痛覚
痛っ!突如右足の親指に痛みが走る。こう、
表すなら爪の中に何度も何度も針を刺されるような鋭い痛み。
その後足に冷たい液体が流れた…気がした。そして続く激痛。震える親指に目をやる。しかしそこに
異変はない。傷一つさえない。そこにあるのは
何の変哲もない、俺の足だ。呪われた封印されし
力などもない、ただの足。疼いてはいるが。
「またか…」俺は呟き時計を見る。
午前2時26分。人様が寝てる時にまたアイツは…
そろそろ睡眠妨害で訴えたくなる。
ベッドから重たい腰を上げる。せっかく久々の
熟睡だっというのに。
クローゼットに行き、痛みで震える足に靴下を
履かせる。外は2月でまだ少し肌寒いので、
たまたま今日クリーニングしてクローゼットに
しまってあった高校の制服を取り出し羽織る。
速攻で玄関に移動。
目指すは向かいの家だ。そう離れては
いない。しかし痛みのせいではるか遠くに感じる。靴を履き、右足を引きずりながら目的地へと
到着した。正面には2回建ての家が見える。
幼少期幾度となく遊びに行き、世話になった
家ではあるが、今では恨みと憎悪で
消し飛ばしたくなる家だ。
生まれた時から数えれば18年間の
付き合いだろうか。向かいの家なので
否応なく目に入り、その度俺は憂鬱になる。
表札には『傷野』とある。なんとも
珍しい苗字だ。おそらく日本中探したと
しても見つからないだろう。
おそらく鍵はかかっていなく、居るのは
アイツだけだろう。俺はインターホンすら
押さずに門を開き、扉に手を掛ける。
そして引く、と同時に全力で走る。──
アイツの居る部屋へと向かう。
このまま痛みを感じていたら頭が変になりそうだ。
激痛の走る足を前へ前へと出し、部屋のドアを
開ける。そこには予想通り恍惚とした表情をした
彼女が悶えながら横たわっている姿が見える。
そして床面には夥しいまでに広がる血。
床から彼女の右足に目を移す。そこには爪の
剥がれた親指が見えた。
やはりか…俺はため息をつきながら転がっている
彼女…こと『傷野 花憐』(いたの かれん)に近づき、口に
手を当て…開く。そしてポケットから俺が常備
している薬を無理やり口に押し込み、飲ませる。
飲ませたのはソキニンii。600mg。
痛み止めだ。なぜ俺がこんな薬を常備
しているかについて、それは彼女がこの世に
存在するありとあらゆる痛みを幸せに感じる異常者だからである。
彼女が痛みを感じて喜び、楽しみ、快感を
得ている事と俺が痛み止めを持っている事になぜ、
どのような関係性があるかについては
勘の良い人はもうお気づきであろうとは思う。
簡潔に言うと、彼女『傷野 花憐』と俺は感覚を
共有し合っている。正確には、痛覚、痛みの感覚を感じた時にだけお互いにその痛みを共有し合う。
つまりそこに転がっている自傷気狂い野郎が自分を傷つけ楽しんでいる間、俺も痛みを
感じるわけである。
つまり痛み止めを常備しておき、こいつが自傷行為で快楽を得ている瞬間に飲ませることで、痛みを、
まさに森羅万象と言える様々な激痛を、感じる
時間を最小限で済ませられると言うわけだ。
なぜ俺がそんな不便で理不尽な生活をしているかに
ついて説明すると長くなりそうだ。ひとまず
今日は眠ることにする。
痛みの発生源である傷野は痛みの余韻を
味わいながらまだ悶えていた。
俺が痛み止めを飲ませた事などなにも
分かっていないらしい。
これで痛みも引いて来るだろう。
明日学校に行った際にこの理不尽な日常の
元凶とも言える奴らと会うことにもなるし、この生活の原因、その回想。そして元の
平凡でいて日常的な幸せな
高校生活を過ごせるかについては
明日考えることにしよう。
俺はまだ多少違和感を感じる右足を引きずりながら帰宅し、疲れていたので制服を着たまま眠りに
着く事にした。
文章を書くのは難しい。皆さんなんであんな
文字数をいとも簡単に書いているんだ…
のんびりやっていこうと思います。
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等あれば是非是非よろしくお願いします。