相方探し
「では昇格試験に参加する者はこのまま残って下さい」
クラスのHRが終わった後、昇格試験について説明があった。
「皆さんには150年前に大賢者様が後世の育成の為に作ったダンジョンにペアで入ってもらいます」
へぇ。そんな大賢者がいたんだ?聞いたことないな。
「先生!そのダンジョンはどうやって作られたんですか?」
クラスのメガネ君が質問した。
「知りません。自分で調べて下さい」
「・・・はい」
冷たい。
「先生!育成の為に作られたという事ですが危険はないんですか?」
「安心して下さい。引率の先生が危険だと思ったら手を貸してくれます。しかしその時点でそのペアは不合格となります。最終的にはダンジョンボスを討伐すれば合格となります。因みに魔石は出ないのでお小遣い稼ぎは出来ませんよ」
なるほど。一方が足を引っ張るともう片方も不合格になるという事か。
これはペア選びが重要だな。と言っても俺は相部屋の奴ら以外友達がいないので必然的にバリスになるわけだが。
■■■■
「いや。自分もうペア決まってますよ?」
「は?」
バリスの一言に衝撃が走った。
このポジティブだけが取り柄のお調子者に他の友達がいただと?嘘だ!
「誰だよ?」
「フッフー。それを聞いちゃいますか?ボッチのエラン君?」
「うるさい。誰なんだよ?」
「そこまで言うなら教えてあげましょう・・・なんと自分の彼女です!」
「なんだと!?」
このクソ坊主頭に彼女だと!嘘だろ!?
「驚いちゃいましたか?童貞君」
童貞ちゃうわ!いや、転生してからは童貞だが。
「俺への侮辱は今までのよしみで許してやろう。しかし!そこまでイキってんなら相当可愛い彼女なんだろうな!?」
「当たり前じゃないですか!なんと2組のポンラちゃんです!」
「ポンラ?」
・・・ポンラって確かマ〇コ・デラックスみたいにデカいやつだったような?
初めて見た時デカ過ぎて他の種族かと思った記憶がある。
「知らないんですか?あの超絶美少女を。あのふくよかな身体とクリクリのおめめ。家庭的で優しい子なんです。正に理想の彼女です」
「そ、そうか。ちょっと知らないが可愛いんだろうな」
ふくよかな身体で確信した。あいつだ。
まぁ人にはそれぞれ好みがある。うん。全然羨ましくない。
むしろ幸せになってくれ。
「そうです!とっても可愛いんです!という訳でエラン君とはペアになれませーん。あっ!デートの時間です。ではまた」
バリスはそう言うとそそくさと去って行った。幸せになってくれとは思ったが何か腹立つなあいつ。
クソっ!絶対誰とも組んでないと思ってて油断してた。うーん。どうしようか。
俺が教室の片隅で頭を悩ませていると残念イケメンがやってきた。
「どうしたんだい?エラン。難しい顔をして」
「そう思うなら一緒に昇格試験出てくれよ。ジレッド」
「まったく。君は人の話を聞いてなかったのかい?高い授業料を学園に寄付するのもそうだが、僕が出るとなると誰かとペアを組まなければならない。それは学園中の生徒を悲しませる事になる。君を贔屓しているとね」
なに言ってんだこいつ。
「いや、俺は男だぞ?」
「ははー。君は女の子だけが僕の事を好きだと思ってるのかい?ノン・ノン・ノン。男の子でも僕を好きな子はたくさんいるのさ。僕の華麗な美貌に憧れてね。この前だって少し目が合った男の子も僕から目を逸らしたものさ。恥ずかしがり屋さんだねぇ」
それは単にお前と関わりたくなかっただけじゃ?
こいつが他の奴と話しているの見た事ないし。
「一緒に出る気がないならほっといてくれ」
「そう邪険にしないでくれたまえ。そもそも試験のエントリー期間が終わって僕はもう出れない。でも僕は君をからかいに来た訳じゃない。友人として困っている君を助けようと思ったのさ」
「ほう?何か策があると?」
「もちろん。それは2組の眠り姫さ」
「眠り姫?」
ジレッドの話によるとまだ誰とも組んでいない眠り姫が2組にいるらしい。
彼女は常に眠っているので昇格試験に勝手にエントリーされてしまったようだ。
そしていつも寝ているのでボッチらしい。
「その子大丈夫なのか?いつも眠っているなら試験どころじゃなくないか?」
「それはそうだがこのまま試験に参加出来ずに不合格よりはマシだろう?それに僕は彼女が起きているのを食堂で見かけた事がある。彼女は食事の時間には起きるようだ」
「ふむふむ」
「しかも可憐だよ彼女は。いつも眠そうにしてて半目だが、それでも彼女の美しさは衰えることない!背は小さく胸は遠慮がちだがそれが良い!いや!むしろ良い!僕は何かいけない世界に引きずりこまれそうになったよ!」
「あっそう。良かったね」
「フッ。そういう態度を取るのか君は。せっかく僕が彼女をペアにする秘策を持ってきたというのに」
「あ、いや。すいません。どうかその秘策をこの愚鈍なわたくしめに教えてくださいませジレッド様」
俺はプライドを捨てて執事のようにお辞儀をした。
「いいだろう。彼女は・・・」
「彼女は?」
ゴクリ。
「甘い物が好きだ」
「・・・・・・」
1回死んでくれるかな?
■■■■
昼休みの時間になり俺は眠り姫を探す為に食堂へ向かう。
「居た」
食堂のテーブルで1人焼き菓子を食べている白髪ショートの女の子。身長は140cmぐらい。
彼女に違いない。ジレッドの話によると彼女の名前はクトラ。平民なので苗字はない。
大商人の娘でこの学園には人脈づくりの名目で親が大金を積んで入学させたらしい。
何故そこまで詳しく知ってるかって?ジレッドは学園中の可愛い女の子をチェックし、金を使って多くの情報を得ているらしい。なんという金の無駄遣い。でも今回は感謝しておこう。
早速話しかけてみる。
「失礼致しますレディ。私の名前はエラン・アルハート。以後お見知りおきを」
執事のような渾身の挨拶。平民と言えど女性には礼を尽くさねばな。
クトラは一瞬こちらに目を配らせたが、プイっとそっぽを向いて完全無視。
え?俺は仮にも貴族だよ?そんな態度ありなの?
「あの・・・クトラさんとお見受けしますが合っていますでしょうか?」
また一瞬こちらをチラッっと見たが無視。焼き菓子をパクパクと食べ続けた。
「・・・・・・」
こんのチビロリめ!ちょっと可愛いからって調子に乗りやがって!この世界のチビロリはみんなこうなのか?それならこっちにも考えがある!
「うぉっほん!クトラさん。貴方がこの学園に入学したのは人脈づくりと聞いておりますが、そのような態度で宜しいので?仮にも私は貴族の三男ですよ?」
ここで貴族パワーをアピール。三男だけ小声で言った。
するとクトラはピクッっと反応して何やら羊皮紙に書き始めた。
え!?筆談?喋れないのこの子?・・・いや、そんな情報はジレッドに聞いていない。
渡された羊皮紙を手に取る。
(なに?)
そんだけ!?なんて失礼な奴だ!眠ってるからボッチじゃねぇ!ただのコミュ症やんけ!
まぁいい。ここで機嫌を損なわれても困るしな。落ち着け俺。
「昇格試験のペアが決まってないと耳にしまして、是非私と組んでくれないかと」
(嫌だ。疲れる)
そんな理由!?
「でも1度エントリーしてしまったものを棄権するのはどうかと?お父様の名声にも傷がつくでしょうし、何よりBクラスになれば今より有力な貴族と交流する事が出来ますよ?」
(なんで敬語?キモい)
初対面だからだよ!てか会話のキャッチボールせんかい!
この時何かが俺の中でプッチンした。
「そういう態度だからボッチなんだよ!このチビロリめ!あー!分かった!分かったよ!もうここの食堂で焼き菓子を作るのは停止してもらう!俺にはジレッド・オセアンという金持ち貴族の親友がいるからな!ざまぁみろ!」
出来るか知らんけど。
(それは困る)
「そうだろう?困るだろう?じゃあ俺とペアを組め」
俺がそう言うとクトラは何か考え込んで書き始めた。
(こっちにも条件がある)
条件!?ここで条件だと!?この娘やりおる。
(ここの食堂より美味しいお菓子を用意してくれたら考える)
美味しいお菓子だと!?
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