変わらない日々
そんな中でも日々の糧は得なければならない。
なんとも言えない焦燥の中、今日も仕事に打ち込んでいた。
「仕事の調子はどうだい?」などと上司が話しかけてきたときは、そんな不安などどこ吹く風で対応する。
長年やってきたことだ。
もう体が反射で対応してくれる。
「ええ順調です。」「この案件については~に重点を置いてまして。」「新型のIoHインタフェースについては・・・」考えてもいないことばが自動的に出てくる。
そんな時に自分の発した言葉に引っ掛かりを覚えた。
急に黙った私に上司がちょっと怪訝な目をしている。
何とかごまかさなければ。
「すみません、IoHインタフェースについてついちょっと考え事を・・・」
「ああ、あれってすごいよね」
上司は先ほどの沈黙など忘れたかのように乗ってきてくれた。
「最近はすごいよね、Internet of Human Interfaceだっけ?人とインターネットがつながるっていうのだもの」「一昔前じゃSFの世界だよ」と上司は笑いながら言った。
「ええ、今は人とインターネットを接続するだけですが、今の研究がうまくいけばインターネットを介さずとも人対人で接続できるようになるはずです。」「たとえインターネットが無くなってもこれさえあれば他人を介して遠距離の通信も行えるようになるはずで・・・」
「でもさ、ちょっと怖いよねこれ」さっきまでにこやかに笑っていた上司が急に真面目そうな顔で言った。
「だって人と人がつながるわけだろう?」「他人には隠しておきたいこともあるもんじゃないか」「そういった情報が流出しちゃうかもと考えるとね」
大方愛人のことがばれないか心配でもしてるのだろう。
そんなこと社内中で噂になっているというのに・・・
「大丈夫ですよ、つながると言っても表面的なものだけですしセーフティもあるそうです。それに人の心理の奥底まで繋がってしまったら自分と他人の区別がつかなくなってしまうので」
「まあそれはともかく離婚したからといってあんまり考えすぎないようにね。今どき珍しくないんだから」
などと上司がフォローのようなものをして会話は終わった。
気にしているところとは見当違いの場所だったが、まぁこれで上司的には人仕事終えた気分なのだろう。
私が家に帰ると明かりがつき、音声によってお風呂の準備、食事の準備状況などが告げられた。
なんでもこういう技術はIoTと言うモノのインターネット技術として過去画期的なものだと散々宣伝等で使われたらしい。
しかし、今となっては枯れた技術そこら辺りの家電と一緒だ。
食欲がない、風呂にも入らず休むことを告げるとやんわりと健康を害す可能性について注意が入る。
「うるさい」一言も喋りたくないのに言葉に出さないと繋がらない家電共が恨めしい。
IoH技術を私にも施せばこういった煩わしさから離れられるのだろうか?
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