2話 奴隷
俺があの女を口説くと誓って5日がたった。
どうやら俺が向かっていた町とは違う所に向かっているらしく一体どこに連れて行かされているのだろうかと心配になってしまう。
…ああ、なんでことしたんだろう。
普通に頼めば乗せてくれていたのかもしれないのに
今更ながら後悔して気持ちが沈んでしまうが、そんな事よりもあの女の事だ。
彼女は有名な奴隷商の会長である親を持ち一人娘である為に溺愛されているらしく、自分の後を全部継がせようと思い取り敢えず社会勉強の為にと働かせているそうだ。
それだけの情報を手に入れる為に俺はかなり体力を
削っていた。
四苦八苦しながらも女の子に話しかけてここまでの情報を引き出すなんて凄いじゃないか、と我ながら今迄殆ど若い女の子と会話した事が無い引き篭もりにしては大したものだと自分を誉めてやりたくなった。
【がんばったな! 俺っ‼︎】
はい、ごめんなさい嘘を付きました。
実際は彼女に勇気を出して話し掛けようとしたのだが気持ち悪いほどテンパっていたせいか奴隷商の中でも質の良さそうな服を身に付けたお兄さんに行動が不審だと危険視されてしまう。
日が沈み馬車が止まると裏に呼び出されたので行ってみると、俺は荒縄で荒々しく縛られた。
そして縛られた俺はその後、お兄さんからの愛の鞭(白目)を受け続けた3日目の夜の事だ。
『お前も飽きねえなぁ、シャノンに手ぇ出そうだなんて俺はお前を何度ボコボコにしないとならないんだ?そろそろ俺の手が痛みで耐えれねぇから。このAクラスの魔物の骨で作られた棍棒【罪の報い】で殴るぞ?おい』
お兄さんは背後に置いていた棍棒を取り出して俺の方に近寄って来る。
『や..やめてくださいよぉ、お兄さん、その棍棒本当にアカンやつですって。それで叩かれると人の身を叩き潰す事が出来るとかってスキルが着いているだけじゃなくて触れると魂が掻き消されるとかそんな感じの奴じゃないですかぁ〜』
『お、分かるかコレいい武器だろ?
仕事の休憩中に市場て食べ歩きしていて見つけたんだぜ、15000ルビーしたんだぜ?』
お兄さんは得意げにそう話すがこの武器 、特訓時に明らかな才能不足で断念した俺でも分かるぐらいにヤバそうな気を感じてしまう武器だと言うのにまさかそんな値段で売られているとは...市場ってのはなんて恐ろしい場所なんだ(驚愕)
そんな事を考えている間もお兄さんは聞いてもいない武器の事を長々と1時間以上も目を輝かせて話していた、怒らせてお兄さん自慢の武器で殴られたら消滅しかねないので適当に相槌を打っていたら何故か仲良くなり夜になるとわざわざ簀巻きにして裏に連れられてお兄さんの話しを一方的に付き合わされていたら
あの女の情報を手に入れる事が出来たのだった。
今思うと本当に九割九分無駄な話ばかりであったが女の子に直接話しかけて情報を得る必要が無かったので目を瞑ろうと思う…………
はいっ、という事でほぼ何の情報も自分で彼女に話掛けてコミュニケーションを取って手に入れた訳では無かったわけです。
まぁ仕方ないよね?女の子ってなんか怖いし。
しかし、これは大変いい作戦だと思いそれから毎日、彼女と視線が合いそうな時は目を逸らすがそれ以外の時はじっと見続けていた。
そんな事をしているとお兄さんに怒りながらやって
来る。
『おいっ!お前またしてんのかっ‼︎』
…正直に言おう。
この作戦はお兄さんにまず始めにいい具合に皮膚が紫色に腫れる寸前まで殴られた後で聞きたくない自慢話を長々と聞かされるので精神的にも肉体的にもキツイ所がある。
しかし俺は、今日もこの方法で彼女の情報を集めて
行くのだった。
『オラッ!さっさとこっちへ来い‼︎』
お兄さんにいつも通り馬車裏へ引き摺られて彼女との距離が更に離れていくのを感じるのであった。
この日お兄さんからボコボコにされた後に新しい情報を手に入れる事ができた。
1.彼女の周りからの愛称はお嬢である事
2.彼女は回りの人間が怖いのか何かを話す度に
声が一度詰まってしまう事
3.奴隷という商品を大切しろと親に教わっていたのか
俺達にも優しく食事に関してもおかわりは自由で馬
車に揺られている最中も余程の事がない限り水を配
給してくれるのだが全て彼女の指示の元で行ってい
たらしい。
4.彼女は料理が上手く、商人達の衣服を彼女が洗って
おり彼女自身は毎晩必ず入浴している事から綺麗好
きで他人の男が着ている服も洗っているらしい。
5.4から分かるがお金持ちではあるはずだが庶民的な
所も存在しており奴隷商人からは人気が有るらし
くとある一人の同僚に良く口説かれているのだが
それに対しかなり困った顔をしながら周りに助け
を求めているそうだ。
取り敢えず大雑把に言うとこれぐらいになるだろう。
どうやったら彼女とお互いに無理無く話す事が出来るのかなぁ..
きっと機会があれば話せると言うのに、難しい物のだなぁ....仕方ない取り敢えずまた明日も彼女の観察にいそしむとするか。
俺はそう決心して明日に備え寝る事にしたかった。
『おい、お前聞いてんのかぁ?シャノンが誰かの視線を感じて怖くて眠れなくなったって言ってんだぞ!お前どう責任取るつもりなんだ、死ぬかぁ?』
『ボ、ボベブバイ"...(ご、御免なさい..)』
俺はこの作戦を続ける事に身の危険を感じ始めたのでやっぱり考え直そうと思いながらもお兄さんの金属の板を装着した拳を顔面いっぱいに受け入れるしか無かったのだった。
『おらっ、今日は殺す気でやるから死ぬ気で逝けっ!!』
『イヤッ〜〜〜‼︎』
この後朝まで寝かして来れませんでした☆