落ち穂拾い
地平線のその向こうまで続いている大地に、朝の訪れを告げる淡い陽が差す。だがそれは希望の光ではなく、重労働の始まりを指す絶望の灯であった。遠くの方で地主が馬に乗って優雅にこの広大な土地を眺めているがそんなことを気にしている暇などない。他の労働者と同じように腰を曲げ、どんよりとした雲々の重さを背中いっぱいに受け止める。ちょうど刈り入れが終わった後の畑には麦の穂がいたるところに落ちていて、それをただひたすらに拾って回るのだ。熱が出たのかと勘違いするほど広いこの土地で、一日中腰をかがめて落ち穂を拾って回るのだ。高く積み上げられた穀物の塔を背に、茶色の平原から一粒一粒拾っていく。達成感も充実感も無いこの作業を繰り返しているといつかは気が狂ってしまいそうだ。朝の冷えた風に手先がかじかみ色を失っていく。さらにはその乾燥した手のひらが刈り取った後の藁に容赦なく刺されていく。が、これらにいちいち反応するほどの元気はない。早く休憩時間になってしまわないだろうかとついつい考えてしまう。もっとも、あの裕福そうな地主にとっては私たち労働者達のための休憩時間など、まさに落ち穂拾いすることなのだろうが。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%90%BD%E7%A9%82%E6%8B%BE%E3%81%84、
地面にこぼれ落ちた稲穂を後から拾い上げる様子から、「物事の本筋からこぼれ落ちてしまった重要性の低い些細な事柄を、後から拾い上げて処理する」、と言うような意味で用いられる。
例:忙しくてやり残した事務作業を落ち穂拾いする。
授業で取り上げるほどでもなかった説明について最後に落ち穂拾いしておく。