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神と最強

俺は超スピードで彼女の後ろに回り、刀を横薙ぎに振るう。

しかし、それは縦に構えた刀によって受け止められる。

この速度の攻撃を見抜いてくるか…

一歩下がって地面を蹴り、再度攻撃を仕掛ける。

それに対し今度はカウンターが飛んでくる。

刀をぶつけて軌道をずらし、斬り、躱し、斬る。

刀と刀の攻防が始まる。

打ち合いの中、隙を探っているが一切の隙を見せない。

これだけの速度で攻防を繰り返しているのにも関わらず隙がない…

やはりとんでもないほどの実力者だ。

フレーベルは1学年の中では最強だと言われているが、こいつは同じ最強でも別次元だろう。

流石この世界に3人しかいないSクラスのうちの1人。

このままじゃ埒があかないな…

打ち合い、弾きあって互いに後方に下がる。

深追いは自滅に直結するとわかっているのだ。

彼女は優しい顔で口を開く。

「あなた、刀を使ったのはこの世界にきてからでしょう?

一年も経たずによくここまで刀を使いこなせるものね。」

「光栄だな、Sランクに褒めてもらえるなんて。」

「久しぶりだよ…

こんなに楽しいと思える戦い。」

「俺もだ。

ただ、楽しんでいるだけじゃあ負けそうなんでな。

ちょっと本気を出させてもらうぞ?」

俺が言うと、

「後輩に負けるのはちょっとカッコ悪いか。

それじゃあ私も少し力を出そうかな。」

そう言って、俺に方を向き直って彼女は言葉を呟く。

「“須佐之男命須佐之男命(スサノオノミコト)“」

言葉が発せられた瞬間、彼女の刀が黒く光る。

今まで晴れていた空が暗黒に染まり、雨、風、雷が混ざって世界の終焉の訪れを表すかの如く感覚を引き起こす。

何が起きているのか、それはわからない。

しかし、彼女の力によってこの状態が作られているのだけは事実だ。

このデタラメな力…

これが2学年最強と言われる桜庭霞の能力か…!

そう思った次の瞬間、彼女は俺の目の前まで迫り、刀を振り下ろしていた。

速いっ……!!

その攻撃を防ぐため、刀を横に構える。

しかし、彼女の刀が刀に当たる瞬間、俺は右に跳び退いていた。

その刀が振り下ろされた場所から前方にかけて、刀が地面についてすらいないのにも関わらず地割れが起きる。

速度は速くなり、威力もあがってる…

こいつはやばいな…

今の一瞬で感じた危機感がなければアウトだった。

戦いが長引けば長引くほど、こちらは神経をすり減らして対応しなければならない。

となれば俺が取る行動は一つだ。

先ほどよりも強く地面を蹴り、彼女の横まで駆ける。

刀を振る…その瞬間に再度地面を蹴りその場から消える。

その攻撃を防ぐために振った彼女の刀は空を斬る。

後ろに回り、背に向かけて刀を振るう。

これで決める…!

しかし、今度は俺の刀が空を斬る。

彼女は宙を舞い、その斬撃を躱していた。

やはり、身のこなしも速度もパワーも全てが強化されている。

今の彼女からは感覚が研ぎ澄まされているような力を感じる。

間合いを取って攻略法を考える。

互角の勝負だったのをわざわざ早く決着をつけにきたということは、能力を使い続けれないということか?

いや、それなら能力を使わずに戦えばいいだけだ。

互角だったのにわざわざ急ぐ必要もない。

それとも単純に俺に本気を出させたいとか?

俺の本気を知ってから自分も本気を出すとかならあり得る話か…

考えている間に彼女は一歩踏み出す。

そして刀で俺を突いてくる。

この距離で届くわけがないだろ…

つまり何かを狙ってる!?

俺は咄嗟に判断し、右へと跳躍する。

案の定、俺がいた直線上で鋭い爆風が発生する。

地面が抉られ、それと同時に俺の体も爆風によって飛ばされる。

━━っ…!!

あぶねぇ…

なんとか体勢を整え、俺は胸を撫で下ろす。

それにしてもすげぇな…これフローベルより威力高いんじゃねぇか?

感心しているところに、再び彼女は突っ込んでくる。

そうだ。

変なところに気を使っている場合ではない。

今の俺の相手は目の前にいるSクラス、桜庭霞なのだ。

だとしたら、無駄な考え事をしている時間もないだろう。

そして俺は、刀に対し魔法を発動させる。

魔法によって強化された刀を構え直し、振り下ろされた刃を防ぐ。

彼女は驚きの顔を見せていた。

先ほどの力を真正面から受ければ、俺の体は耐えきれても刀は一発でぶっ壊れる。

それを防いだ今、思いっきり刀と刀をぶつけられる!

そこから、再度激しい剣戦が開始される。

攻撃を仕掛け、受け流され、逆に切り込まれ、それを受け流し、攻撃と反撃の応酬が繰り返される。

隙を見つけたいが見つからない。

今までと同じだ。

しかし、向こうからしてもそうなのだろう。

一回でも攻防をミスれば即致命傷になる。

そんな中で数秒の間に何十もの攻撃が行き交う。

鳴り響く金属音がどんどん大きく、鋭くなっていく。

撃ち合いの中で彼女は口を開く。

「あなた、まだ全然本気じゃないんでしょう?」

「十分頑張ってると思うんだが?」

「そう?でも嬉しいわよ。

後輩にこんなに強い子がいてくれて。」

微笑みを浮かべながら彼女は言う。

「出し惜しみは無しにしましょう。」

そう言う彼女に俺は、

「2学年最強の力、見せてくれよ。」と答える。

一歩退き、彼女は目を閉じて呟く。

世界の全てが彼女に同化されるかのような異様な静けさを、彼女と世界が表している。

その中で、彼女は静かに口を開く。

「“天照大御神(アマテラス)“」

突如、彼女の体が光輝く。

直視するのができないほどの輝しさに、腕で目を覆いその光を遮る。

光が収まるのを待って俺は目を開く。

今さっきまで荒れ狂っていた闇は雲一つすらなく消え去り、天には唯一太陽だけが世界を照らすように輝いていた。

彼女の方を見る。

その刀は金色に輝く炎を纏い、制服を着ていたはずの衣服は変わっていた。

「見たことない服だな。

なんて言うんだ?」

「これは私の世界にしか存在しない、巫女装束と言われるもの。

この服には神の加護が付けられているのよ。」

ふむ…俺の世界にいた神とあんな服には全くもって関係性がなさそうだな。

それにしても…さっきまでの威圧感はどうなった?

今の彼女からは圧を感じない。

そこだけ考えると力が弱まったようにも見えるが…

そう考えていた時、彼女の姿が消える。

見えない…!?

その瞬間、背後から気配を感じ、刀を振り抜く。

その刃は彼女の体に確かに当たった。

しかし、斬った場所からは黄金の炎が現れ、その体は一瞬にして消えていく。

俺はこれがフェイントだと言うことに気づく。

「光明照斬…!」

右から見抜くことすらできない速度の斬撃が放たれる。

これはやばい!

迷っている時間はねぇ!

直感的に感じ取り、俺は魔法を行使する。

魔力を内側から爆発させる。

「バーストウェーブ・デトネーション!」

轟音と共に、俺の回りが爆風で吹き飛ばされる。

彼女は爆発の瞬間に空中に回避していた。

神々しい輝きを後ろから受け、彼女は宙に浮いている。

とりあえず、今のヤバかった斬撃を防ぐことはできた。

ただそれと同時に俺が能力に似た何かを使うことができると言うことがバレた。

さらに彼女が宙に止まっているところを見ると空を飛ぶことができるということもわかった。

ますます戦いにくくなったな…

「やっぱり貴方は能力を使えるのね。

しかも今の威力、純粋な威力だけでフローラさんを上回っているんじゃない?」

「さぁどうだろうな?

それよりあんたの能力の方がすげぇよ。

どんな力なんだ?」

「質問に答えないのに質問をするのね。

そういう無茶苦茶な人、嫌いじゃないわよ?」

少し間をおいて彼女は再度口を開いた。

「私の国では能力は異能と呼ばれていたの。

どの道能力であることに変わりはないけどね。

そして私が生まれたのは国の中でも大きな神社だった。

一族には神の力を扱う異能を持つ人間が生まれることが稀にあるのよ。

それが私、桜庭霞ということ。」

「神の力を持った最強の少女か…」

その力をどこまで使いこなすことができるかはわからんが…

「手の内もバレてしまったし、何より出し惜しみをしている場合はなさそうなんでな。

全力で行かせてもらうぞ?」

俺が言うと、

「貴方の力を誰かに言うつもりはないわ。

本気でやり合いましょう。」と彼女は俺の目を見て答える。

その言葉を聞き、俺は一瞬うっすらとした笑みを浮かべ、彼女を睨んで地面を蹴る。

青炎を纏った刀を抜き、真正面から攻撃を仕掛ける。

青炎の炎と黄金の炎、2色の炎を纏った刃がぶつかり合う。

一気に魔力を込めていく。

青炎が勢いよく燃え上がる。

それに応えるように彼女の刀を纏う黄金の炎も輝きが増す。

超スピードで二つの刀が交差する。

刃がぶつかる度に炎が吠えるような音を鳴らす。

周りの木々が燃え尽きていく。

距離を取り彼女は手を天へと掲げる。

「千光天照波!」

天からいくつもの眩い光が降り注ぐ。

「ブレイズ・グレイシス!」

炎と氷を交えた赤青の魔法光波を宙に向って放つ。

光と光がぶつかり、天が白く輝く。

全ての攻撃を防いだ刹那、

「神光龍撃!」

前方から巨大な龍の光が何体も襲ってくる。

俺はそれに向って突っ込んでいく。

刀で龍を真っ二つにしながら強引に距離を詰める。

龍を全て切り伏せ、一直線に駆けながら左手を彼女に向けてあらゆる属性の魔力弾をぶち込む。

彼女はそれを1つずつ刀で斬る。

1つ斬るごとに魔力弾が爆ぜ、爆発が巻き起こる。

しかし、彼女は一切通用しないかのようにその場で斬り落とし続ける。

それによって生じた煙に隠れながら刀の間合いまで近づき、刀を振り抜くもその攻撃も防がれる。

それと同時に天から先ほどと同じ光が飛来する。

俺は後方に飛び退きそれを躱し、とっておきの技を使う。

「インフィニティ・ヴォルケーノ!」

俺の後ろに真円が描かれ、巨大な真紅の魔法陣が作られる。

そこから数えきれないほどの炎が彼女に向けて飛来する。

彼女もそれに合わせるように自身の周りに炎のバリアを展開する。

魔法で作った炎を追うように、俺も駆ける。

次々にその炎は彼女の元へ着弾する。

いくつもの爆発が起こり、その煙を切り裂いて俺は彼女のバリアを切りつける。

力を込め、炎が燃え盛るバリアをぶち破るが、彼女の顔に焦りはない。

そのままも俺は再度彼女を切りつけようとする。

金属音がなり響き、その攻撃はギリギリで防がれる。

ジリジリと俺は力を込め、彼女の顔が目の前に迫るほど刀を押し込む。

さらに力を込めようとした瞬間、彼女の体が消えた。

すぐに気配を探す。

顔を上げる。

前方、天高くに彼女はいた。

「決着をつけましょう。

私も貴方も、どうなってしまうかはわからないけど…

私の出せる全力をぶつけさせてもらうわ。」

「こいよ!全力で受け止めてやる!」

彼女は天に向って右手を上げる。

それと同時に天が光り輝く。

その光によって世界が滅びてしまうのではないかと思うほどに、彼女に力が集まっていくのがわかる。

「桜庭霞、アマテラスの名において命ずる!

世界よ!光となり我が力となれ!!」

そう言うと同時に彼女の手の先には一つの巨大な文様が描かれる。

そしてその文様は彼女の前で広がり、彼女は右手をこちらに向ける。

「決着をつけましょう…

天照神光波・滅!!」

その声と共に凄まじいエネルギーを込めた眩い光線が俺に向って放たれる。

俺は地面に降り立ち、それを押し返すべく、この世界で出せる全ての魔力を使い俺の背後に魔法陣を形成する。

インフィニティ・ヴォルケーノを主軸とし、最高火力の魔法を3つ同時に発動する。

「ガイア・タクリズム・アブサイル!」

3つの魔法が混ざった漆黒の光と、彼女から放たれる白金と黄金の光がぶつかり、押し合いになる。

数十秒の間、二つの技は均衡を保っていた。

しかし、途中で俺は魔力の限界を感じる。

元の世界でならこの程度で魔力を使い切ることはないが、この世界では全ての力の5割が出せる限界というだろう。

魔力切れによって魔法陣が崩壊していく。

くそっ…まじかよ……!

攻撃がかき消されたその瞬間、迫り来る膨大なエネルギーを前に俺は身震いした。

これをくらったら、死ぬ可能性は十分すぎるほどにある。

どうにか…どうにかして耐える方法はないか…!?

しかし、俺が思考している間にも、その光は刻一刻と俺に迫る。

もう…無理みたいだな…

俺は自らの死を悟った。

死にたくはない。

死にたくはないが、これは完敗だ。

どうにかして生き残ろうにもなす術がない。

そして、ついにその光は俺を飲み込む。

その時、突如として元いた世界の記憶が溢れかえってくるのであった━━━━

昨日の夜に投稿したつもりだったのですがミスにより一日空いてしまいました…

すみませんでした。

また新たな最強が出てきたのですが、最強って色んな考え方があるんだなと思いながらこの作品を書いています。

ぜひ、読んでくださっているみなさんも今後の展開を考えながら“最強”とは何なのかを考えてみてください!

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