話のネタ
アラームがなる前に目が覚めた。何か違和感を覚えたからだ。その時は何にそれを感じたのかわからなかったが、あとから思うと布団の肌触りだったかもしれない。
目を開けて体を起こした俺は、一瞬にして気付いた。
ここは俺の部屋じゃない。見るからに女の部屋……。
俺はまさかと思って、恐る恐る隣に目をやった。
予想通り、女が寝ていた。見知らぬ女。のはず……。
横を向いていて、顔がよく見えない。ただ、彼女でないことは断言できる。
髪の長さが全然違う。俺の彼女はショートヘアだ。
ロングが好きだと俺が何度も言っても、彼女は決して伸ばしてくれない。
隣の女は俺の理想どおりのロングヘア。俺は、この髪に惹かれたのだろうか……。
酔っていたのなら、今の状況は有り得なくはない。俺は、酒をある一定量越えると記憶が飛ぶのだ。周りは酔っていることに気付かないほど、見た目は普通らしいが、俺はどうやって家に帰ったか覚えていないことがちょくちょくある。
だが、見知らぬ家で目を覚ましたのは初めてだ。
しかも俺は裸だ。隣の女も見る限り裸だ。こんなところを彼女に見られたら、言い訳のしようがない。何もなかったなんて言葉は通用しないだろう。
記憶は本当になかったが、何もなかったということはないだろう……。
俺はふいに笑みがこぼれた。
あいつらに話すネタができた――。
これで真面目でつまらない男から卒業だ。
このあとの展開もちょっとおもしろいと有り難いな。
と、こんなときにこんなことを考えてる俺は、最低か……。