一話 クラスメートのギャル子ちゃん
しばらくは4人のヒロインとの出会いが続きます
入学式を終え、俺は失恋のダメージが抜けていない、ぼ~っとした頭で、同じように歩く大勢の波に紛れながら、頼りない足取りで入学式のあった体育館から自分のクラスへとふらふらと歩いている。
「朝から元気ない?」
声をかけてきたのは幼馴染の三東 碧。彼女はおおよそ小学3年の頃からの付き合いだ。おおよそ、というのは何故かと言うと、元々親通しが交流がありもっと幼い頃にも何度か顔を会わせたことがあったりしたからだ。俺はあまり覚えていないが一緒に遊んでたこともあるらしい。俺自身の意思で明確に彼女とコミニュケーションをとるようになったのが小学3年の頃だったのだ。その頃、彼女の家庭では問題が発生してた。詳細は省略するが、結果として碧の母親が家からいなくなり、片親となってしまったのだ。当時、彼女はまるで深く暗い谷のどん底に落ち、今にも朽ち果ててしまいそうな表情で、悲しみに暮れた光のない瞳をしていた。そんな彼女を見て、俺は母親の言葉を思い出していた。
人に優しく誠実に。女の子は壊れ物をあつかうように優しく大切にしなさい。
その教えを守るべきだと、幼い頃から信じている俺は、彼女の役に立ってあげたいと、助けたいと子供心に感じ、そして行動した。俺は最初は碧にウザがられながらも、積極的に会話し、関わり、碧の世話を焼くようになった。碧の父親は仕事が忙しく、ほとんど家にいなかった。だから俺は、俺の親を説得し、碧を風見家に呼び、食事だったり団欒の場を作ったりした。三東家に上がり込み、掃除や洗濯を手伝ったりもするようになった。
4年生になった頃には料理も母に習い、自分でも食事を作ってあげたりも出来るようになった。何故親でなく俺がそこまでやっているのか。それはどうしてかと言うと、実に悲しいことに、その頃の風見家でも問題が発生してしまっていたためだ。元々俺は物心つく前から父親が死別しており、母親が一人で俺を育ててくれていた。そんな母の仕事が、このころに丁度忙しくなり、母さんが家にいないことが増えていたのだ。そのため家事全般を当時4年生になったばかりの俺が頑張らないといけない状況だったのだ。自分の家の事をやるために家事スキルを身に付け、母親から碧の世話も引き継いで、という訳だ。自慢じゃないが俺は器用だったので、家事も料理も母親がやるより完璧に出来るようになったと自負している。ちなみに、現在も母親は長距離出張が多く、月に数度も家に帰ってきていない。・・・もう高校生だから寂しくはない。ないったらない。まぁそんなわけで俺は碧を妹みたいなものだと認識し今も身の回りの世話を焼き続けている。
「大丈夫、ちょっと寝不足で疲れているだけだよ。」
俺は心配そうに・・・しているのか表情からは良くわからない碧に答えた。彼女はどうも口数が少なく表情が乏しい性分だ。感情が読み辛いが、まぁ慣れていれば意外とわかる。
「ん。私、ここ、一組。またね」
そう言うと碧は一組のクラスへと入っていった。いつの間にか一年のクラスエリアに到着していたようだ。俺は4組なのでもう少し先だ。
自分のクラスに到着し、俺は黒板に張り出された名簿で自席の場所を確認し、席のほうに目を向ける。
俺の隣の席に凄い派手で可愛い子がいる。
まず目に入ったのは、がっつりブリーチし、綺麗に染められた金髪。赤だか紫だかのメッシュも、良く見るとはいっている。こんな髪色、高校で許されるのか、と思うがうちの高校は二年生までは髪染めOKと何故か校則が緩いのだ。よって髪色に特に問題はない。実際ちらほら染めている生徒がいる。まぁここまで明るい色の奴はいないみたいだが。
次に目につくのがスタイルの良さだ。スタイルとは言ったが座ってるので、実は全体は良くはわからない。少なくとも一部以外は太っていない。うん、一部だ。俺が何が言いたいか想像がつくだろう。胸がでかいのだ。カップ数などは俺は見ただけではわからないが、まぁ、でかい。机に乗ってるし。制服も着崩してYシャツの胸元が第2ボタンまで空いており、彼女の魅力に拍車が掛かっている。
これらの点だけでも新入生の視線を独り占めしている感じたが、さらにまだ目を引く箇所はある。顔がシンプルにかわいい。ギャルギャルしいメイクだが、遠目でもはっきりわかる綺麗な睫毛。整えられた眉。派手すぎない赤いリップ。アイシャドーと言うのだろうか、涙袋がぷっくり強調されていて、実に色っぽい。
……と、何時までも見ていては申し訳ない。俺は席に向かい着席した。
「あっ風見くん、隣でうれし~。今年もよろしくね」
ギャル子に話しかけられた。あれ?俺のことを知っている?今年もっ・・・て中学同じだった奴か?記憶を漁るが、こんなに可愛いギャル子は知り合いにいた記憶がない。頭の中が疑問符で埋め尽くされた俺の反応が彼女に伝わったのか、彼女は口を開いた。
「あー誰だかわかってない感じだ!アタシこの格好高校デビューだからね~」
そういうと彼女は誰だかわかるかな~とニヤニヤ笑っている。なるほど、髪色もメイクも違ったのなら誰だかわからないのも納得出来る。と、彼女を思い出せない失礼な自分に言い訳をしながら、さらに記憶を漁ってみる。恐らくだが彼女はメイクしなくても相当なレベルの容姿と思われる。こんなかわいい顔した子、中学にいただろうか。確かに声は聞き覚えは有るのだか。そんなことを考えながら誰だか思い出すために彼女の方に身体をむけ相手を良く見ようとしたが・・・
「もしかして赤西さん?」
再び、彼女の胸が嫌でも目に入り、俺は同じく胸の大きかった中学のクラスメートの名前を思いだし、口にするのだった。
最悪な思い出し方でゴメン・・・
若干の罪悪感を感じつつ、目線をそこから外し、俺は相手の目を見ることにしたのだった。