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再び始まった生活と新たな生活

俺が能力育成学校に入って1週間と少しが経ち、

「おいクロ!

飯に行こうぜ。」

そう言って俺に話しかけてくるのは…アベルだ。

まぁなんでこんなことになっているのかというと…

約1ヶ月前、俺は仕事を終わらせてあの男の元へ戻った。

「それでだ、ソーサリー。

お前には能力育成学校へ入ってもらう。」

あの男…グレイは俺にそう告げた。

どうするかという話になった結果、ソーサリーではなくクロノ・エルドという名で学校へ入学することになった。

今学校で“シロ”という男の存在がどうなっているのかはわからない。

これも桜庭霞に聞いておけば良かったと思いつつも、俺は学校に戻ることを決めた。

魔法の応用によって、魔法の力をこの世界における能力へと変換、例の結晶に触れる時にその力を使ったため、俺が再びゼロクラスになることはなかった。

彼女が言っていた異能というものが能力としてカウントされるなら、擬似的に色々と弄ってみたらいけたのだ。

最も、それを確実にするためにルービヒの力を借りていたのもあり、結構な時間がかかってしまったのだが…

まぁその甲斐あって無事Cクラスに入ることができたのだが…

なんでこいつらがいるんだか…

そう思いながら彼らの後について廊下を歩いていく。

アベル、カルリア、リョウ。

この数ヶ月の間に行われた試験で好成績を納めたらしく、こいつらはDクラスからCクラスに上がっていた。

これが彼女が言っていた成長というやつなのだろうか。

カルリアは今の俺に自分から関わりにくることはないが、アベルはよく話しかけにくる。

というか、席が隣になったから話しかけてきたという感じだろうな。

しかし、カルリアがいる方向から時折視線を感じることもあるのだ。

相変わらず彼女のことはよくわからない。

リョウは前よりも関わりは減ったが、そこまで極端に変わったわけじゃない。

なんだか実家に帰ってきたような安心感だ。

いや、実家は燃え尽きていたか。

ははは、と心の中で苦笑を浮かべ、はぁ。ため息を吐く。

「ん?

どうした?」

前を歩くアベルが振り返って聞いてくる。

「なんでもない。」

短く答える俺に

「なんかお前ってシロに似てるところあるんだよな。」と言ってくる。

一瞬、ドキッともしたが、

「シロっていうのはなんだ?

人の名前か?」と聞き返す。

「あぁ、数ヶ月前にこの学校にいた生徒で俺たちの友達だ。

今はもうどこかへ行っちまったけどな。

元気にしてんのかなー」

そう言ってアベルはあの頃を思い出すように少し上を見る。

「久しぶりに会いたいですよね。」

横からカルリアが口を開く。

「案外、近くにいて僕らを見ているかもしれないけどね。」とリョウが苦笑する。

冗談で言っているんだろうが、こっちはバレてるのかバレてないのかわからないから怖いこと言うなよ…

なんて思いながら、俺たちは食堂へ行って飯を食べるのであった。




久しぶりの学校の飯を食べ、俺は昼休みの時間に学園長室へと向かって歩いていた。

今日の朝担任に行くように言われていたのだ。

担任…クラーラ先生はこの1週間で生徒思いの優しい教師であるとわかった。

ところどころポンコツな部分があるのが難点と言えるかもしれんな。

前の小テストの時にはテスト用紙を間違えて捨ててテストができなかったとか、暇な時間にレクリエーションで風船バレーをしようと持ち出したくせに風船を忘れ、その後膨らませた瞬間にその喜びで風船を離し風船が吹っ飛んでいき、挙句それを追いかけて行ったら防火用バケツをひっくり返してレクリエーションが掃除になったとかいう話をアベルたちから聞いた。

個人的には退屈しなさそうな教師だとか思ったし、大切なところだけちゃんとしてくれれば問題ないだろ。

…………テスト用紙捨ててる時点でどうかって問題はあるか…

と言葉を付け足す。

そんなことを思っていたら学園長室の前に着く。

ドアを叩き、中からの返事を確認して扉を開いて中に入る。

久しぶりだな…

1週間前の入学の時はここに入ってくることはなかったため、わずかな懐かしさを感じながらアリアの前に進み出る。

「クロノくん、この学校はどうですか?

うまくやれていますか?」

にっこりといつもの笑みを浮かべ、彼女は聞いてくる。

学園長にクロと呼んでくれなんて言うのはめんどくさいから彼女は名前の通り俺のことをクロノと呼ぶ。

「友達もできていい感じです。」

「それは良かったです。

この学校は突然転校生がくることも珍しくないので、注目を浴びすぎることもないと思いますので窮屈すぎる、と言うことはないでしょう。」

そう言ってCと書かれたバッジを手渡される。

それを受け取り、制服に付ける。

「それでは、これからも頑張ってください。」と懐かしい笑顔で送り出されて俺は学園長室を出た。





それから約2週間、相も変わらずアベル達3人とつるんでいたが、試験のために山の中の合宿場と来ていた。

2週間経ってもカルリアとは関係が開いたまま…か。

まぁアベルやリョウとうまくやれているということはそこまで心配する必要はなさそうだ。

「それで、今回の試験はどんなもんなんだ?」

「全く…毎回毎回試験の内容を見てないってどういう神経してるんだろう…」

呆れた顔でリョウはアベルを見返す。

「今回の試験はどちらかというと肉体面を鍛えるためのもの、と言う感じだろうな。

山登りに崖登り、川での競泳、滝行。

終いには山の中での体育祭。

流石に身体能力だけで退学、ということにはならないらしいからな。

今回の試験と次の筆記試験を合計してクラスが変わるということらしい。」

俺が言ったことを聞き、

「筆記試験と合わせて成績が決まるのかよ!?」とアベルが大声を出す。

ほんとに何にも知らないんだな…

別れて数ヶ月経ったにも関わらず一切の変化がない。

ただ、この感じの方がこいつらしい。

そんなことを思いながら俺たちは荷物を持ってその施設の中へと入っていく。




「それじゃあ、山登りを開始しま〜す。

ここから大体10キロくらい?

20キロくらい?

走ったら頂上に着くから、そこまで頑張って走ってね〜」

ニコニコしながらうちの担任が言う。

10と20じゃだいぶ違うだろ…なんて思いながら俺は上を見上げる。

そして

「大体30キロくらいじゃないか?」と小さく呟く。

「それじゃあ山登り始め〜!」

という掛け声と共に、俺たちはその道を沿って走り出す。

俺だけ一気に駆け抜けたら流石におかしいか。

そんなことを思っている真横で

「うおらぁぁぁ!」と大声をあげてアベルは突き進んでいく。

後先考えずに進んでいくその後ろ姿を見て、俺はゆっくりと走っていく。

約10キロ走ったが、カルリアもリョウもすぐ後ろをついてきている。

「すごいな。

これだけの距離を休みなしで走り続けられるのか。」

「あぁ。

僕たちの目標は、前にも話したシロっていう人と同じところまでいくことなんだ。

彼なら、こんなことくらい楽々とこなしてしまうだろうからね。」とリョウは笑顔を浮かべながら言う。

シロという名を出す時、こいつらはいつも楽しそうにする。

できればシロとしてこの学校に戻ってきたかったのだがな…

「カルリア、お前もずっと走っているな。

疲れないのか?」

「そんなことを言うならクロくんもずっと走り続けてるじゃないですか。」

「俺は元から体力がある方なんでな。

これくらいは朝飯前だ。」

「そうなんですか…

私は能力を使っている状態です。

今回の試験で能力の使用は禁止されていませんからね。」

さも当然のように言う彼女に

「能力を使い続けるのはできるのか?」と尋ねる。

「いえ、使い続けるのではなくオンオフを切り替えているんです。

私はまだ未熟なので簡単ではありませんが、それでも能力を自分の力で使えるようになったのは成長だと思います。」

「そうか、それは良かった。」

他愛もない会話を交えながら、俺たちは無事に30キロを走り切ったのだった。





「それじゃあ、1日目の疲れを癒すべく、かんぱーい!」

クラス長のマルトールが声を上げ、それぞれがジュースの入ったグラスを持ち上げる。

前のクラスではアベルが圧倒的にうるさいやつって感じだったが、今はクラス全体で見ても半分くらいの立ち位置だ。

マルトールはクラスの状況をよく読み、常にクラスがいい方向にいくような行動をとっている。

能力育成学校ではあるが、普通の勉強をすることも多い。

まぁ、学力のみによって退学するということがないようだから、そこは救済処置となっているのだろう。

向こうの方へ行って騒いでいるアベルを見て、このクラスの奴らがいいやつだということを感じる。

この学校の性質上、クラスが左右されるテストを行うたびに見ず知らずのやつが自分のクラスに来ることが当たり前なのだ。

アリアが言っていたように、転校生が入ってくることが多いというのも相まって、違う環境で過ごす能力が高いのだろう。

カルリアは人との関わりを多く持とうとしないから除くとしても、アベルやリョウに話しかけている元のクラスが違うやつも多い。

俺のところにくるやつもまぁまぁの数だ。

ただ、俺も大人数と関わりを持つのは得意ではない。

長い間、家族とアストリナとしか関係を持っていなかったからだ。

だからカルリアの考えもわからなくないし、今の姿で無理にカルリアと関わりを持とうとも思わない。

多くのやつと関わりを持ったところで、今俺に与えられている任務である“この学校を見張る”ということとは関係がない。

まぁ、俺が人との繋がりを嫌うことの言い訳でしかないかもしれないが、これも俺のやり方だからな…

そんなことを思いながら、その夜の馬鹿騒ぎを静かに見守るのであった。

読んでいただきありがとうございます。

30話まで書いて、長かったような短いような感覚の自分がいます。

今回から始まった第二回学校編、みなさんも暖かくみていってくださると嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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