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True emotions  作者: 風戸輝斗
第1章 Nostalgie Memories
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7 『回り出す歯車』

 定期テストも昨日で終わり、いよいよ今日から十二月だ。冬至にクリスマスに大晦日、加えて冬休みまであるのだから、十二月は最強の暦だと思う。

 しかし、多くの受験生にはおちおち冬の風物詩に現を抜かす余裕などない。春夏秋冬、暑かろうが寒かろうが、彼らには勉学に没頭する以外の選択肢は存在しない。ここでの努力が後の人生に大きく関わるのだから、身を粉にするのも当然と言えよう。定期テストが終わったからとて、張り詰めた空気が弛緩することはなかった。


 このように校内は変わらず緊張感に包まれているが、俺たちの日常は変わらない。


「この問題は……③が正解だな。①は句読点の直前まで本文に一切記述されていないし、②は逆に後半が本文で触れていない内容だから、必然的に答えは③に絞られる」

「なるほど……確かにリサイクルと環境保全についての内容なんて一言も書いてないね」


 俺の前では、先日行われた定期テストの復習会が行われている。

 と言っても、問題用紙に線を引いたり、うんうん頷くのは決まって小豆沢で、教える立場にいるのは常に桜坂だ。 

 この構図が確立されて今日で一週間が経つ。

 初めて図書館に立ち寄ったあの日以降、小豆沢は欠かすことなく図書館に通っていた。


 定期テスト対策のために桜坂に教えを請う、というのが当初の目的だったのだが、小豆沢は定期テスト明けの今日も図書館に来ている。恐らく、放課後に図書館に行くという習慣が彼女の中に根付いてしまったのだろう。まあ、俺もなんだが。


 図書館通いの日々は、二人の間にあった溝を少しずつ埋めていき、今では外出着などまるで感じない。今の復習会も提案したのは桜坂だ。

 テストが終わったから、と言って小豆沢をはねのけるような真似を桜坂はしなかった。むしろ乗り気だったような気がする。

 ふと思い立ち、読書を止めて訊ねる。


「そう言えば、小豆沢はどこの大学を志望してるんだ?」


 俺や桜坂と違い、小豆沢の進路は今もまだ未確定状態にある。

 だから少しでも内申点を稼ごうという目的も兼ねてテスト勉強に精を注いでいたわけなのだが、思えば希望の大学がどこなのかまだ聞いていない。

 小豆沢は人差し指を口に当てて、小悪魔めいた笑みを浮かべた。


「ふふっ、秘密」


 さいですか。

 なんにせよ、彼女の中で意志が固まっているのならそれでいい。


「別に隠すことでもないだろうに……ま、小豆沢がそうしたいなら構わないけど」


 桜坂は頬杖をついて、呆れたように笑みを漏らした。

 どうやら桜坂は、小豆沢の進路希望をご存じらしい。

 なんだか俺だけ仲間外れにされたみたいで少し寂しい気分だ。

 入り口の上部に取り付けられた壁時計を見やると、桜坂は思い出したように立ち上がった。


「少し休憩にしようか。飲み物買ってくるけど、コーヒーでいいか」


 その質問は小豆沢に向けられたものだ。昨日は小豆沢が駆り出されていたが、今日は桜坂の番らしい。読書に戻りつつも、意識は二人の会話に傾ける。


「うん。ありがと。えっと百円、百円……」

「いいよ。お代は結構だ」

「え、でも……」

「私が奢りたいんだ。それなら問題ないだろ」

「……なら仕方ないね。じゃお言葉に甘えさせて頂こうかな」


 ふふっと微笑が二つ聞こえてくる。

 よくもまあ、一週間足らずでここまでの関係を築き上げられたものだ。

 もしかすると二人は、元から相性が良かったのかも知れない。


 身を翻して桜坂が歩き出す。と、視界の端に映ったその姿があまりに小気味良かったからだろう。俺は思わず顔を上げて、彼女の姿を目で追ってしまう。


「桜坂さんって、まさに理想の女の子って感じがするよね」


 はっと我に返り、声のした斜向かいを向く。

 小豆沢は机に顔を埋めて、図書館の入り口をじっと眺めていた。


「美人で、賢くて、その上面倒見がいいなんて反則だよ」


 それが憧憬なのか、羨望なのか、細められた瞳だけでは推測することができない。目元より下は両腕に隠されていて、彼女がどんな表情をしているのかわからない。


「そうだな。俺も桜坂は少し出来過ぎだと思う。

 まったく、神の采配が平等なのか疑っちゃうよな」


 微笑みかけると、小豆沢はジトっと目を細めた。


「ふーん」


 え、俺なんか変なこと言ったか? 

 続けて小豆沢は、ぷいっと視線を明後日に逸らす。


「ま、いいけどさ」


 なにがいいんだか。

 彼女の言葉は時々よくわからない。

 表面上のものではなく、その裏に隠された意図が。


「そうしょげることないだろ。小豆沢にだって小豆沢にしかない魅力がある」

「例えば?」


 投げやりな言葉だ。こちらを見ようともしない。

 俺は意識的に声を励まして言った。


「自分の意見を曲げて相手の意見を尊重するところとか、クラスで浮き気味の子に自発的に話しかけに行って大きな問題に発展するのを事前に防ごうとしたりとか、場を和ませるために常に笑顔でいようと努めてたりとか、あとは……」

「もういいもういいっ! もう充分だからっ!」


 俺の言葉を遮って、小豆沢はぶんぶんと両手を電光石火の如き速さで振る。すごい狼狽っぷりだ。見ていてこっちが恥ずかしくなる。

 胸に手を置いて乱れた呼吸を整えると、小豆沢はキッと目を細めて俺を睨み付けてきた。


「なんでそんな具体的に言えちゃうわけっ⁉」


 身を乗り出して、ぐいっと顔を近づけてくる。

 逆ギレとは感心できないな、と不満の一つでも垂れてやりたいのだが、今はそれどころではない。堪らず椅子を後ろに引いて、視線を流す。


「み、見てたからだよ。小豆沢のこと毎日」

「えっ」


 直後、小豆沢は色を失い、ささっと数歩後ずさる。

 まずい。動揺で言葉を省略しすぎた。

 慌てて補則する。


「言っとくけど、ストーキング的な意味合いで見てたんじゃないからな。

 俺は小豆沢真雪という人間を理解したくて影ながら観察してたんだ」

「それをストーキングって言うんだよ」


 きっぱり言われてしまう。

 うむ。まったくもってその通りだ。

 しかし俺の本当に伝えたいことはこの先にあるから、項垂れて口を噤むわけにはいかない。


「俺はあの日まで小豆沢のことをなにも知らなかったんだ。

 クラスの目立つグループの一人っていうのが、俺の中の小豆沢の認識でさ」


 会話は疎か、顔を合わせたこともなかった。

 見えない壁に隔たれていた俺たちは、同じ教室にいながらも別の領域にいた。

 相見えることのない、まったく別の世界に。


「そんな子が突然、一緒に昼ご飯を食べようって誘ってくれた。友達だって言ってくれた。それが嬉しくてさ。けど、なにも知らないクラスメイトの女の子を友達だって言うのは違う気がしたんだ」


 友達の定義なんて正直よくわからない。

 境界線なんて初めから存在していないのかも知れない。

 それでも、できる範囲で相手のことを知ろうと努めるのは、友達として当然のことだと思ったから。


「だから俺は、行動を観察しながら小豆沢真雪という人間を知ろうと思ったんだ。

 建前の関係なんかじゃない。俺は小豆沢と本物の友達でいたいんだ」


 授業中に事務的な会話しか交わさないその場限りの友達ではなく。

 一見仲がいいように見える表面上の関係でもなく。

 互いに互いを理解し合い、困った時は助け合い、笑い合い、傷つけ合い、そんな関係を俺は小豆沢と築いていきたい。

 心から強くそう思うのだ。

 終始無言で俺の熱弁を聞いていた小豆沢は、朗らかな笑みを浮かべて言った。


「仕方ない。正直に打ち明けてくれた勇気に免じて、さっきの言葉は聞かなかったことにしてあげます。もうあんな犯罪めいたことを言っちゃダメなんだからね?」


 と窘めるように言いつつも、言葉は彼女の感情に比例するかのように弾んでいる。

 まったく、馬鹿正直すぎて可愛らしいものだ。思わず頬が緩んでしまう。


「さあ、どうだろうな」


 たまには不満げな彼女から罵倒を浴びせられるのも悪くないかも知れない。


                   + + +


 小豆沢と雑談をすること二分弱。

 両手に缶コーヒーを持った桜坂が忽然と現れた。

 なにも桜坂は瞬間移動してきたわけではないのだが、視界が本棚で阻まれていて、加えて足音は弾力性に富んだコルクの床に吸収されてしまうとなれば、突如現れたかのように思えてしまうものだろう。桜坂がいる気配なんて、直前までまるでしなかった。 


「……なんだか水を差してしまったみたいで悪いな」


 開口一番、桜坂は眉をひそめてその場しのぎの笑みを浮かべた。


「気にすることないぞ。大した話はしてないからな」


 桜坂は自罰傾向が強い。それが先天的なものか、後天的なものなのかは定かではないが、放っておいたら自爆しかねない。

 そんな事態を避けるべく脊髄反射で返事をすると、小豆沢がぷくっと頬を膨らませた。

 なんだろう。このシーソーゲームのような感覚は……。

 しかし、俺の計らいは蛇足ではなかったようだ。桜坂の表情がみるみる緩んでいく。


「なら問題ないな。ピロティーで買ってきたから少し冷めてるかも知れないけど、そこは大目に見てほしい」

「わざわざピロティーまで行ってたのか?」


 それは時間がかかるわけだ。 

 図書館の三階からピロティーには、螺旋階段を下りて右手にしばらく直進すれば辿り着く。

 と説明するのは簡単だが、実際歩いてみるとそこそこの距離がある。螺旋階段の上り下りだけでも、息が上がるほどだ。エレベーターでもあれば楽なのだが、生憎、館内の移動手段は階段以外に存在しない。


「うん。図書館で飲食をすることは本来禁止されているから、自販機はこの棟に設置されていないんだ。まあ、私には特権があるから関係ない話だけどね」


 普通の生徒には特権なんて貸与されないんだけどな。

 桜坂は右手に持った缶コーヒーを小豆沢に手渡すと、身体をこちらに向けて左手に持った缶コーヒーを投げてきた。突然の出来事におたつきながらも、なんとか落とすことなく缶を握り締める。


「これで東江も輪の一員だ。明日は東江が私と小豆沢に奢るように」


 言って桜坂は三本目の缶コーヒーをスカートから取り出す。

 なるほど。自分の分はそこに貯蔵してたってわけか。

 スカートの盛り上がりなんて、まるで目に入らなかった。


「まあ、奢られた以上は奢り返すのが義理だからな。頼んでないのにありがとう」

「その言い方だと嫌味っぽいぞ」


 微苦笑しながら桜坂は缶のタブを開ける。

 別にそんなつもりはないのだが、投げやりに思われてしまうのはよろしくない。次からは言葉選びに気をつけよう。

 桜坂は席に着いてコーヒーを飲み、机上にそっと置くと、


「小豆沢、勉強再開まで少しだけ時間をもらっていいか?」


 と言った。


「うん。いいよ」

 

 冷えた指先を缶の余熱で温めながら小豆沢は頷く。

 ありがとうと微笑み返すと、桜坂は机から白が基調のノートパソコンを取り出した。天板の下には高さ十センチほどの小道具を収納するための空洞があるのだ。

 続けてマウスを取り出すと、早速開いてキーボードを打ち始める。スリープモードにしていたのだろう、アプリケーションが立ち上がるまでの待ち時間はなかった。


 暖房の駆動するブーンという音と、カタカタカタというキーボードを叩く音だけが、広々とした図書館に響き渡る。

 桜坂が唐突にパソコンで作業し出すいうのは、なにも珍しいことではない。これまでも何度か経験している。もっとも、作業内容までは把握していないが。

 人間とは無意識に粋な計らいをするものだ。

 近くでなにかに熱中する人がいたのなら、その間、無言で過ごすのは当然の配慮と言えよう。

 桜坂の作業中は無言を貫く。それはいつからか、俺と小豆沢の中で暗黙の了解になっていた。


 沈黙が降りて二十分が経った。

 文庫分のページを繰ると苦悶の声が聞こえた。


「駄目だ。イメージが湧かない」


 顔を上げる。

 桜坂はこめかみに手を当ててなにやら難しい顔をしていた。

 そんな桜坂の顔を、小豆沢は気遣わしげに覗き込む。


「大丈夫? 無理はしない方がいいよ」


 桜坂は余裕だと言わんばかりの強気な笑みを浮かべる。


「ありがとう小豆沢。悪いな。勉強の時間を割いてしまって」

「ううん。全然気にしてないから大丈夫。それよりも最近の桜坂さんの方が心配だよ」


 小豆沢が言うように、ここ最近、桜坂が憔悴した顔つきを見せることは増えつつある。 

 ただこの状態に陥るのは決まってパソコンと向かい合った後だから、体調不良という線は薄いと思う。俺の憶測では、ただ単純に作業に手こずっているだけだと思うのだが……どうだろう。実際のところはわからない。


「職業病だから気にすることないよ。ネタ不測で末期症状に陥っているだけだ」


 Webライターの活動でも行っているのだろうか。

 ネタの混迷に末期症状、一応辻褄は合う。確かWebライターは年齢も実歴も不問だったはずだから、桜坂がネットの記事を書いていてもおかしくはない。

 むしろ、博学を生かすにはもってこいの場ではないのだろうか。

 黙々と考察を立てていると、小豆沢が力なく言った。


「そっか。……じゃあさ、なにかわたしと東江くんに手伝えることはないかな?」


 いかにも小豆沢らしい提案だ。

 他人の不幸を見過ごせない、困っていたら助けて当然。

 そんな理念が小豆沢の根底には存在しているのだろう。

 しかしなんだ、さっきから俺の意見などお構いなしに話が進んでいるように感じるのは気のせいだろうか。まあ、コーヒーも奢るし、桜坂の件も頼まれたら手伝うけれど。


「手伝い……そうか、その手が合ったか。私としたことが迂闊だった」


 俯いて呟く桜坂の顔に、凶器的な笑みが浮かぶ。

 目はギラつき、口元は不自然なほどに釣り上がり、まるで桜坂小春に別の人格が憑依したかのようである。

 ……なんだろう。嫌な予感がする。

 俺の本能が警鐘を鳴らしていた。


「でもいいのか? 東江はともかく、小豆沢はまだ受験が控えてるんだろ?」


 桜坂の懸念に、小豆沢は小さくかぶりを振る。


「いいよいいよわたしのことは二の次で。勉強なら家でだってできるし」

「小豆沢がそう言うならいいんだが……まあ、基礎学力も想像以上に高いから問題ないか。でもわからないことがあったらすぐに聞くんだぞ。わからないものをわからないままにしておくと、いつか痛い目を見るからな」

「うん、わかった! 頼りにしてるよ桜坂さん」

「ああ、存分に頼ってくれ」


 見つめ合って微笑み合う。

 こうなってしまっては、横槍を入れようにも気が引けてしまう。

 さっきの予感がなんだったのか気になるが……まあいい。きっと隙間風に悪寒でも走ったのだろう。

 コーヒーで喉を潤して訊く。


「で、具体的に俺と小豆沢はなにをすればいいんだ」


 桜坂は目を見開いた。


「ほう、東江にしては殊勝な心意気だな。

 まあ、暇潰しにはちょうどいいかも知れないな」

「ん。口に出てたか?」

「顔に出てるよ」


 なるほど、それなら納得だ。……いや、普通わからなくないか?

 困惑する俺を見てからかうように微笑むと、桜坂はけふんとわざとらしく咳払いをした。


「東江と小豆沢には、これから私の執筆の手伝いをしてもらう。具体的には、私が問いかけたことに対し三人で結論を出した後、共にそのシチュエーションの実演に移ってもらう」


 ちょっと待った、と片手で制す。


「実演って、なにもそこまでリアリティを追求する必要はないんじゃないか。

 なにも小説を書いてるわけじゃあるまいし」


 シチュエーションの実現と言うからには、遠出の可能性も視野に入れなくてはならない。

 遠出自体に問題はないのだが、困るのは二人と外泊するなんて事態に陥ったときだ。友達といえども、俺は男で二人は女性。同じ屋根の下で一夜を過ごすなんてことは絶対に避けたい。

 そんな俺の心中を見透かしたように、桜坂は腕を組んで強く頷く。


「東江ならそう言うと思っていたよ。

 前提条件を履き違えるであろうことも想定の内だ」


 ん。別に間違ったことは言ってないと思うんだが。


「どこが解釈違いだって言うんだ?」

「小説を書いてるわけじゃあるまいし、ってとこだ。

 なあ東江。私はいつ小説を書いていないと言った?」


 そこまで言われて勘づけないほど俺は鈍くない。答えは明確だ。


「なるほど。桜坂はこれまで小説を書いてたのか」


 桜坂は鷹揚に頷いた。


「隠していてすまないな。作品が完成したら打ち明けるつもりだったんだ」


 申し訳なさそうに眉をひそめる。

 まあ、小説を書いてますと赤裸々に告白する奴なんてそうそういないだろう。

 桜坂の判断は別におかしくないと思う。


 が、小豆沢は少し思うところがあるようだ。

 なにやら小難しい顔をしている。


「でも小説を書いてるってだけなら、ここまで隠す必要はなかったんじゃないかな。どうして桜坂さんは、そのことを今日まで話してくれなかったの?」


 つまりなにか理由があると、小豆沢は睨んでいるのだろう。

 ただ単に恥ずかしいからじゃないのか? なんて俺の憶測を裏切るように、


「鋭いな小豆沢は」


 と桜坂は呟く。

 なんと、俺が小豆沢に出し抜かれようとは。


「まあいつかは話そうと思っていたことだし、この際、告白してしまうか」


 胸に手を添えて深呼吸をすると、桜坂は覚悟を決めたように頷いて言った。


「改めて自己紹介だ。私の名前は桜坂小春。趣味は読書と料理だ。所属は3ーC、けど四月以降教室に入ったことはなく、現在進行形で図書館通学をしている。

 そして、本職は小説家だ。ペンネームは春野桜。代表作は『虚実の世界と優しさの在処』だ」

「なっ⁉」


 冗談だろ? 桜坂があの春野桜だって言うのか?

 ということは、桜坂は俺の憧れで、夢の根源で、恩人で、友達で……。 


 駄目だ。衝撃が強すぎて、まともに思考が働かない。

 それは小豆沢も同じようで、口をあんぐりと開けたまま固まってしまっている。

 そんな俺たちに、桜坂はおもむろに手を伸ばして言った。


「勝手がいい提案なのは重々承知している。けれど……もしよければ、私の作品のクオリティを上げるために二人の手を貸してくれないか?」

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