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0話

 




 ――忌避の目が向けられる。





 ――見知った顔が、化け物でも見るかのような目で、俺を見る。





 ――その遥か後方には恩師が血を流して倒れていて。





 ――それを為したのが俺である事は、間違いない。





 ――投げかけられる罵詈雑言も。





 ――嘘だ、と現実を受け入れない声も。





 ――全ては耳元で甘く囁く声によって雑音にまで成り下がる。







『……私の、思った通り。永新(えいしん)、貴方は最初から……()()()()だったのよ』







 ――白磁の陶器のように滑らかで艶やかな四肢が、俺の体に蛇のように絡みつく。





 ――纏わりつく体を、声を振り払おうとしようにも、俺の体は言う事を聞いてくれない。






 ――今いるこの状況も全て、この女のせいだと言うのに。





 ――だと言うのに、振り払った先で俺を待ち受ける運命が脳裏を過り、絡みつく手を振り払うことが出来ない。





 ――あの時、俺に唯一手を差し伸べてくれた人の手を、振り払う事など出来ない。





 ――例えそれが、間違いだとしても。





 ――俺はもう、取り返しのつかないところまで、来てしまった。





 ――どこで道を間違えてしまったのか、俺には分からない。





 ――五年か、十年か……いやそれ以上に、生まれてきたことが、間違いだったのかもしれない。





 ――遠くに見える父の姿も、最早どんな顔をしていたかさえ思い出せない。





 ――思い出せるのは、浴びせられた暴言と、頬の痛みだけ。





 ――俺が絶望と邂逅する姿を見て悦に浸る女に、俺を連れて行くよう頼み込む。





 ――そうしなければ、俺が殺されてしまうから。







『……さあ永新(えいしん)、共に参りましょう。――私達だけの、楽園へ。そこでたっぷりと、愛し(殺し)合いましょう?』







 ――俺を引き留める唯一の声に背を向けて、俺は歩み出す。





 ――地獄が待つ、未来へと。







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