桜が咲き誇る時、君に -春-
ある年の4月。
俺は君と出会った。
俺、榊原秋人は今月から高校生だ。
いろいろな苦労があったが何とか進学できた。
「行ってきまーす」
俺はウキウキ気分でそう言いながら家を出た。
高校まではチャリで10分。
意外と近い気がする。
通学路には桜並木がある。満開の時はさぞ美しいのだろう。
俺は少し期待しながら、そこを通る。
期待は当たった。
溢れんというばかりの桜が俺の体を覆う。
心地いいものだ。
その時、ふと人影が目に入った。
女の子だ。
この桜並木に見とれているのだろうか。立ちすくしている。
俺がその子を見ていると、偶然目が合った。
俺は焦りつつ、目をそらした。
高校に到着した。
凄い人だかりだ。クラスの確認でもしているのだろう。
俺もチャリを小屋に止めて、すぐに確認しに行く。
2組だった。
知っている人はいない。
中学の時の奴らとは離れてしまった。
俺は少し足早に1年2組の教室に向かう。
既にほとんどの人が着席していた。
朝のチャイムが鳴ると同時に先生が教室に入ってきた。
先生は自己紹介を軽く済ませたのちクラス全員の自己紹介から始めようと言い出した。
よくあるパターンの奴だ。
俺は自己紹介とかは苦手である。
皆、素早く自己紹介を終わらせていく。
気づいていないうちに自分の番になった。
俺は、落ち着きながら自己紹介をした。
皆から拍手をもらいながら着席する。
さて、次は後ろの人か・・・。
俺は発表者の方を見ながら話を聞くタイプなのでそんなことを思いつつ後ろを見た。
「佐々木紅音です。よろしくお願いします」
俺は少し唖然とした。
その佐々木紅音という女の子は俺が先の桜並木で見かけた女の子だったのだ。
ま、まさか同じクラスだったとは・・・。
俺は少しドキンとした。
そんなことがありながら高校生活の一日目は終了した。
次の日。
俺は今日も桜並木を通る。
今日も佐々木さんは立っていた。
多分俺と通学路が一緒なのだろう。
そんなことを考えながら学校へ向かう。
佐々木さんは少し寂しそうな顔をしていたと思う。
学校にいて、改めて思ったが。
友達いねぇ・・・。
なんと寂しい事だろうか。
まさか、こんなところでへまをするとは・・・。
まぁ、いい。
友達はゆっくり作りましょう。
そんな寂しいことを思いながら。
今日も一日を終える。
___
高校入学から一週間。
俺は一つ気づいたことがある。
それは、佐々木さんにも友達がいないという事。
一週間のうちでクラスのだいたいの奴らは既に固まりを作っていた。
男子のグループ、女子のグループ、混合のグループ。
今、うちのクラスで、固まりに入っておらず、友達がいないのは、俺と佐々木さんだけだった。
佐々木さんは少し寂しそうな顔をしていた。
そんな佐々木さんを俺は気にかけていた。
別に好きとかじゃなくて・・・なんというか、可哀そうだなぁ・・・って感じだよ。
次の日から佐々木さんに声をかけようと思った。
そして次の日。
桜もあと少しで散るだろう。
そんなことを考えながら、佐々木さんのいるところまで行く。
「お、おはようっ」
俺は緊張しながら挨拶をする。
「おはよう」
佐々木さんは笑顔で返してくれた。
その瞬間、俺の心はときめいた。
「佐々木さんって一人登校?」
俺は聞いた。
そしたら佐々木さんは「うん。友達作るの苦手でさ」そう答えた。
「あ、そうだ。『佐々木さん』は何か嫌だから、紅音でいいよ」
付け加えてそう言う。
俺は少しドキドキしながら、「じゃ、じゃあさ紅音。友達になってよ俺と」
そう言ってしまった。
紅音は少し驚いていたがすぐに表情を戻し、笑顔で「いいよ!よろしくっ。秋人」
そう言ってくれた。
その時俺は、「あ、笑顔可愛いなぁ」って思った。
多分、紅音のことが好きになったんだと思う。
その日から毎日、一緒に登校した。
いろいろな話をしながら、もうすぐ散るであろう桜を見ながら。
俺たちは学校でもよく話し、すごく仲良くなった。
席が後ろということもあって、すごく話がしやすかった。
5月中旬。
初めての席替えが行われた。
結果は最高である。
俺の隣に紅音がっ!
俺の心はずっとぴょんぴょんしてた気がする。
6月に入り、すっかり春という感じはなくなったけれど一応まだ春。
この頃になると、二人で遊ぶことも多かった。
お互いの家に呼んだり、行ったり。
親友になったと思う。
この頃、俺の想いは片想いだった。
6月のある日。
俺は決意した。
告白する決意を。
きっと、紅音ならいいよと言ってくれるはずだと信じて。
丁度その日は遊ぶ約束をしていたのでチャンスだった。
俺はチャンスを伺いながら、紅音と遊んだ。
そして「公園で休憩しよう」と切り出した。
公園につき、ベンチに座り、一息。
少しの間沈黙が続く。
「あのさ、紅音。言いたいことがあるんだ」
と切り出した俺。
紅音は「ん?」と言いながらこっちを見た。
「俺、ずっと紅音のことが好きだったんだ。俺と付き合ってくれ」
ついに言った。
自分の想いを。
紅音は少し黙ってから、「うん、いいよっ」と言った。
お互い笑いあった。
幸せな笑い。
俺はその場でキスをした。




