没落女神
俺の名前はエラン・アルハート。
転生前はサラリーマンで、異世界ものが好きな何処にでもいるモブ男だった。
そんなモブ男は異世界転生への想いが強いあまりに毎晩、女神の存在を信じ続け願っていた。
今日も今日とて夜空に向かい女神に祈りを捧げる。
「あぁ。女神様!どうかこの退屈な世界から異世界へ俺を転生させて下さい!」
「その意気やよし!わらわがお主の願いを叶えよう!」
幼げな声が聞こえたかと思うと俺は意識を失った。
■■■■
「ほれ、起きろモブ」
「ここは・・・まさか!?」
意識を取り戻した俺は辺りを見渡して確信した。
これは・・・転生前のアレな世界やん!
「そのまさかじゃ」
声の方向を見ると真っ白な世界の中心に金髪の女神が立っていた。
「あぁ!女神様!ありがとうございます!」
俺は思わず手を合わせて感謝した。目の前のチビロリ女神に。
ん?チビロリ?
「はっはっは!よい。よい」
声高に笑う主は俺がイメージしていた女神とは打って変わってチビロリだった。
顔立ちは綺麗に整っているがどうにも幼い。身長120cmぐらいだ。
「む?どうしたんじゃ?不思議そうな顔をして」
「あ・・・いや。なんかイメージしていた女神様と違うなぁって」
「フフフ。よくぞ気づいた!さすが妾が見込んだ男じゃ!」
いや。誰でも気づくと思う。
「この姿は言わば仮の姿。本当はもっとボンッ!キュ!ボンッ!なのじゃ!」
なのじゃ!って言われましても。
「そ、そうですか。どうしてそんなお姿に?」
「それはな・・・」
聞くところによると、この女神が管轄している世界で女神への信仰心が薄れて力を失ったらしい。それでこの姿になったと。
「そこでお主には転生させてやる代わりに妾の願いを聞いて欲しいのじゃ」
「なるほど。女神様への信仰心を増やす為に転生した俺が布教しろって事ですね?」
「違う」
「え?」
「お主には妾が世界」に授けた神器を回収して欲しいのじゃ。それが全部揃えばわらわは力が取り戻せる・・・その暁にはあの憎き女神をこてんぱんにしてやるのじゃ」
「あの・・・コテンパン?」
「な、なんでもない。兎に角!神器を集めに行くのじゃ」
動揺を隠せないチビロリ女神だったがそれはまぁいい。恐らくその憎き女神に信仰心を奪われたとかそういう類だろう。だが問題はそこじゃない。
「その神器ってたぶんすごい代物ですよね?俺なんかが回収出来る物なのでしょうか?」
「フフフ。心配するな。お主には妾の力を与えてやる」
待ってました!これよこれ!チートないと無理ゲーだもんな!
「ありがとうございます!」
「これを授けよう。手を出すのじゃ」
言われた通りに手を出すと、どこからともなく現れた白い球体がゆっくり手に落ちる。
白い光が失われると刀身が細く黒光りしている剣が現れた。
「その神器でわらわの残りの神器を回収してくるのじゃ」
「ははーっ!」
俺は片膝をついて騎士のようなポーズをとる。
「ところで女神様」
「なんじゃ?」
「この剣にはどのような力が?」
女神はコテンと首を傾げながら答えた。
「んーーー。光る」
「は?光る?」
「そうじゃ」
「光ってそれが攻撃魔法になるとか?」
「ならん」
え?身体能力が格段にアップするとか魔力が無限とかあるだろ普通。
「・・・それだけ?」
「あー。あとはなんだったかな?折れない?」
何で疑問形なんだよ!
「ちょ!それだけじゃ無理ですって!俺モブですよ!?戦ったこともないのに」
「たわけ!そんなのだからお主はモブなのじゃ!少しは努力せんか!」
「努力で何とかなるんですか?俺が行く世界は魔物とかでかい龍とかいる世界なんですよね?」
「無論じゃ!魔王もいるぞ!ワクワクするであろう?」
オラワクワクすっぞ!ってなるか!俺はサ〇ヤ人じゃねぇんだよ!
「あの・・・もっと力をくれませんか?せめて何かの才能が開花するとか」
「それが出来たらやっておる!あぁ。女神様。この退屈な世界からどうか私を異世界に転生させて下さい!って毎晩祈っとる変態しか転生させる力が残っておらんのじゃ!妾も好きでお主のようなしょーもないモブを転生させるわけじゃないわ!」
「あ!テメェ!ついに本性だしやがったな!この話はなしだ!今すぐ戻せ!」
「はっはっは!もう無理じゃ!その神器を受け取ったからにはもう契約は成立しておる」
「は?」
「つべこべ言わずにさっさと行け!」
「ちょ!待てっ!このチビロリ!」
俺は最後の断末魔を上げながら意識を失った。
■■■■
目が覚めると俺はベッドの上にいた。
起き上がって辺りを見渡すと、チビロリ女神から受け取った剣と置手紙のような物が落ちていた。
見たこともないような文字だったが何故か読める。
(起きたかモブよ。お主は死ぬはずだった男爵家の三男として転生しておる。ピチピチの15歳で貴族じゃぞ?感謝しろ)
貴族つっても男爵で三男かよ。
(お主にはその三男の記憶と言語理解の力を与えておる。感謝しろ)
言語理解で何でこんなに恩着せがましいんだ。
(妾は力の使い過ぎでしばらくは神託が出来そうにない。残りの神器の場所も今は分からん)
もはや神託なんていらないんだが。
(妾の神託が下るまで己を鍛えて神器の回収に備えるのじゃ)
神器の回収をするつもりは全くないが、この世界に来たからには危険がいっぱいだ。
身体を鍛えておくに越したことはないだろう。チートもないしな。
(PS,1年後に王立学校に入学することになるハズじゃ。そこで仲間を集めて神器回収に備えておくのじゃ)
この身体。魔法使えるんかな?
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