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第五話 いざ冒険者協会その3

第五話 いざ冒険者協会その3




やっとのことで、スールの町から旅立つことができたオフィーリアと冒険者。



二人は冒険者協会がある隣町エバンテールに半日かけてやって来ていた。



「ううーん、やっと着きましたね! ご主人さま!!」


わたしは大きく伸びをして身体のコリをとった。


何せわたしたちはてくてく徒歩でここまでやってきたのだ。


なかなか骨が折れる、ご主人さまは慣れているのか疲れた素振りをひとつも見せない。


(流石ご主人さま!)とわたしは心の中で輝かせた。


「この時間だ。そろそろ、冒険者協会も一般受付が閉まるころだ」


ご主人さまが指摘している通りそろそろ日が落ちきりそうだ。


早くしなければ、クエストの受付が締め切ってしまうとご主人さまの提案に頷いた。


◇◇


冒険者協会の中に入り、受付嬢が待ち受けるカウンターへご主人さまは陣取った。


流石に夕方、任務の報告に来るものは多くても今から受けたいというものは少なかった。


おかげで並ばなくても受付嬢のところまですんなりと進むことが出来たのは幸いだ。


「冒険者さま、今日はどう言った御用件でしょうか?」


「大口、いや高収入のクエストなにかないか?……ふむ、君アニスって言うのか、見ない顔だ」


いつもは、中まで連れて行ってくれない冒険者協会の拠点を、わたしはもの珍しく眺めていた。


すると、ご主人さまが金髪で可愛らしい受付嬢のネームプレートを鼻の下を伸ばしながら見ているのに気付いた。


なるほど、そういうことかと妙に納得する。


わたしに、かわい子ちゃんとお話しするところを見られると気が気じゃなくなるから、か。

ムカムカと嫉妬心が芽生える。




「では、冒険者さまのランクが何かわかる身分証か何かありますか」


受付嬢は、冒険者からの日頃からのそういう対応に慣れているのか気にせず話を進める。


ご主人さまは言われた通りポケットの中を探すが、身分証明書がなかなか見つからないのか焦っている。


「はい、こちらがご主人さまの身分証です」


わたしはにこやかに微笑みながら、受付嬢の前にご主人さまの身分証を提出する。

もちろん、わたしの存在を忘れるなと牽制もかねていた。


「オフィーリア……ちゃんが持ってたんだ……」


ちゃんなど普段つけてよばないくせに、とわたしは毒つく。


気まずいご主人さまは、次に話が進むのを肩身を狭くしながらまっていた。


「ええっと、この身分証は……ランクが」


「おっと、アニス。そこをどいてくれ」


「そ、総括、はい! ただいま」


妙に迫力がある声が受付嬢の後ろからやってくる。


魔女のようなローブを着たおばあさんが、受付嬢に代わりご主人さまの前にやってきた。


とうのご主人様は頭を抱えて俯いている。


何かカラダでも悪いのだろうか?

わたしは心配になりご主人さまに話しかける。


「ご主人さま……どうかし」


「なんだワシが受付嬢になって不満か? カインよ」


老婆はご主人さまの名前を呼んだ。

え、知り合いなのでしょうか?

ご主人さまは相変わらず頭を抱えたままだ。


「……相変わらずだな、ベア。 だが、その名前で呼ぶな」


「ほっほ、照れるでない。 というか、なんじゃおまえ……、そういう趣味だったか、どうりで」


何やら老婆はわたしとご主人さまを交互に見て意味深な発言をする。

わたしはこの状況について行けず、頭の中が混乱する。

(ご主人さまこの方誰ですか……!? めっちゃご主人さまのこと詳しそうですけど!?)


すると、ご主人さまは口を開くなり弁明する。


「断じてオレの趣味なワケではない!! オフィーリアが好きでこの格好を着ている」


「そうかそうか。 娘はオフィーリアというのか」


ジロジロと大きく弛んだ目で眺める老婆にわたしは冷や汗が滲み始める。


自慢の尻尾がさがり続けるこの状況どうしたものか。


「ご、ご主人さまとは、あのどのようなご関係で」


老婆にわたしは恐る恐る尋ねる。


「ん?そうだな、コヤツとは腐れ縁じゃのう」


うーん、なんとも煮え切らない答え。


腐れ縁、もっと突っ込んだことを知りたい。


けど、この状況ではやぶから蛇がでそうだ。


「おい、そろそろいいだろ? ベア、オレはクエストを受けにきたんだ。 早く受付嬢に代わってくれ」


ご主人さまは老婆に向かって手でシッシッと追い払う仕草をする。


「ほう、なんじゃ、おまえがわざわざクエストなぞ受けにくるなぞ金が入用か? 残念じゃが、受付嬢は変わらんぞ?」


「なんで?!」


ご主人さまは食い入るように叫んだ。


「なんでって、そりゃワシが受付嬢の総括じゃからだ。 あの子は新人でおまえの相手は荷が重いと総括としての判断だ、残念じゃったな」


老婆の宣告にご主人さまはなすすべなく固まっていた。


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