始動と解明
「そっちがそうくるなら、こっちも抵抗させてもらおう。」
小さく、その男は横で呟く。
丘から街を見つめているその目には、いつもの濁りがある。
「レイテス、計画を早める。
まず初めに、ペルセントをぶっ潰すぞ。」
グレイは、僕に向けて言い放つ。
「能力育成学校についてはどうするつもり?」
「あそこにはソーサリーが行っているからいいだろう。
それに、あそこの学園長だったバカじゃない。
あいつが組織の人間だってことくらいはバレてるだろうしな。」
その言葉に、僕はハッとする。
確かに、グレイは当たり前のように人を駒として使う。
しかし、それはこの先を見抜いた結果に導き出されたことであることがほとんどだ。
ソーサリーのような実力者を捨て駒にすることは考えにくい。
「まぁ、お前が考えることじゃない。
今お前がする仕事は、準備を整えることだ。
向こうがアルテの俺たちの情報を握るのには結構時間がかかるだろう。
俺たちの準備がどこまで進んでいるかなども含め、詳細に読み取ることはほぼ不可能だ。」
僕の思考を無駄だと言うように、グレイは今やるべきことを提示してくる。
「計画の開始まで約半年を予定していたが、そんな悠長なことはできない。
3ヶ月だ。
3ヶ月かけずに全ての準備を終わらせろ。」
相変わらず難しいことを言ってくる。
そんなことを思いつつ、僕と彼はペルセントから姿を消した。
グレイの気配が消えたか…
少し肌寒いとも感じれる夜の闇の中、俺は寮の屋上に立って街を見下ろしていた。
もう、今何が起きているのかを完全に理解することはできない。
使いたくなかったが…
ずっと悩み続けていたその魔法を使うことを決断する。
彼女の、アストリナの顔が脳裏に浮かぶ。
「これで、できると思うか?」
思わず漏れた言葉に答える人間はもちろんいない。
それでも、脳裏に浮かんでいる彼女の顔を想い、俺は覚悟を決める。
目を閉じ、その魔法の魔法陣を作り始める。
足元に、小さな白い円陣が描かれていくのがわかる。
この魔法を使うための条件を、俺は決定する。
今使うことができる、時間経過で回復できる魔力の全て、そして魔法発動のために不足している魔力を、生命エネルギーとなる魔力から消費する。
条件の魔力の全てが満たされたことを確認するかのように、円陣が鈍く光る。
目の前に現れる光景に、思わず目を開く。
どういうことだ…?
体から、魔力は確かに消えている。
魔法自体の発動ができていないわけじゃない。
つまり本当に━━━━━━!
俺の顔に苦笑が浮かぶ。
「ははっ……
こりゃあキッツイな。」
何はともあれ、確定していることもある。
あと半年。
この半年で俺の運命も約束も、全てが決まるということだ。
あ、あとあの件があったな。
とりあえず、明日で特別訓練は終わりを告げる。
その後でいいか。
そう思い、俺は屋上から降りていくのだった。
次の日の早朝、俺たちは全員グラウンドに集められていた。
休み明け、自分たちの教室が吹き飛んでいるのを直視したAクラスの生徒たちは、とてつもなく疑問を浮かべていたが、そんな彼らを差し置いて、全員の前に立った1人の教師が声を上げる。
「本日をもって、特別訓練を終わりとする。」
その言葉を聞き、全ての生徒から、喜びや驚きなど、さまざまな声が飛ぶ。
そりゃそうだろう。
今日この場で初めて聞く情報なのだから。
いつも通りの学校生活が戻ってくるかわけもなく、新たなステップが始まるだけだ。
「明日より、特別試験後のテストを開始する。
自分が志望するクラスを書いて提出しなさい。
ただし、Aクラスはそれ以上のクラスを書くことができないので書かないように。
そして、本日は以上で解散とする。
各自クラスを記入したら帰るようにしなさい。」
Aクラスには仕事がないという話だ。
つまり、俺はそいつが紙にクラスを書くまで待てばいいってことだ。
それから数分後、言われた通りに紙を書き終えたその1人の男子生徒に、俺は声をかける。
「ちょっといいか?」
俺が話しかけた瞬間、そいつは飛び上がるように驚き、縮こまる。
こんなやつがやったとは思えないな…
そう思いつつも、俺はそいつを連れて少し道を外れる。
そこで、
「前の試験の中で、Cクラスの生徒に妨害をかけるようなことをしたのはお前だな?」と問いかける。
これを狙って魔法を使ったつもりはないが、思わぬ副産物が出てきたと言ったところだろうか。
そして、前で相変わらず縮こまっているやつは俺の問いに答えない。
この生徒はBクラス。
Cクラスでどんどん成長している奴らを、自分たちのところにくる前に蹴落として起きたかったということだ。
しかしまぁ、こんなひ弱そうなやつがそんなことを企むわけもなく、もちろんバックにいる人間がいる。
Bクラスでも知略に優れていると噂の…
えーと……うん?誰だっけか?
………まぁ、そいつだ。
そいつ自身腕っぷしが強いとかそう言う話は聞かないが、こんなにおどおどしてるやつに圧をかけるくらいは容易だろう。
「まぁ、お前が答えなくても、お前がやった人間であることはわかっている。
そして、それがある人間の命令だったということもな。」
その言葉を聞き、その男子はハッと顔を上げる。
「わかるんですか…?」
小さな声で、彼は聞いてくる。
なんと言うか、出会った最初の頃のカルリアみたいだと感じる。
「お前がやりたくてやったことなのかどうかは答えてくれ。」
そう聞くと、すぐに首を振って否定を示す。
「だったら、大丈夫だ。
お前に命令を出したやつにもしっかりと言い聞かせておく。
貸ひとつだぞ?」
そう言って、俺は飛び上がる。
この言葉は、でまかせを言ったわけではなく、確固たる確証があって言ったことだ。
それがわかるのは、明日になるんだがな━━━━━━
次の日、試験が始まった。
内容は至ってシンプル。
昨日用紙に記入したクラスの生徒と戦い、勝てばそのクラスに昇格すると言うものだ。
挑まれたクラスの生徒が負けた場合は、挑んできた奴のクラスまで降格される。
極端な話、DクラスがAクラスになることもあれば、AクラスがDクラスになることもあり得なくはないと言うことだ。
そして第一試合、俺の相手は、見違えるほど成長した1人の少女。
「いつかの約束、守ってくれますよね?」
「それはまだだな。
最初は様子見だ。
時間はたっぷりあるしな。」
そう答えて、俺と彼女は同時に剣をとる。
「こいよ。」
俺の言葉と共に、試験は開始した。
こんにちは、というかこんばんはですね。
最なれがだいぶ進んできたのもあって、もう一つ『日本及び世界征服計画』という連載作品を掲載しました。
まだ1話しか出していないのでなんとも言えませんが、方向性などこの作品と全く異なるので、気になった人は是非ご覧ください。




