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とあるラジオの心霊企画  作者: 銀闘狼
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とあるラジオの心霊企画 不穏

沼田の語り後半です

 『1999年の夏。其の年の記録的猛暑と空梅雨により、村を旱魃が襲い沼は水位が限りなく下がり、作物は萎びて食べ物が殆ど無くなって飢饉が直ぐ側に迄迫っていました』

 『他所から買う事も出来はしましたが、殆ど自給自足の村だった為に大した金もありません。其の年は良くても、翌年以後の事を考えると不安がありました』

 『いよいよ此の村もお仕舞だと村長を含めた村人達が諦めた時、村に一人の旅人が訪れました』

 『旅人…ですか?』

 『はい。真夏、而も猛暑だと云うのに全身を真っ黒い長袖の外套やズボンで包み、同じく真っ黒い帽子を被った旅人は、村長に話を聞き村の様子を見て回ると不気味な音律で何処の言語かも分からない言葉の羅列を呟くと、其れから少しして上空を分厚い雷雲が覆い、生温い風が村中に吹くと瀑布の如き豪雨が降り注ぎ、村の沼や田畑を潤しました。(ジャブ…ジャブ…ジャブ…)』

 『雨乞いの様な物だったのでしょうか?』

 『恐らくは。村長は其れにとても感謝し、其の力を見込んで『此の村を永遠に残す方法は無いか?』と尋ねました』

 『旅人は『ある』と答えて、其れに半年程の時間が必要だと言いました』

 『半年…』

 『村長は其れを大変喜び、客人として旅人を歓迎しました。其れから旅人は時折起こる問題を解決して村人達の信用を得て、少し経つ頃にはすっかり村の一員の様になっておりました。


 只一人、賀田と云う男だけは旅人を毛嫌いし、全く信用はしていませんでしたが。(ザブ…ザブ…ザブ…)』

 「何だ…?何か……」

 『そして半年程経った大晦日の夜の事です。其の日は2000年と云う記念すべき特別な年の訪れを祝う式典が行われ、間もなくカウントダウンが始まろうと云う時でした。


 賀田が数人の仲間と共に旅人を襲ったのです。(チャプ…チャプ…チャプ…)』

 『なんと!!』

 『猟銃で胸を撃ち抜かれ、生ける炎によって燃やされた旅人は、そんな状態でも倒れる事無く忌々しそうに、されど何処か愉快そうな声音で『奴の眷族か。良くもまぁ見付けた物だ。だが残念ながら手遅れだよ』と彼等に言い残すと、炎の中で旅人の身体は膨れ、奇妙に蠢き、輪郭が人と乖離していき、纏っていた化けの皮を脱ぎ捨てました』

 『炎が消えて現れた、全体的に黒く巨大な大凡人型で、三本の脚で立ち、一対の鉤爪の生えた触腕を持ち、頭部に血濡れた舌の如き長大な赤い触手が伸びる無貌なる其の存在は、何処からともなく現れた断じて鳥などでは無い、大きな馬に似た頭部を持つ、霜と何かの結晶に塗れた鱗に覆われた翼を持つ奇妙な生物の背に乗り、夜天の中へと消えて行きました。此の時、漸く顔が認識出来なかったのは、そもそも顔がなかったからなのだと理解しました。(ゴポ…ゴポ…ゴポ…)』

 『声が聞こえた時点で悔し気な表情で文字通り煙の様に其の場から消えた賀田と仲間を除く若者達と、数少ない村の外からやって来た者は、彼の存在を見て皆気が狂いましたが、古くから村に住まう者達は彼の存在がどれ程強大な物であるのか理解した上で平常のままでいる事が出来ていました。


 まぁ、正確に云うならば最初から狂っていただけなのですが……』

 『さて、そうこうしている内に2000年が………


















 ――訪れませんでした。


 何時迄経っても1999年12月31日23時59分59秒から先に進む事無く、式典の始まりへと戻り襲撃されて若者が発狂する事を繰り返していました。


 其の時には既に、村は外界から切り離されて隔絶されていたのです』

 『そして其の事に我々は誰一人として気付いていなかったのですが、外界で村の跡地にダムが建設された事で、【謌沼】の水が満たされ【沼謌様】が力を取り戻しました』

 『【沼謌様】は村の現状を知ると、其れを利用する事にしました。


 村人に真実と村の呪縛から解放される方法を教えました。そして其れは見事に成功しました』



















 『――何故ならば、今貴方達が来ているのですから!!(ゴポゴポゴポザザザザザザザザザザザザザザザザ!!)』

 「ッ!?阿久津!?高梨!?」

視点が高松と西園寺に戻ります

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