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第三話 いざ冒険者協会その1

第三話 いざ冒険者協会その1



にゃーっと、美しい猫が鳴いた。

それは鈴を転がしたような声だ。

ゴロゴロともう一匹の猫も喉を鳴らして膝の上に乗ってくる。

「ハハッ、ルディ、リーおまえら寂しかったのか?

おっと、レイラおまえもかぁー!!」

膝の上やら肩やらお構いなしに、擦り寄ってくる猫たちに囲まれてオレはこう思った。


ここは、天国か。


◇◇


「ご主人さま、ご主人さま……!! 起きてください朝、ですよ!!」


ゆさゆさとわたしは、ご主人さまを強く揺さぶりながら起こす。

優しく揺らしてもびくともしないご主人さまには仕方がないことだ。


揺らしていると、ご主人さまはなにやら聞き捨てならない寝言を言い始める。


「うーん、レイラァ……まだ早いって…ルディも」


「ちょっと、ご主人…さまあ?」


自分でも声が低くなったのがわかった。


「ん……、なんだ……。 オフィーリアか……、ふああああ、おはよ」


ご主人さまは何事もなかったように、ポリポリと頭を掻くと欠伸をしながら挨拶をしてくる。


わたしの怒りなどカケラもわかっていないようだ。


「誰ですか!!!その女ぁーーーーー!!!」


「ひぇッ!!」


◇◇◇



「やあ、おはよう……、オフィーリアちゃん今日は随分と機嫌が悪いね」

ご主人さまとふたりで出掛ける支度をすませ、フロントのチェックアウトに向かっている最中だ。

カウンターから何も知らないオーナーが話しかけてきた。


いまのわたしは、誰が見ても機嫌が悪いように見えるほどイライラしているようだ。


「オフィーリア、いつまでむくれてるんだ。 さっきのは夢の中の猫の名前だってば、信じてくれ」


「いいえ、信じられません! ご主人さまスタイルいい女性をみると鼻のした伸ばしてデレデレですもん」


ツンと、ご主人さまの意見を突っぱねる。


ご主人さまはうなだれて肩をおとした。


正直、お金をつかってしまうことより、これは大問題だということをご主人さまは気付いてないのが問題である。


「ほっほっ、まあ、女性を怒らせるのは十中八九、待ち合わせの時間に遅れたか、記念日を忘れたか、ほかの女を匂わせたか」


「うう……だから、違うって」


オーナーの発言に、またもやご主人さまは動揺して肩身を狭くしている。


かわいそうだが、ここは!仕方がないことなのです。


「ところで、いつもより大荷物に見えるがどこかに行くのかね?」


「え、ええ、まあ。 このままだと、ここの宿代払えそうにないんでちょっと冒険者協会に行って仕事を……」

ご主人さまは気まずそうにオーナーに説明している。

自分で使い込んでしまったのだここも仕方がない。

「ふむ、そうか。 うーん、いつ戻ってくる予定か聞いても?」


「そうだな……、高収入のクエストがあれば直ぐに帰りますけど」


「じゃあ、それなりに危険なクエストということか。 悪いが、担保として何か置いていって貰えるかね?」


「担保ですか?」


「まぁ、ね。 キミがほらもし、もしもだぞ何かあったとなったら」


「それって、ご主人さまがヘマするって思っているってことですか?!」


わたしは、聞き捨てならないセリフをこのぴょこぴょこと感度のいい耳でキャッチすると、会話に割り込んだ。


なんて人でしょう。宿代は確かに滞納してましたが、ここまで薄情な人とは、わたしは自分の手を強く握る。


「ああ、ああ! そうだ、なにか売れそうなモノね! オフィーリア悪いがオレの部屋に戻ってカバンとってきてくれないか。 カギついてるアレだ、わかるな?」


「む、ご主人さま……担保渡すんですか?」


「うん、頼むよ。 冒険者は何かあることを前提に行動しなければならないんだ。 だから、これは普通のことだ」

どうやら、ここで怒ってもわたしはご主人さまのメンツを汚しかねないとしぶしぶ引き下がることにした。

「わかりました、いってきます」


「うん、うん! 頼んだ」

ご主人さまは大きく頷く。


わたしは仕方なく部屋の荷物を取りに今来た階段を戻る。


「はー、あっぶね」


「いま、何か言いました?」

「い、いえ、なにも」


ご主人さまブンブンと頭を横に振って違うとアピっている。


「そうですか」


わたしはひとまず与えられた仕事を優先した。


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