七話 ミス海波の九先輩
今日は週明けの月曜日。いつものように、弁当を作り、学校へと向かう。
・・・土曜日、先生とあれから何かあったかって?何もなかったと言えばなかったし、あったと言えばあった。まぁ、あのあと結局下着のまま先生は晩酌を始めた。目のやり場に困るような、眼福のような、青少年的には地獄のような。そんな今まで経験したことのない感情のまま、お酌をして、食事をしたよ。ただその後が問題だった。まぁ予想は出来ていたけども、羽目を外してガバガバとお酒を飲んで楽しそうなだった先生は、22時を過ぎた頃だったかな。食べすぎと、呑みすぎで、先生はまた俺の前でキラキラ星をサラサラしてしまったのだ。久しぶりではあるが、介抱も2回目なので手際よくお片付けいたしましたよ。その後またサラサラしちゃうかもしれないからと、一緒に居てくれと頼まれた俺は、当然のように断れなかった。下着姿の先生に抱き枕にされ、悶々とした夜を過ごしてしまった。正直、教師と生徒の関係じゃなかったら、歳の差関係なく惚れてしまっていると思う。翌朝は、下半身で元気一杯の鶏介の鶏を見られてしまい、滅茶苦茶からかわれてしまった。
そんな嬉し恥ずかしなイベントがあったせいで、日曜明けての本日月曜。俺は精魂尽きた感じで身体がだるくて辛いのだ。ちょっと日曜に俺の鶏さんがコケコッコしまくったから疲れたんです。決して変なことではありません。
さて、碧と合流し、学校に着くと、何やら入り口が騒がしい。何かと思って見ていると、横から碧が教えてくれた。
「九紫南先輩がいる」
「誰それ?」
「ん、この学校のミス海波」
ミス海波?そんな人が居るのか。ミスコン的なののトップの人ってことかな。人混みの中心にひときわ目立つ容姿の女生徒を見つけた。この人がミス海波の九紫南先輩だろう。美しい黒髪に、きっちりと切り揃えられた姫カット。テレビでみるアイドルのような、幼さの目立つ綺麗系の凄く小さな顔。モデルのようにスラッとした長い手足とスレンダーな身体。ガヤガヤといるオーディエンスが夢中になってるのも頷ける。
うん?良く見ると彼女は正門付近でごみ拾いをしているようだ。何で周りの奴らは手伝わないで見ているだけなんだろう。耳を済ませば流石!とか、朝から清掃何て流石九先輩!とか褒め称えてはいるようなので、苛めとかではないのだろう。
「先輩、お手伝いできることは有りませんか。」
俺は信条に従いごみ拾いを手伝うことにした。しかし声をかけるが反応はなく、じっと目を見つめられてしまった。周りが何かガヤガヤしているが、俺と九先輩の間には、なんとも言えない空気が張り詰めたまま見つめ合い続ける。
ゲシッ!
先輩と見つめあっていたら、後ろから碧に蹴飛ばされた。
「何エロい目してる。スケベ」
「そんな目はしてないだろう」
心外である。俺を蹴飛ばした碧は、俺のせいで中断していたごみ拾いを再開させる。俺も慌ててゴミ拾いに集中した。
「二人ともお手伝いありがとうございます」
そろそろ予鈴が鳴るかという時間になり、彼女が俺達に話しかけてくる。
「先週の金曜の嵐で、校舎が大分汚れてしまいまして。掃除手伝ってくれて助かりました」
「わざわざ一人で掃除してるなんて、先輩は美化委員かなにか何ですか?」
とりあえず気になったことを聞いてみる。
「いえ、私は副生徒会長を担当しています。掃除していたのは只の日課です」
日課?特に委員会の活動とかでもなく、個人的に掃除してたのか。副生徒会長偉すぎるだろう。ちなみに、この高校に美化委員なるものは存在しなかった。
「今日は嵐の影響で凄くゴミが落ちてたから、いつもより掃除に時間がかかってしまいました。いつもは門付近を少し掃き掃除するくらいです」
そんな話を聞いていると予鈴が鳴った。俺達は挨拶をして別れ、それぞれの教室へと向かった。
三限目が終わり中休み。トイレに向かっていると、途中の階段に登っていく九先輩がいた。何やら重たそうな段ボールを持って、ふらふらと・・・危ない!
彼女は足を滑らせたのか、階段から後ろ向きに倒れ落ちてしまう。ドスン。と重い段ボールが落ちる音と、ドガっと俺の身体が地面に倒れ混んだ音が廊下に響く。
何とか間に合い、落ちてきた先輩を抱え、俺がクッションになることがてきたようだ。
「ごめんなさい!大丈夫ですか!」
慌てた顔と申し訳なさそうな顔を交互に繰り返す、そんな表情を見せる彼女が声をかけてくる。
「俺は、問題有りません。先輩は大丈夫ですか?」
「はい。助けていただいて、・・・怪我もしていないみたいです」
それは良かった。それではそろそろ・・・
「今朝の方ですよね。ごみ拾いといい、今日は本当に助かりました。お名前、聞いてもいいかしら?」
「あぁ、ええと風見鶏介です。それで先輩そろそ「風見鶏介さんですね。ケイスケさんとお呼びしてもいいかしら?」
「はい。よろしいのですが、そろそろ退いていただきたいなと」
彼女を助けるために、俺は下敷きになったわけだが、まだ彼女は俺の上に乗っている。彼女が上体を起こして、こちらに身体を傾けたことで、今は丁度お腹の上あたりに、彼女のスラッとした体型に似合う小さなお尻がのっかっている。非常に心地よい感触と重さである。
「えっやだ。ごめんなさいーーー」
顔を真っ赤にした彼女は勢いよく立ち上がると、脱兎の如く駆けて行ってしまった。副生徒会長が廊下を走っては行けないと思います。
さて、段ボール忘れていったみたいだが、どうしようか。俺は段ボールの中味を確認し、化学の教材と思われるそれを化学室まで運び、俺は次の授業に少し遅刻してしまうのだった。