら一報よろしくお願いします。

 ドォン――という扉が開け放たれる音に、応接間に居た面々は驚いて顔をあげた。

 扉を蹴破らんばかりの勢いで部屋に入ってきたのは、この屋敷の主であるミアータだ。後ろにはピシリと服を着こなした白髪の男性が控えている。

 場に居る全員の視線を一点に集めたミアータは室内を見渡した。

 床には毛の長い敷物が敷かれ、壁には額縁に入った絵画が嫌味にならない程度に設置されている。客をもてなす為のこの部屋で、アキムとキリイは座椅子に深く身体を沈め、お茶を飲み、菓子を手元に置きながら遊技盤に勤しんでおり、ミラとサラの姉妹は長椅子に恋人のように寄り添い寝そべっている。姉は起きているが妹の方は完全に寝入っているようだ。そして、ターシャは書斎から持ち込んだのであろう本を読み、レントゥスは壁際で貸してもらった高価そうな弓を引き絞っていた。

 

「あ、貴方達……」


 その光景に絶句したミアータの口元がピクピクと動く。

 冷徹さを売りに他貴族と渡り合っている女伯爵のその様子に、傭兵団の一員――形としてはそうなっている一同――は不思議そうな顔を向ける。


「貴方達は、一体、何をしているのかしら?」


 ミアータが低くドスの効いた声でそう問うた。


「……なによ、うっさいわね。扉も静かに開け閉めできないなんてこの屋敷ではどーいう教育してるのよ」


 応えたのは、目蓋を擦りながら目覚めたサラだ。

 敏いアキムがすぐさまミラに目で合図を送ると、いつもの如く彼女はまだ覚醒途中の妹の口を手で押さえた。

 それを見たアキムの頭にある想いが生じる。

 後にアキムはこの時の事を振り返る度に、あの時は混乱していたのだ、と苦い思いを抱く。

 だが、この時不意に浮かんだ思考は毒のように脳内に染み渡り、結果アキムは小さく口中で呟いたのだった。

 目で通じ合えるとは、俺達【美女と野獣】は最強の傭兵団だぜ――と。


「――フッ」

 

 そして漏れ出す笑い。

 その頭を、ほっそりとした指が鷲掴んだ。


「何が可笑しいのかしら?」

「――ヒィッ」


 髪を引っ張り、上から覗き込む伯爵にアキムが情けない悲鳴をあげる。冷たい美貌に備わった瞳が妖しい輝きを放っている。

 ゴロツキのような主人のやり口に、背後に控える執事は眉を顰めた。


「お嬢様、そのような真似はお止め下さいといつも――」

「黙りなさい」

「ハ……」


 ミアータは、アキムの髪を掴む手をさらに引き寄せる。


「うぁ……。か、髪が、抜ける……」


 それを見たキリイとレントゥスが、思わず、といった(てい)で自らの頭髪を押さえた。


「毎日毎日食べたい時に食べ、寝たい時に寝、遊びたい時に遊ぶ。いい身分じゃない? 貴族にだってそんな生活してる者はいないわよ、きっと」


 ミアータが手を動かす都度、大波に攫われる小舟のようにアキムの頭が揺れる。


「ま、待って下さい。俺達はただ待機してろと云われただけで――」

「誰が云ったの?」

「勿論俺達傭兵に命令出来るのは団長だけです! シドに命令されたから仕方なくこの部屋にいるんですよ!!」

「へぇ……。仕方なく、ねぇ」


 ミアータは卓上を見る。進行途中の遊技盤、飲みかけのお茶、食いかけの菓子が置いてあった。

 痛いまでの沈黙が場を支配する中、


「――ゴクッ」


 頬張った菓子を音を立てないで咀嚼していたキリイが、同じように音を立てないで飲み込もうとして失敗した。


「なら、命令した団長殿はどこで何をしているのかしら?」

「シドなら中庭に……」

「中庭? ……そんな所で何を?」


 もしかして鍛錬でもしているのか――そう思って多少怒りが治まる。

 

「中庭ね。――いいわ。確かに上に云わないと意味がない」


 ミアータは一人首肯すると背後の執事に、


「行くわよ」

「ハ。しかし、わざわざお嬢様が出向かれなくとも、ここへ呼べばよろしいかと思いますが……」

「いいのよ。鍛錬してるのなら邪魔をしたくはないし」


 部屋から出ていこうとし、扉の前で足を止めるとアキム達に向かって、


「あまり汚さないようにしなさいよ」


 そう云い残し、立ち去った。

 しばらくして、閉まった扉を開けて廊下の左右を確認するアキム。誰もいない事を見て取ると、


「はぁ~。ったくなんだよありゃ。小っせえのにおっかないのって……。貴族共が震え上がるのもわかる気がするぜ」


 どっかと座椅子に腰掛け、茶で喉を潤す。そしてお茶うけを鷲掴みにすると無造作に口に放り込んだ。バリバリと咀嚼する。


「ほへにしても、ヒドはふぁんれんなんてひてはっへ?」

「わからねえよ。食ってから喋れ」

「――ん。シドの奴はホントに鍛錬なんてしてるのか? 全然想像できないんだが……」

「いや、誰もそんな事は云ってないぞ。ヴェガスなら鍛錬すると云って出て行ったが……。シドのは伯爵の早合点だろう」

「ありゃりゃ。んじゃシドは中庭で何してるんだ?」


 アキムの質問に、本を閉じたターシャが、


「私がさっき本を取りに行った時は中庭に立っていましたよ」

「立ってた? 立って何してたんだ?」

「いえ……特には。強いて云うなら日光を浴びていたとしか……」

「日光って……。トカゲかよ……」

「なんでしたら先回りして知らせてきましょうか?」


 ミアータの怒りを思い出したターシャが気を利かせてそう云う。


「止めとけ止めとけ。近寄らねえほうが身の為だ」


 あの女にはヒスの兆候がある――と真面目な顔をするアキム。


「でも、それだとシドさんが……」

「我等が団長殿はタフだ。信じようぜ」


 歯を見せてニカリとする。そこへ、


「俺の予備兵力の騎兵がここに突撃するぞ」


 キリイが盤上の駒を進めた。


「えっ? ――おい! ちょっと待て。それはナシだ。一回前からやり直そうぜ」

「バカを云うな。戦場でやり直しなんか出来ん」

「これは遊戯だろ!」


 懲りない遣り取りを始めた二人に、ターシャは溜め息をついた。こちらを見ているミラと目を合わせ苦笑する。

 椅子に座り直すと閉じた本を再び開く。

 その後も、静かな室内に男達のやんちゃな声だけが流れていた。





『……停止したようです』

「(ああ、そのようだ。ぎりぎり都市圏内だな)」

『そうですね。多分城壁の外の建物群だと思います』


 緑の生い茂る中庭で空に顔を向け、視界内に表示されるアイコンに意識を傾けるシド。それが指し示す位置はコンテナのものである。一等街区にあるこの屋敷からシドの速度で歩いて二時間といったところだろう。


『良かったですねぇ。一時は都市から外に出るんじゃないかと焦りました』

「(そうなれば徒歩である俺では追いつくのは厳しいからな)」


 生身の人間があれを素手で持ち運ぶとは考えにくい。移動する時は馬車などの道具を使う筈だ。


『回収にいきますか?』

「(無論だ。手の届くうちに終わらせておこう)」

     

 地下に落ちたのはレーションを摂取した直後だ。大きな傷を複数回に渡って受けない限り、外皮の再生に問題が生じることはない。これは逆に云えば、傷を受ける可能性があるのなら早めに回収するべきという事であり、現状それは極めて高い確率で起こり得る。

 そもそもが、シドは重量兵器であり、刀剣の類で切った張ったをするようには造られていない。戦闘方法は高威力高質量の兵器による射撃戦に重点が置かれており、頑丈さは過酷な環境に対する耐久性と汎用性を突き詰めた結果に過ぎないのだ。性能的には、飛来する矢を掴み止める事も斬りかかってくる剣を躱すことも出来る。しかしそれは純然たる計算の結果であり、技術や経験に裏打ちされた熟練者が流れるような動きで敵の攻撃を予測、回避するのとは根本的に違う。

 達人は相手が十人でも勝つ。包囲されないよう位置を制御(コントロール)することによって――。

 シドも相手が十人でも勝てる。例え包囲されても、生体では実現不可能な力と速さによって――。

  

『単独で向かうのですか?』

「(エルフは騒動の種だ。そして、護衛にヴェガスも残しておきたい。アキムやキリイだけでは戦力的に問題が残る)」

『一応、彼等のどちらかでも連れて行った方がいいと思うのですが……』

「(不要だ。一気に急襲して回収、即撤退の三ステップで終わる。地形によっては一分かからん)」

『急襲って……。もしかしたら誰かが持ち主が見つかるまで保管している可能性も――』

「(――ドリスよ。俺はコンテナを持ち出す事に対し許可を出した覚えはない)」

『………』

「(よく考えろ。あれが道に落ちていたのならお前の云う可能性も残る。だが実際には、あれは借りた宿の一室から持ち出された。そこに悪意以外の何を感じろと云うのだ)」

『確かにそうかもしれません……』


 ドリスは不承不承、といった感じで云う。


『でも、やはり一人は連れて行くべきです。マスターはまだこの都市に不慣れではないですか。単純な作戦に終始させる為にも援護は必要だと思います』


 どうしたものか――シドは迷う。これまでは常に迷った時点で結論が出ていた。シドとドリスの意見が衝突した時は、いつもドリスの意見を採用してきたのだ。これは船のAIであるドリスの方が外界から得る情報が多かったせいである。しかし肝心の船と切り離された今、所持している情報量も、対応速度もシドの方が上だ。

 理論的に考えるならば、ここは己の意見を採用するべきだろう――そう決めたシドが、


「(やはり必要な――)」

「――ちょっと、シド!」


 ドリスに断りの言葉をかけようとした時、背後から屋敷の主であるミアータがやってきた。


「何の用だ?」


 問いかけには答えず、ミアータは物凄い剣幕でシドに詰め寄ると、腕を伸ばし外套の胸の辺りを掴み上げた。


「……鍛錬はどうしたのよ?」

「(鍛錬だと? ……何かの隠語か?)」

『さぁ……。ヴェガスと勘違いしているのではないでしょうか』

「……ヴェガスなら別の場所だ」

「あいつの居場所なんて誰も聞いていないわよ!」


 殺気立った猫のように突っかかる。


「何を云いたいのか理解できないが、敢えて答えるならば俺には鍛錬など不要だ」

「ならなんで仕事しないのよっ!?」


 成程。シドはやっと合点がいった。借金が存在するのに金を稼いでいないのが気に食わなかったのか。

 しかし長い目で見た場合、コンテナを回収しなければそれがいずれ足枷となるだろうことは間違いない。 

 

「まずやらねばならん事がある」

「……云ってみなさい」

「地下道の一件の際、俺が持ち歩いていたコンテナを宿から持ち出した者がいる。あれを回収しなければ都市で長期的に作戦行動を取ることは極めて難しいだろう」

「コンテナ?」


 ミアータは怪訝そうに片眉を上げた。


「……そういえば貴方、王都に入る時は大きな箱を担いでいたわね。それの事?」

「そうだ。これからあれを回収に向かおうと思っていた」

「場所はわかってるの?」

「ああ。外側の城壁のさらに外、古い建物群の中だ。詳しい位置も判明している」

「……そう」


 ミアータは手を離すと、


「そういう事なら仕方ないわね。これでも情報を集めることの重要さは理解しているつもりよ」

「ならばこれ以上話す事もあるまい」

 

 シドは地に寝かせておいた射撃槍を拾い上げると背を向けた。


「ちょっと!? そっちは応接室じゃないわよ!!」


 追いかけてきたミアータの言葉に、


「屋敷から出るのに応接室に向かう者がいるのか? 窓から出る必要があるのならそうするが……」

「バカにしてるの!? あの遊んでる連中を連れて行きなさいよ!! 貴方の部下でしょ!?」

「今回の作戦には不要だ。移動時間を含めなければ数分で全て終わる」

「なら他に仕事をさせるとかあるじゃない! ――って、ちょっと待って。まさか一人で街に出るつもりじゃないでしょうね?」


 シドはうんざりしたように、


「俺がオムツを履いているように見えるか? 行って帰ってくるだけの簡単な仕事だ」

「ギルドで登録するだけで何人も殺す貴方に簡単な仕事なんてあるわけないでしょう!」


 二人は共に相手を理解できないモノを見る目で観察する。

 シドはミアータに向き直り、


「エルフを街中に出して問題が起きずに済むと思っているのか? 俺が居れば処理できるが、アキム達では無理だ。今日一日我慢しろ。明日からは金を稼ぐために動く」

「――何が処理よ!! 最終的に全部私のところに来てるのよっ!!」


 怒りが再燃したミアータが、怒髪天をつく勢いで叫ぶ。


「(……これは始末に終えん)」

『後ろの老人に頼んでみたらどうでしょう』

「(……ふむ) ――そこのお前」


 シドはミアータの背後で渋い表情をしている白髪の男性に話し掛ける。


「ハ。私でしょうか……?」


 どう見ても自分より年下のシドにお前呼ばわりされた老人は不快そうに眉を寄せた。それでも我慢して訊き返す。


「そうだ。薬を使用しても構わん――」


 そう云ってシドはミアータを見下ろした。


「――この女を静かにさせるがいい」

「――なっ!? ……も、もう許せない!!」


 真っ赤になった女伯爵はとうとう実力行使にでた。鬼女のような形相でシドに掴みかかる。

 咄嗟に背後の老人が羽交い絞めにした。


「お嬢様! はしたないですぞ!!」

「放しなさい! これ程の侮辱を受けて黙っているなんて出来ないわ!!」

「駄目です! 私の目が黒いうちは品位を疑われるような行いを許す訳にはいきません!!」


 暴れる主人を押さえる執事。

 シドは驚いた顔で、


「静かにさせろとは云ったが、まさか力尽くで押さえにかかるとはな……」

「放してぇーーっ!!」

「駄目ですぞ!!」


 老人はシドに向かって、


「早く行って下さい! 貴方が居るとお嬢様の心が乱れます!!」

『マスター、もう行きましょう……』

「(そうだな)」


 シドは改めて背を向けると、屋敷から出るために歩き出す。


「どこに行くのよっ!? 私の云ったことが理解出来なかったの!?」

「もうお止めください!」

 

 錯乱したミアータの叫びが後を追ってくる。


「戻りなさい! ――戻れって云ってるでしょーーーっ!?」


 シドの背中に当たった絶叫が、虚しく宙に溶けていく。


 執務室では、響いてきた女の金切り声にギョッとしたアキムが、お茶を床に零していた。









 先の見えない通り。立ち並ぶ建家に屋台。そして通りを闊歩する多種多様な種族。

 その光景に、レティシアは言葉も忘れ、呆けた。

 今いるのは最初の城壁を入ってすぐの場所だ。後ろから続けて入ってきた者達に背中を押されたレティシアは我に返り、慌てて身体を横に移動させた。


(……ここが王都なのね)


 目を丸くしてキョロキョロと辺りを見渡す。

 幸運な事に注目している者はいないようだ。ほっと安堵の息を吐く。 

 

(やっぱり変装してきてよかったわ)


 そう思う。

 現在レティシアはチェインフードを被り、長い耳と輝くような髪を完全に覆ってしまっている。その上からさらに顔の上半分を覆う兜を被っているのだ。口元と身長から女性であることは隠しようがないが、それだけでエルフと疑う者はいないと信じたい。

 

(まずはエルフの目撃談を聞き込まないと……)


 どこで訊ねるべきだろうか。

 もし仮にこの都市に兄達がいた場合、表に姿を出しているかそうでないかで選択肢が分かれる。もし表立って行動しているのなら、ギルドにでもいって訊ねればすぐに居場所は知れるだろう。

 問題は裏で行動している場合である。その場合、日の当たる場所で探しても決して見つける事は出来ない。聞き込みは裏社会で行う必要が出てくる。

 腰に下げた短剣と杖を確認する。この二つに全てはかかっている。失敗すればレティシアを待ち受けるのは死よりも悲惨な運命だろう。

 慣れない鎧に疲れた身体に鞭を打つと、


「――あの、すみませんが傭兵ギルドの場所を教えてはいただけないでしょうか」


 近くの屋台にいる年配の女性に訊ねた。


「いらっしゃい! って客じゃないのかい……」


 レティシアの格好を見た女性は胡散臭そうな目で見る。


「――あ、これ買います!」


 慌てて手近にあった食べ物を適当に頼むレティシア。

  

「……まぁいいけどね。ギルドの場所なら――」


 注文した品を袋に入れながら道を教えてくれる女性。

 レティシアは必死で頭に道順を叩き込んだ。


「――分かりました。どうもありがとうございます」


 ペコリと頭を下げる。

 

「いいんだよ。こちらこそ毎度あり!」


 女性はにこやかに笑って応え、その後声を潜めて、


「――でも気をつけるんだよ」


 そう囁いた。


「気をつけるって何にですか?」

「アンタ来たばっかりかい? なら知らないか……」

「……何かあったのですか?」

「あったもなにも……。ギルドの中で殺しがあったらしいんだよ。しかもつい数日前さね」

「殺しですか?」

「そうだよ。私も噂で聞いただけなんだけど、大男を連れたエルフ達が、十人近い傭兵を殺して身ぐるみ剥いだとか……」

「――なっ!?」


 レティシアの顔が青くなった。

 女性はさらに続ける。


「しかも、殺されたのは荒くれ揃いで有名な傭兵団らしくて、そこの団長が血なまこになって犯人のエルフ達を探しているらしいんだよ」


 嫌だねぇ――とぼやく女性。

 レティシアは震える声で、


「そ、そのエルフ達の人数とか名前とかわかりませんか!?」

「悪いねぇ。私もそこまで詳しくは知らないんだよ」

「……そうですか」


 傍目にもわかるくらい肩を落とす。

 屋台の女性に丁寧にお礼を云いながら、教えてもらった道順通りに歩き出すレティシア。


(兄さんやナグダムがそんな事する筈ない。でも、外に出ているエルフなんて数える程しかいないってナグダムが昔云ってたし……)


 複数のエルフがこの時期に偶然この都市にいただけだろうか……。

 そもそもそんな強盗のような真似をエルフがするなんて、レティシアには信じられなかった。


(とりあえずギルドに行って詳しく訊かないと……)


 萎えそうになる脚に力を入れて歩く。

 意識せぬまま、右手が杖を握りしめていた。その背中を見送っていた女性は、


「……どうしたんだろうねぇ」


 そう、心配そうに呟く。

 レティシアの小さな背中が雑踏に紛れて消える。

 王都はいつも通りの姿だ。女性は前を向くと、威勢のいい掛け声を張り上げた。

  

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