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――忌避の目が向けられる。
――見知った顔が、化け物でも見るかのような目で、俺を見る。
――その遥か後方には恩師が血を流して倒れていて。
――それを為したのが俺である事は、間違いない。
――投げかけられる罵詈雑言も。
――嘘だ、と現実を受け入れない声も。
――全ては耳元で甘く囁く声によって雑音にまで成り下がる。
『……私の、思った通り。永新、貴方は最初から……こちら側だったのよ』
――白磁の陶器のように滑らかで艶やかな四肢が、俺の体に蛇のように絡みつく。
――纏わりつく体を、声を振り払おうとしようにも、俺の体は言う事を聞いてくれない。
――今いるこの状況も全て、この女のせいだと言うのに。
――だと言うのに、振り払った先で俺を待ち受ける運命が脳裏を過り、絡みつく手を振り払うことが出来ない。
――あの時、俺に唯一手を差し伸べてくれた人の手を、振り払う事など出来ない。
――例えそれが、間違いだとしても。
――俺はもう、取り返しのつかないところまで、来てしまった。
――どこで道を間違えてしまったのか、俺には分からない。
――五年か、十年か……いやそれ以上に、生まれてきたことが、間違いだったのかもしれない。
――遠くに見える父の姿も、最早どんな顔をしていたかさえ思い出せない。
――思い出せるのは、浴びせられた暴言と、頬の痛みだけ。
――俺が絶望と邂逅する姿を見て悦に浸る女に、俺を連れて行くよう頼み込む。
――そうしなければ、俺が殺されてしまうから。
『……さあ永新、共に参りましょう。――私達だけの、楽園へ。そこでたっぷりと、愛し合いましょう?』
――俺を引き留める唯一の声に背を向けて、俺は歩み出す。
――地獄が待つ、未来へと。




