第7話:王都で再会! 元嫁達のマウントが止まらない
故郷で絶望を味わったオレは、王都に戻っていた。
魔王討伐完了のセレモニーに出席するためだ。
本当はオレが王都に凱旋した時に開かれる予定だったのだが、残党狩りが落ち着くまで、待ってもらったのだ。
魔族の恐怖が残る中、神輿として担がれるだけってのはごめんだったからな。
当然魔族を撲滅できたわけではないが、被害は劇的に減った。
よほど運が悪くなければ遭遇することすらないだろう。
というわけでセレモニー開催となったのだ。
これを機会にリーズ達を王都に呼び寄せ、楽な暮らしをさせてやりたいと思っていたのだが……そうはならなかったな。
セレモニーでは貴族たちに家族を紹介する予定もあったのだが……せっかくだからキャンセルせずにちょっと利用させてもらおう。
ひとまず旅の疲れを癒すため、行きつけの大衆食堂で昼食をとった。
いつもならこの食堂に併設された宿屋に泊まるのだが、大臣たちによって王城近くの高級宿を予約されてしまった。
オレとしちゃあ、いつもの宿の方が落ち着くんだけどな。
警備がしにくいと言われちゃあしょうがない。
警備なんて不要だが、彼らにも与えられた仕事があるのだ。
オレのわがままであまり困らせるものでもない。
そんなことを考えながら食堂を出ると、リーズとガイ、それに元義父が使用人を引き連れているところに出くわした。
目ざとくオレを見つけたリーズが、ちらりと背後の食堂兼宿屋を見て近づいてくる。
リーズはニヤニヤと嫌味な笑みを浮かべ、口を開く。
「あらぁ、こんなボロ宿に泊まっているなんて、剣聖だというのはやあぁっぱり嘘だったのね」
ガイと元義父もやれやれとわざとらしく首を横に振っている。
「ここの飯はとびっきり美味いんだ。お前らも食っていったらどうだ?」
実はこの店、見かけは町の大衆食堂だが、現宮廷料理長の師匠がやっているのだ。
店長はお偉いさんとはソリが合わないという理由で城を出て、こうして本当に喜んでくれる人のために店をやっているというわけだ。
それに、ボロいと言われるほど悪い見た目でもない。
貴族が通うような店ではないが、庶民向けとしては十分清潔を保っている。
「いやよ。王宮のステキな料理が待っているんですもの」
「宮廷料理より美味いぞ」
「そんなわけないでしょ。これだから貧乏人の舌は嫌なのよ」
その宮廷料理長が「未だに師匠にはかなわない」と言ってるんだがな。
「そんなヤツにかまってないで宿に行こう。最高級の宿が用意されている」
ガイがアゴで王城の方を指した。
「貴族しか泊まれない宿が用意されているんでしょう? さすがガイね!」
「ふふふ、まかせてくれよ。国からもあの街を発展させるキーマンだと評価されてるからね」
「ステキ! やっぱりあなたを選んで正解だったわ!」
リーズはふふんと鼻で笑うと、王都の方へと歩いていった。
そこに入れ違いでやってきたのは、貴族御用達の馬車だった。
馬車から降りてきたのは大魔道士キルケである。
「迎えに来たよ! ほら乗って!」
にこりと笑ったキルケがオレの手を引く。
「わざわざ迎えに来なくていいのに」
「少しでも早くラディウスに会いたかったからね! どうせ同じ宿なんだしいーっしょ!」
「旅疲れしてたからな、助かるよ」
「ちっとも疲れてなんかないくせにまた気を使ってぇ……でもそういう優しいところが好きー!」
馬車に乗り込み、隣にこしかけたキルケがぎゅっと腕に抱きついてくる。
そうしてオレが泊まったのは、王都一の宿屋の中でも最も立派なスイートルームだった。
巨大な屋敷と呼んでさしつかえないそこは、いたれりつくせりのサービス満載だった。
一夜明け、最上階から降りていくと、ちょうど部屋から出てくるリーズ達と鉢合わせた。
「ステキな宿だったわ。こんなところに泊まれるなんて、さすがガイね」
「いずれ最上階のスイートにも泊まれるようになるさ」
「ステキ! ラディウスなんて捨てて正解ね!」
「そうだろう? ……ん?」
そこでガイと目があった。
「なぜあんたがここに? しかも上から降りてくるんだ?」
ガイは訝しげな顔でオレを見た。
ブックマーク、高評価での応援よろしくお願いします!
とても励みになります!




