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教会と悪魔

1人しかいない薄暗い部屋の中、机の上に置かれた卓上ランプが鈍く私を照らしている。

彼女がここで話をして結構な時間が経とうとしているというのに、動く気力が起きない。

Sクラスとひとまとめに言っても、彼女はフローラ・フレーベルよりも圧倒的に観察眼やその他の面で優れている。

あの少年…シロくんが学校から姿を消した理由も未だ不明。

能力を利用してもいいけれど、今はこの力を使うわけにはいかない。

次は絶対に負けない…

私には使命があるのだ━━━━

だんだんと、あの頃の世界の姿が見えてくる。




15歳くらいになった時のことだ。

唐突に、その刻は訪れた。

泣き叫ぶ子供の声、斬り捨てられ死んでいく者の叫び声、守るべきもののために戦う者の叫び声、幾つもの声と恐怖と絶望が入り混じっていた。

血飛沫が飛び、建物は燃え、吹き飛び、命すら軽々しく消え去っていく。

幼くして両親を亡くした私は、私を引き取ってくれてた本屋のおじさんと共に逃げていた。

「教会に行こう。

そうすれば、敵とて攻めてはこないだろう。」

そう言って、私の手を引いて教会に逃げ込んだ。

本来なら神父くらいはいるはずの教会はもぬけの殻で、私たちの荒い息だけが小さく響いていた。

おじさんは、神を信じているタイプの人間だったのもあり、それをずっと近くで見ていた私は、彼の考えをすっかり信じ切っていた。

しかし、そんな妄想も虚しく、敵の兵士たちは教会の扉を蹴破って入ってきた。

今思えば当然のことだろう。

この世界には4つの国があって、それぞれ信じている神も違うのだ。

戦争の最中に、相手の国の宗教なんて考えてはいられないだろう。

敵の兵士が入ってきた時も、私を強引に連れ去ろうとした時も、おじいさんは、神が形取られた巨大な石像に向かって本を開き、一心に神に何かを願っていた。

腕を掴まれ、重そうな鎧を着た2人の兵士によって、私は教会の外に連れ出された。

なんとか逃げようともがく私の目線の先で、おじいさんは剣に体を貫かれた。

しかし、その人は痛みに声を上げることもなく神に祈り続けていた。

気味悪がった兵士たちは、目の前の光景に声が出なくなっていた私を抱えあげ外へと連れていった。

「どうする?」

「めんどくせぇ。

このままやっちまえ。」

その兵士たちは少しの間話し合い、教会の中にいくつもの酒樽が放り込み始める。

異臭がし始め、それに続いて1人の兵士がボールのようなものを投げ込む。

そのボールと酒樽から飛び出た液体が触れ合った瞬間に赤い光が見え、その直後、私の目の前で大爆発が起きる。

「あ…あぁ…」

言葉も出ない私を置き去りに教会は崩れ落ち、炎の中に彼は飲み込まれて消えていった━━━━━



はぁ…

と、小さくため息をついて席を立つ。

なんだかいつも以上に疲れている。

すぐ隣の棚の引き出しから、5人の子供たちが写った1枚の写真を取り出す。

あれだけこの子達を守り抜くと決めたのに…

私の力の無さを嘆いても、今更過去は変えられない。

だから……もう2度と━━━━━!






俺は城の中に戻ってきていた。

ふぅ━━━と大きくため息をつき、ベッドに横になる。

疲れたな…

城まで来る間にも、桜庭霞に言われた見落としているものということを考えていたが、どうにもその答えが思い浮かんでこない。

それが今後問題になるとも言っていたが、どんな形で問題になるのかというのもわからないのだ。

あり得るとするならば、転生者に関する問題、例えば2度と元の世界に戻れなくなるとか、逆にこの世界の人間が外の世界へ行くとか…

それ以外だと、再び戦争に突入したり、この国のことで言うと環境が破壊されるとか…

イステルトのことで考えられるのはもっと貧困が大きくなるとかだが…

イステルトに関してはこのままでは貧困が解決される可能性は皆無だ。

ただ、これはあくまでもこのままの場合であって、俺や他の人間が手を出せば話は違ってくる。

それとも何者かが手を出すことによってもっと貧困が進むとかか…?

考えを上げればきりがないくせに、まとまった答えも出てこない。

今までを思い返せばすぐに思い出せるかもしれないと言っていたが、俺がどこで誰と会話をしているかというのを全て知っている限り、的確に当てることはできないだろう。

つまり、普通にその話をしているという確証が彼女にはあるということになる。

それを考えようともしたが、どうにも頭が働こうとしない。

そのまま眠りに落ちそうになった時、ドアをノックされる音で目を開く。

無視して寝てしまっても良かったかと思ったが、そういうわけにはいかず、俺は起き上がる。

「どうかしましたか?」

扉を開けた先にいたメイド服の女性に声をかける。

「ソーサリー様宛にお手紙が届いています。」

そう言って、彼女は一通の手紙を差し出してくる。

「昨日届けられたものでしたが、いらっしゃらなかったのでお預かりしていました。

先ほど戻られたと聞きましたので、お届けに参りました。」

彼女は淡々と語っているが、いやいやちょっと待て。

ソーサリー………誰だ?

戸惑い、それが今の俺の名だと言うことをやっと理解する。

最近名前なんて呼ばれてなかったからな…

そんなことを思いながら、俺はその手紙を受け取る。

「失礼します。」

そう言って廊下を引き返していく姿を見送りながら、俺は扉を閉めて部屋の中に入る。

その手紙はグレイから出されたものだった。

“今お前はアルテにいると思うが、2ヶ月の期間を短縮させてもらう。

この手紙が届いてから1週間で戻ってこい。

ウェイスにはレイテスに行ってもらう。

お前に新たに頼みたいことがあるのだ。

あと1週間で仕事を終わらせて帰ってこい。”

と書かれていた。

「無茶苦茶なやつだな…」

思わず声が漏れる。

あのまま島に1週間いたら丸々1週間の遅刻じゃねぇかよ。

呆れながらも、俺は身支度をする。

クソほど眠いが、1週間で仕事を終えろと言われたらやるしかない。

と思ったが、やはり眠いので眠りにつくことにし、そうして次の日、残っていた仕事である“アルテから見たペルセント“ということを調べるため、街へ出ていくのであった━━━━━━






1ヶ月後、能力育成学校Cクラス…

朝のSTが始まる前のざわつきがチャイムによって消え、皆が席についたタイミングで銀髪の女性教師が教室に入ってくる。

「それじゃあ、STを始めましょう。と、いつもなら言うところですが…」

そう言って彼女は手を鳴らす。

それと同時に、白に青色のラインが入った制服を着こなした、黒髪で紅い瞳をした1人の男が入ってくる。

入ってきた瞬間、わずかに驚きの顔を浮かべた男は、すぐに表情を戻し教師に言われて教壇に上がる。

「それじゃあ、名前をどうぞ〜」

ゆったりとした口調で言われ、その男は

「クロノ・エルドだ。

クロと呼んでくれ。」と自己紹介を終え、わずかな笑みを浮かべるのだった━━━━━

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