2.
それから順繰りに『シーツの子供』が現れた場所を訪れた。
「指差したのはここが最後」
指は位置的に壁の下の方を示していたらしい。
Nは三ヶ所で指差す姿を目撃している。
シーツの指は斜め下に向けられていたらしいが、Nの話を再現してみると角度が……指の向きと角度が違う事に私は気付いた。
例えば、ダイニングでは指がかなり下を向いている。
一方、Cの子供部屋ではより水平に近い。
私はそれぞれの場所での指の向きを思い出していた。
私の目が一点を向く。
(もう少し確かめる必要があるな)
「……N、寝室は?足音を聴いた寝室は?」
「こっちよ」
寝室にはCが寝息を立てていた。あどけない寝顔を見て思わず笑みが浮かんだ。
「さて……足音はどっちからどっちに向かったのかな?」
「向こうから…あっちよ」
Nが示した『足音の行く先』を見た。
多分……間違い無い。
そこにはシーツが指差した場所があった。
現れた三ヶ所それぞれでの指の先は全てその下を示している。
「N、明日…家の壁を壊す事になると思う。ちゃんと後で直すから」
────────
翌日、荷台に工具類を載せてNの家に再度向かった。
バールと工具箱を持って、壁の前に立つ。
「……T?ここを壊すの?」
「あぁ。シーツの子は三ヶ所で同じ場所を指差していたんだ。指の向きや角度が違うのは、現れた場所からみた位置を示してたのさ」
私は壁紙を剥がして内側の漆喰をNに見せた。
少し凹凸がある。
凹凸は扉の形をしていた。
「これ……待って、何処に繋がってるの!?」
「……地下室、かな?」
元々は隠し部屋という訳ではなかったと思う。
私は床のカーペットを剥がして床に新聞紙を敷いていく。
「漆喰が跳ぶからCと遊んでいてくれないか」
バールを振り下ろすと漆喰がボロボロと剥がれ、何年も埋められていた扉が少しづつ…
…私の記憶と共に少しづつ顕れていく。
────────
そう、最初に住んでいた家族には子供がいた。
私とは遊んだ記憶が無いが、何度か見掛けた覚えはある。あの頃は余所者に対してこの辺りの住人は距離を置くのが一般的だった。
いつの間にか子供は見掛けなくなり、家族も消えた。
私にはその子の顔が思い出せなかった。
漆喰で服が白くなる頃、扉が全て顕れた。
「T?お昼にして」
新聞紙の上に座り込み、サンドウィッチをかじる。
「こんな扉があったなんて…」
「元は地下の物置なんだろうけどね……N、中には入らない方がいい」
私はこの地下室で何を見付けるのか、予想がついていた。
……NやCには見せたくない。
「気を付けて」
Nが見守るなか、古くなった階段を軋ませながら下りていく。
懐中電灯の明かりが……それを浮かび上がらせた。
シーツ
埃を被り、変色した白い…白かったシーツ。
それにくるまれて寝かされた姿はCより確かに頭一つ背が高かった。
私は十字をきった。
……さほど信心深い訳では無いけれど、十字をきった。
「N……警察に連絡を」
────────
この家を建てた夫婦はその後暫くして見付かった。
今は裁判の最中、らしい。私達は発見者というだけなので深入りはしていない。
どうやって発見したかについては……まぁ、異臭がしたから。という事にした。
私が何故Nの話を疑わなかったか?
それは子供の頃の記憶が頭のどこかに引っ掛かっていたのかもしれないし、別の理由かもしれない。
NとCは私の家に居る。
あの家は手離すそうだ。
───────終。




