第2話 〜契約の力〜
前回のあらすじ
貧民街で搾取される側だった主人公「ジナトス」。しかし、接点もないのに見た目がタイプだと中級者のモーナトールに拾われ、契約によって力をもらう。その代償として、モーナトールの言うことを聞く召使になったジナトス。最初の仕事は何と死体処理!?死体を頑固ジジイに押し付けようとしたら、そのジジイが何らや強そうで……
「早くくたばれ!クソガキィ!このまま続けたら野次馬が来ちまうぜぇ!」
ジジイは石を拾っては投げ、拾っては投げと石の弾幕を飛ばしてくる。
魔法が使えるほど力のない貧民街の人間同士の戦いはただの肉弾戦だ。
石を避けながら俺は少しずつジジイに近づく。
「うるっせぇジジイだなぁ!俺はッ!別にッ!見られてもいいんだよォ!」
俺はモーナトールとの契約によって力が増し、飛んでくる石を見切って避けれるようになっていた。
しかし、投石という単純ながらもしっかり火力も速度も出る攻撃はなかなか突破できるように思えない。
(この弾幕、どう突破する?この速度は当たったら死ぬよな。とりあえず殴れる距離まで行くか?でも、近づけたとして殴り勝てるのか?)
「さっきからッ、石投げてばっかでッ、どうしたァ!よっぽど近づかれたくッ、ないッ、みてぇだなァ!」
(とりあえず、喋って隙を探せ!今の所石に当たる気配はない。)
「そんなわけねぇだろ!こんだけの力を持ってて!この街とはいえ、最近のガキはそんなに頭が悪くなったのかぁ?!」
(まぁ、そうだろうな。これだけ石を投げれて弱いわけがない。)
(ッ!そういや、契約の内容は「安全を絶対に保証する」だったよな?どうする?危機的状況になったら死ぬと思っているあいつの嘘かもしれねぇが突っ込むか?)
「あ゛ぁっもう、めんどくせぇ!!もし怪我したら契約不履行だからなァッ!」
俺は両腕をクロスして顔面を守りながら、飛んでくる石の中を突っ込み、
「オォラァァッッ!!」
相手の腹に一発殴り込んだ。ジジイは「うごォッ!」と声をだし、後方に飛んだ。
腕で前がよく見えなかったが、ジジイは突っ込んでくるとは思っていなかったのか反撃してこなかった。
今回の戦いで得たものは初めての勝利と疲れのみだ。怪我も痛みもない。
(戦える!戦えるぞ!この力があれば今までの奴らに仕返しできる!!)
息を整え、腹を押さえてうずくまっているジジイの側に行き、ニッコニコの笑顔を見せながら話し合いを始めた。
「あんだけ言っていたくせに、大したことなかったなぁ!お前!」
(今まででは勝負の土俵にすら上がれなかったのに…。こんなに強いやつを倒せるようになるなんて…!気分が良ぃなあ!)
「まあいい。俺はこのゴミを捨ててぇ。でも、この街で捨てるところなんてねぇだろ?そこでこの人目の少ない通りに捨てるってのがいいと思うんだ。あんたはどう思う?」
ジジイは顔を歪めて、涙を流しながらも
「ぃいですね…。私は賛成ですよ。」
と悔しそぉ〜に言ってきた。
(俺に勝てないことを悟ったんだろうなぁ。こいつは自分が強いと思ってたから、こ〜んなガキに負けてさぞ悔しいだろうなぁ)
「だよなぁ〜。あんたならそう言ってくれると思ってたぜ。でもよぉ、処分しているところを見た人間がもしもいたら消さないといけないよなぁ。できるだけゴラヌスに目をつけられたくないからなぁ。」
口角が限界まで上がるのがわかる、俺は今の状況に、自分で制御できないぐらい楽しんでいるのだ。
「いっ、いえぇ。私は決して口外しませんん。ぜったいにぜぇったいに!」
「ほぉ?なら契約、やるよね?今、俺に殺されない代わりに今後一生ここでの俺の行為を人に伝えない契約をね?」
「やっやりますぅぅ!やらせてくださいぃ!!」
「なら、この手を取って!早く!」
そう言い、オーラの出ている手を出した。ジジイはすぐさまその手を取り、契約が結ばれた。
(人によってオーラの色が違うというが、俺のオーラは赤色か。しかも真っ赤!いい色だな)
「じゃあ。後4つ持ってくるから、人が来ないように見張っといて!」
「はっ、はいぃ」
ジジイという不安材料を取り除いたのでその後の掃除はスムーズにできた。
皿洗いもまぁ…あいつよりは上手かったらしい。
そんな1日を終えて、モーナトールに今日の出来事を伝える兼飯の時間となった。
「今日の夕食はパンとステーキだ。初日だからな。契約で強要できるとはいえ、お前にはほどほどの自由と幸福を与えたいと思っている。お前はあの連中と違って天然物で、しかも思想も染まっていないからな、気に入っているんだ。」
そう言って出されたものは見たこともない、白いパンといい匂いと見た目の肉だった。その香りはこの世のものではないんじゃないかと思うほどで、肉も温かそうだった。これを見て、会話を挟みながらの食事ができるやつはいるのだろうか?いいや、いない。ナイフとフォークの使い方を教わり、食べてみると、そこには肉の旨さが詰まっていた。今後はあの腐った食事を食べられないだろう。これに比べたら、あんなのは食事とはいえない。白パンは甘味がすごかった。いままで食べたパンの中でもっとも柔らかく、貧民街がどれだけ劣悪な環境下がわかる。だが、そんなことは白パンとステーキの前ではどうでもよかった。俺は一口一口を噛み締め、幸福感に浸りながら、食事を終えた、気付かないうちに時間が結構経ってしまっていたようだが、俺が食っているところを黙って見ていたモーナトールは少し笑みを浮かべていた。
「さて、満足かな?あんなに美味しそうに食べるやつは初めて見たよ。毎日の食事はこれより質素なんだけど、たま〜に今のくらいの料理をだしてあげよう。君が頑張ればたくさん食べられるから、頑張ってね。それはそうと、今日の仕事はどうだった?ゴラヌスに関する情報とか、ゴラヌスに死体がバレたとかあった?」
ひっさしぶりに満足する食事を取ってご機嫌なジナトスはテンション高めで今日の出来事をモーナトールに伝えた。
街で有名な、ゴラヌスとの非契約者の強さが自分より劣っていたことや、その男は自分が強いから契約しなくても生き残れると話していたこと、その男と契約して裏道での行為が外に伝えられないようになったことなどを話した。
「よくやった。これでだいぶ攻略が進んだよ。じゃあ今日は寝てていいよ。あのベッド、自由に使っていいから。」
と、モーナトールは家の中の大きなベッドを指差した。
俺はモーナトールに言われた通り、ベッドに横たわり、これまた体験したことのない柔らかさに包まれすぐに寝てしまった。
〜一方そのころ〜
「なにぃ?あの6人が砂利の裏道で死んでいただと?」
椅子に腰掛け、パイプを吹かしている男・ゴラヌスはモーナトールに殺された6人の知らせを聞いている。
「で?誰がやったのか掴めたのか?」
誰が6人を殺したのか、分かり次第排除しなければ、契約で守っている人たちからの信用を失ってしまう。
その殺すべき相手は砂利道の主である、奴から教えられているはずだ。と秘書に聞く。
「いえ。ただ、砂利のトーサが少し怪しいですね。」
「トーサが!?あいつまさか裏切ったのか!」
「いえ、奴が殺したのではないと思うんですけど。私が行くまで、この情報を誰にも知らせず自宅にこもっていたんですよ。しかも、何かに怯えるように。」
「ほう?奴を倒せるようなやつに心当たりは?」
「さぁ?この街の外から来たやつなんじゃないですかね。内部の雑魚が勝てるような奴らではないですし、契約していないやつが強かった時はその情報がこっちにくるはずですから。」
「とりあえず、容疑者を定めても意味はない。集団で謀反を起こした可能性だってあるのだ。明日から、直属の奴らを使って調べ上げるぞ」
(上級者ってことはないな。奴らに目をつけられたら、こんなに生きておれん。単独犯なら相手は中級者の中か下ぐらい、集団だと…考えたらキリがない。まぁ俺と正面で戦いに来ないぐらいの強さだと考えておこう。)
そして、夜が明け、主人公とゴラヌスの接触する日がやってくる…
世界設定メモ ー《力》ー
この世界の個々人が持っている力のこと。多く持つことで魔法が使えたり、身体能力が強くなったりと基礎能力が向上する。
他の世界の魔力に近い。
現実世界で例えるなら、外付け筋肉。
力はゲームのPP、MPなどと違い運動したら、減る物ではない。
契約で渡すことができるので武力以外の価値も持つ。
例)力を渡すので、奴をころしてほしい。
しかけた側は力を相手に渡すので、力の量が減るが、自分の手を汚さずに済む。
しかけられた側は人を殺すだけで力の量が増える。
この世界は力が全てである。




