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  作者: 平丸
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5話 失恋

あの血の晩餐から2日がたった。

どうやら峠は越した様で今ある後遺症は血液が不足して少しふらつく事と身体は治って

いるはずなのだが包帯でグルグル巻きにされているせいで俺のステータスの(みりょく)と(すばやさ)がきっと➖80ぐらいになっている事ぐらいだろうか。



全くいい加減にしてほしいものだ俺の顔が見えなく

なると世界中の女の子達が泣き喚いて

世界中が悲しみで包まれてしまうよ。








ごめんなさい、嘘です。

元から魅力なんて1ミリも無いしそれ以上いうなら

先ず世界中の女の子が俺の事をしらないわ。










ハイッ。

そういう事で現在馬車に揺られているのだが後もう少しで町に着くそうで奴隷さん達の中で緊迫した空気になっていた。


それは当然な物であった。

奴隷商へ着くと直ぐに奴隷達は人種、魔力量、性別、特殊技能持ちかなどで大雑把にランク分けられその後すぐに入荷した商品として販売が始まるのだ、それは此処にいる殆んどの奴隷がこれから一生を掛けて奉仕させられる相手が決まる事に繋がるのだが、ランクが高い奴隷は基本的にいい買取人がみつかり反対にランクが低いと禄でもない事をさせられる話も多々あるらしく場合によっては禁術などの実験台にさせられ続け死ぬまで実験材料になどという状態に陥りやすい為、基本的にランクが低い売られる前の奴隷はどんな人間が買主になるのかと心配になる。


そしてこの馬車に乗せられている奴隷のランクは概ね高くても中の下ならしく買取人も実験材料をもとめている頭のおかしい買主が多い為、此処にいる奴隷達は不安がっている。


人間、死が近づいているかもしれない状況下で今自分に出来る事は何も無く、唯待っている事しかできないと言うのは中々に厳しい物があるのだろう。


そして俺自身もう時間が無いのだという事を実感させられ若干焦りが出て来ていた、そろそろ覚悟を決めなければなと真剣に考えている時にこの緊迫した空気の中で間の抜けた声が聞こえた。


『ル〜』


『…』


『ル〜ル〜』


『…』


『ル〜』


…うるさいな誰か相手してやれよ


『...ル〜』


しかし声の主はどうやら俺に用があるらしく俺の方を見続けて泣き続けてくる。


しばらくは無視をしていたが途中から声を張り出すのでうるさくてかなわないと痺れをきらした俺は遂に声の主と目を合わせた。


『ルー』


俺へ向けて鳴いていたこの目の前にいる 「ル〜」

などと気の抜けた声の主はいつも近づいては俺の邪魔をする小動物だった。


目はクリクリっとして大きく見るものの目を離さなくさせる魔性を放ちその小さな身体はフワフワ 、モコモコとしており今時?(よく分かってない)の熟れる前の女性達にとても人気が出そうな形をしていた。


貴族の家とかなら多分 毛皮を服とかにされて

そうだな


『ルー! (怒)』


不穏な事を考えていたせいかこの小動物はそれを察して前足で頭を踏みつけ始めた。


『痛いって...』


小動物にそう言っても止めようとはしないので仕方が無くやりたい様にさせていると途中から楽しそうに声音を上げ頭をテシテシと踏み始めた。


最初は遠慮していたがだんだんと腹が立ってきたので頭に乗っている小動物を掴み遠くに投げてルーと鳴きながら奴隷達が集まっている付近に飛んで行ったのを確認して一息つく事にした。



あの小動物は何故か 俺の所に寄って来るのだが

奴は奴隷商の商品では無いらしく、奴隷商のリーダーがこの長い馬車 生活中に道に倒れていた時に拾われて彼女に放し飼いで飼われているらしく俺が来るまでは彼女に懐き、ずっと引っ付いていたらしい。


しかし何故か俺が来てからは俺の近くに来る様になったせいで彼女が凹んでいたのをお兄さんが気づいて何時も通り裏でぼこぼこにされた為に余りいいイメージが無いのでどうしても扱いが雑になっていったのだ


こいつは俺と同じ行動をとったと言うのに向こうはタダ飯を喰らい街まで無条件で連れて行って貰えるのに対して此方は眼を覚ませば奴隷落ちしているなんて事になっているのだから余りいい感情は浮かばない。


他人から見ると何で動物と比べてんだよ、と馬鹿にされてもおかしく無い事を平気で考えているぐらいには焦りがあったのだ。


そんな事を奴はいざ知らず遠くから奴隷の女の子が小動物を抱きしめて鼻唄を歌うと一緒に気の抜けた声が聞こえるので標的が変わった事が分かった為、このままではストレスが溜まるだけだと想い取り敢えず一度寝て考えようと目を瞑ると女性の声が聞こえて来た。



『た、体調大丈夫で ですか?』



目を開かなくても声の主が彼女だという事が分かった


きっと俺の体調を心配して来たのだと思う、しかし俺が言うのもなんだが彼女 大丈夫なのだろうか奴隷の心配するなんて奴隷商のすることじゃ無いだろうに。


『…ありがとうございます、治療してくれて。』


『本当に、良かったです 生きてて...』


『…はははは。』




彼女と俺はそう何度も会話を交わした訳ではないが、なんていい子なんだろうと感じさせられた。


きっとトラウマのせいで人が怖いのだろうに彼女は

同じ人間ではあるが奴隷という身分の為に人として見られない存在を心配するというのは奴隷制を取り入れている国の人間では余り無いというにそれを奴隷商がするなんて仕事を変えた方がいいんじゃないか。


そんなことを考えながら彼女をじっと見つめていると急に今まで無かった感情が芽生えていた。


なんか、彼女が凄く可愛い様に見えるんだけど…

可笑しいなぁ此処に来てからずっと彼女の事だけを見ていたのにそんな事を思った事なかったんだけど。


自分の意識が気づかない内に彼女へ行っている事について疑問を浮かべながら別の部分でこういう娘と手を繋いで散歩とかして見たいな、でも俺なんかじゃ無理だ釣り合わない。


それよりどうやって口説くんだろう ...などと考えてしまっている自分がいて何でこんな事を考えているのか分からない、そんな状況に思考が停止しかね無くなっていた時、二人の間を遮る様に入って来た者がいた。



彼女の近くに何時も来てはちょっかいを出すのでお兄さんにも要注意人物とされていた奴隷商の男だった。



『お嬢 何をしてるんですか?』


『え イヤ あの その..』


『こんな奴隷臭い所 早く出ましょう』


『え、あの 未だ話したい事が..』


『おいっ、お嬢を外に出せ!』


奴隷商は部下に指示を出すと彼女を帰らせる。


一緒にこの男も帰ってくれるのかと思っていたのだがそうはならなかった。



『おいお前 、何 お嬢に手ぇ出してんだぁ?

前から チラチラ、チラチラお嬢の方をずっと見ていたよなぁ..其処までは見て見ぬ振りをしてやっていたが ..お前、お嬢に触れてたよなぁ?もう勘弁ならねぇ‼︎』


『え、な .なんの事ですか? お嬢様の事なんか見ては

いませんし ましてや触れた事など無いんですがぁ』


『嘘つくんじゃねえ!お前 アニキにぶっ飛ばされた時にお嬢がお前に治癒魔法をかける為に触れてたんだよ!』


『えええ...』


流石にそれはないっすよ...


何か反論したとしても無駄だと何と無く分かってるので黙っているがこの目の前にいる奴隷商は彼女のなんなんだろうお兄さんの言い方じゃ彼氏とかでもないはずだけどまさか..



聞きたい…でも怖い


聞きたく無い………でも聞かないと何も始まらない


そんな【聞く】か【聞かない】といった事をずっと考え続けているとその答えは奴隷商の方から告げられてしまう。



『いいか お嬢は俺の女だ! 今後 一切お嬢の視線に

誓え入らないと誓え‼︎』


『っ‼︎…』


やっぱそうだよね、あんな良い娘なんだ相手がいるに決まってるよね...


こうして多分初めての恋って物をした自分に気が付いてしまう。


初めはなんとも思ってないのに気が付いた時には…

なんてのはよくあるパターンだし間違いないだろう。


しかしこの恋であろう気持ちは何も実る事は無く終わりを告げた。


もうあの子は駄目だ諦めないと..






….うん?



失恋したと自分自身で認めた瞬間、俺は初めの目的を思い出した。


ここにいる奴隷商のリーダーである彼女を落として見逃して貰おうと思っていた事に。


……これ、本当に詰んだんじゃないですかね..








どうしましょうか







俺は初めての失恋を味わいながら奴隷としての将来が決まりそうになっていた。



そしてまたある所で不穏を誘う風がすぐ近くまでに

きている事をこの時はまだ誰も気づいてはいなかった

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