1. 『彼女』と私~勧誘ですか?~
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彼女と出会ったのは、珈琲の美味しい喫茶店に行く途中の道すがらの公園だった。
彼女はお姫様のような、レースの綺麗な真っ白なワンピースを着て、ベンチの前でつっ立ってぼんやりしていた。靴もやっぱり真っ白なバレエシューズだった。肩までのセミロングの黒髪が、白いワンピースと対称的だった。
何をしているのかと、後ろ姿を見ていたら、彼女が振り向いたのだ。ちなみに私は流行りのショートボブにアディダスの灰色ジャージを着ていた。姫の白ワンピと灰色ジャージ。この差はなんだ。
いやいや私とてアディダスという有名ブランド着用だ。恥じることはない。卓球選手にふさわしい。
あ、目があった。
彼女が私の方に駆けてきた。
まずい。もしやまた勧誘か??
「あの・・!」
彼女はすがるような瞳で私の前に駆け寄ってきた。
泣きはらした赤い目は、勧誘数に達せずに、上司に叱られたのかもしれない。
しかし私も勧誘には辟易している。かわいそうだがここは心を鬼にして断ろう。
「勧誘ならお断りです。本牧浮遊霊連合とか湘南爆霊族とか横須賀死ンデレラゴーストとか入る気はありません」
先手必勝。アタマにヨロシク(σ・ω・)σ。
「そんなに勧誘されたんですか?」
「あとは愛知八丁味噌霊合組合とか」
「神奈川に集中してたのにいきなり愛知ですか?」
「最近愛知が幅を利かせてきて困ってる。八丁味噌で日本を制するにはまず神奈川から制してやると野望を語ってた。神奈川・愛知全面戦争になりそうな気配。あなたの勧誘目的は?醤油?白ワンピだから白米か甘酒?」
「いえ、だから違いますって。醤油でも白米でも甘酒でもないです。そもそも勧誘じゃないです。あの、あなたもやっぱり死んだ人なんですか?」
「・・・」
━━━━Yes,it is.