雨宿りのバス停
冬の山間部を走るバスの中。外を眺める私。
この時期の山や田畑や茅葺き屋根は雪の衣装を身にまとい幻想的な風景を演出する。
この風景を見ると時間がゆっくり進むような独特の感覚になる。この風景は私が小さい頃から高校生になった今でもずっと好き。
「次は白水〜。白水です」
いつも通り『白水』のバス停で降りると雪ではなく雨に変わってきた。
少しバス停で雨宿りしよっか。
『白水』のバス停は雨風を凌ぐ事が出来る木造の小屋のようなバス停で中には6人位座れる。
雨宿りして20分位経っただろうか。バス停の前に尻尾がフサフサのキツネが現れ、こちらを一目見て、歩き去って行った。
キツネさん?珍しい。いつぶりに会ったかな?私が小さい頃にキツネさんにリンゴをあげた時あったな。
外も暗くなってきた。目を閉じて少しウトウトしていると車のエンジン音が聞こえ、目を開けた。
1台の黒塗りの車がバス停の前に止まっている。
後部座席のドアが開いた、中には綺羅びやかな白い着物を着た髪型が華やかな女性が座っている。
「一緒に乗って帰る?」
「あ、いえ、雨が止んだら帰れますので」
「そう。風邪ひかないようにね」
「はい」
ドアが閉じ、車はゆっくり走り去って行った。
今の誰だろ?
10分位すると今度は軽トラックが走って来て目の前に止まった。間違いなく家のおじいちゃんだ。
私は席を立ち助手席のドアを開ける。
「はい、行くべ」
おじいちゃんに言われ軽トラックに乗った。
軽トラックに乗っている最中におじいちゃんに聞いてみた。
「バス停に私がいるってなんで分かったの?」
「電話来たんだ」
「誰から?」
「わかんねぇけど、ミチコちゃんがバス停で雨宿りしてるから迎えに行ってもらえますか?って。女の人の声だったな」
あの着物の人かな?
次の日の朝、バス停へ行く前に台所にあるリンゴを1つバックに入れた。
今朝の『白水』のバス停には誰も居ない。
バスに乗る前にバックの中のリンゴをバス停の小屋の横に置いた。
学校が終わり夕方の帰りのバスに乗り、いつも通り『白水』のバス停で降りた。
キツネさん居るかな?
辺りを見渡してもキツネは居ない。
今日は天気も良くてまだ外も明るくてキツネさんに心配して貰えなさそうだから居ない気はしていた。
朝置いたリンゴを見てみると。
リンゴは無くなっていた。
心配かければまた会えるかな?それともキツネさんの好物を置けばまた会えるかな?これからもまた会いたいな。




