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第七話 ベヒーモス?

第七話 ベヒーモス?




冒険者協会で偶然出会った、ご主人さまの昔の仲間ジークさまは、ご主人さまがいま抱えていることの経緯を、うんうんうなずいて最後まで聞いていた。


「そうか、そうか。 ま、おまえらしいな! て、ことで、ベア! なんかいいのないのか? なんなら盾だすぜ?」


「む、ジークも来るなら、高難易度で高収入をたのむ!」


ご主人さまは相変わらず、狂ったように高難易度を求めている。


高収入を付け足しただけ進歩した、ご主人さまを褒めて差し上げたい!




受付嬢を務める老婆もご主人さまたちの古い知り合いのようだ。


ご主人さまの熱意に押されてか、ご主人さまに見合ったクエストを探し始めた。


「訳ありのこれとかどうじゃ」


そういって差し出された紙には、討伐すべきモンスターの絵が添えられている。


ご主人さまとジークさまは、まじまじとお見つめになったあとお互い確認しあう。


「これ、ベヒーモスか?」


「そうじゃ、かつての竜戦争で魔物側はかなり劣勢を強いられた。 このベヒーモスも例外ではない。 じゃが、今回のベビモースは例外じゃ」


「例外?」


「そう、ベヒーモスは陸の獣。 今回の依頼の討伐モンスターは海の獣。 海に特化したベヒーモスじゃ」


「海に」


「特化?」


ご主人さまとジークさまは交互に老婆の言葉をオウム返ししている。


よっぽど、驚くことなのだろう。


「さよう、賢者たちによるとじゃ。 何体ものベヒーモスは大抵のヤツは獰猛に冒険者たちと戦って散っていった。 しかし、このべヒーモスは水中で活動して身を潜めている。 なんでも、戦に敗れ負傷した一匹の陸の獣が、生きながらえるのに海蛇竜リヴァイアサンを取り込んだという話だ」


「竜戦争……10年もたったがそんな話聞いたこともなかったぜ?」

ジークさまは疑うように尋ねた。


竜戦争、10年前にご主人さまも参加した有名な戦争。

竜たち魔人獣の群勢と人間軍ヒト側との熾烈な戦い。


ご主人さまが英雄のように活躍したと聞く。 


そして、ご主人さまがあまり話したがらない話のひとつだ。


両者の溝は深く、知的交流があったとされる竜種とも決別した戦争だった。


戦の女神は人間側ヒトに微笑み、魔獣たちは封印されたり討伐されたりで個体をだいぶ減らしたとされる。


その中でも、ベヒーモスはとりわけ有名なAランクはくだらない巨大な角をもつ魔獣だ。


それがまだ、ここら辺に生態を変えて棲みついていたなんて。


ご主人さまも寝耳に水だろう。


「それで、これが水棲型ベヒーモスじゃ」


老婆はもう一枚の紙をご主人さまたちに見せる。


わたしとご主人さまは、見せられた紙に描かれている物体に固まった。




「これ、この間スールの釣り場にいたヤツじゃねぇか!!」


ご主人さまは絵を目視するなり叫んだ。


ご主人さまが言ったとおり、この間ご主人さまのためにわたしが魚をセッティングしている時に、わたしを打ち上げた角が立派なカバによく似ていた。


「はい、そうですね! 確かにこんな感じのカバみたいなヤツです!」


「なんじゃ、見たことあるのか?」


「プッハハ、こんなカバみたいな見た目がベヒーモスとか本当に大丈夫か? おまえら、何かの冗談とかいわねぇよな?」


まだ、見たことのないジークさまは訝しげているようだった。


確かにあれが、あの猛獣ベヒーモスかと言われれば頭を傾げるのもムリもないぐらい見た目が丸みを帯びている。


「ベア、それよりコイツの相場が30万Gとのことだが少し低くないか? 本家はもっと高かっただろう?」


ご主人さまが珍しくお金の交渉を始めて、わたしは感激する。


「ふむ、まあそういうな。 あまり生態もよくわかっていないのじゃ、相場はこれが限界じゃ」


「ついでに生捕りなら尚のこと良しで10万Gプラスでどうじゃ」


「うーん」


「なんだ、何か気掛かりでもあんのか? 珍しいじゃねぇか、おまえがホイホイクエストに行かないの?」


ジークさまの指摘通り、何やらご主人さまは腕を組み考えているようだ。


いつもなら喜んで強敵に挑むのに、なにやら理由があるらしい。



結論を出しかねているご主人さまに、忍び寄る影が4ついることにわたしは気付き警戒する。

すると、ご主人さまは小さく手を上げる。


手出し無用の合図だ。

わたしは不届き者を警戒しつつも一歩下がった。


「なんだぁ? おっさんたちそんな美味そうな話あるんなら俺たちのパーティに譲ってくれよ!」



悩んでいるご主人さまに、いかにも三下ですという顔の輩たちのリーダーが話しかけてきた。

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