第4話
「おはようございます。」
アランは朝食をとるため宿の食堂へ来た。
今日のうちに35シルバー稼がないと明日の食事がつけられない。
選ぶ楽しみが商人広場の食事にはあるのだが毎食8.33シルバー程度で
色々バランス良く食べられるのは便利であった。
「おはよー、アラン。」
ケイトはスクランブルエッグにケチャップをたっぷりかけているところで
少し先に食堂へ来たようだ。
朝6時に食堂は開放される。
7時になると食事が配られ始める。
そして8時まで食堂を使う事ができる。
アランは席についた。
今日の朝食は、レーズンパン、ポタージュ、ハム、ブロッコリーサラダ、みかん
そしてスクランブルエッグ。
「商人広場で、これだけ買い集めるのは大変だよねー。」
「そうですね。明日もこれが食べられるように、クエストをこなしましょう。」
「おー!」
『赤いレンガの小路にゴブリンファイターが現れました。
華麗にやっつけちゃってください。報酬55シルバー。』
2人は、とうとうこのクエストをやってみることにした。
只今徒歩で移動中である。
「まだあるなんて思いませんでした。旅を始めた最初の日にもありましたし。
人気がないという事なんでしょうか。」
「反復クエじゃないから、じゃないのかな。
やっぱり反復のほうが行ったり来たりしないで出来るからねー。」
「なるほど。そういう事ですか。
ん?じゃあ何日もゴブリンファイターがウロウロしているという事ですね?」
「そうだねー。たぶん依頼した人困ってるよ。」
「ファイターということは、戦士ですね。
どうしてそんな場所に現れたんでしょうね?」
「そもそもさー。なんで倒さなきゃいけないんだろ?」
ケイトが首をかしげている。
「え?うーん、きっと何か盗みに来たんじゃないでしょうか?」
ゴブリンはキラキラと輝くものを集める習性があると聞いたことがある。
「それならさ、それを返してもらえば解決するんじゃないかなー。」
「うーん、依頼主に会えばわかりますよ。」
「ハイ、ジブンガ、イライヌシ。」
アランとケイトは着いて驚愕した。
「ゴブリンファイター本人が依頼してるの!?なんでー!!」
ケイトは目をまん丸くしている。
「とりあえずですね。どういう事なのか説明してもらえますか?」
アランは冷静に目の前に居るゴブリンファイターにたずねた。
「ジブン、タタカイ、スキジャナイ。デモ、ムラノミンナ、ジブン、タタカエ。」
自分の意思に反してファイターになってしまったらしい。
「ジブン、ヨワイ、ミンナオモエバ、ダレモ、タタカエ、イワナイ。
ふぁいたあ、ヤメラレル、ダカラ、ヤッツケテホシイ。」
「やっつけるって痛いんじゃないかなー。戦い嫌いなんでしょ?」
耳がちょっとだけ垂れるケイト。
「タショウノ、イタミ、ガマン、スル。」
「無抵抗な相手を切るわけにはいきませんよ。」
アランは剣をしまう。
「マテ、タタカワナイナラ、コウダ!」
ゴブリンファイターがアランに体当たりしようとした。
しかし動きがゆっくりのため簡単に避ける事が出来た。
「ボクたち、忙しいんだよー。帰るね!」
「すみません、お力になれなくて。」
「ウォー、コッチニモ、カンガエ、アル。」
そういってゴブリンファイターは大きな爆弾を取り出した。
「え!?」
「コレ、ヒ、ツケル。ミンナ、タオレル。」
「まって、まってよ!?」
ケイトは焦る。
「ボクがキミの村のみんなを説得してあげるよ!
だからそれだけはやめて!!」
とっさにケイトは言ってしまった。
「駄目です。罠ですよケイトさん。」
「へ?だって爆弾なんか使われたら、みんな死んじゃうよー!?」
「爆弾じゃありません。メロンです。」
「・・・・・・。」
「チッ、バレタ。コレ、めろん、ナゼ、ワカッタ。」
「私、メロンが苦手なんです。食べられなくて。」
「えー、アランはメロン嫌いだったの!?
じゃあ今度、宿の食事でメロン出たらちょうだい!」
「いいですよ。」
にっこりして答えるアラン。
「トニカク、ヤクソク、シタ。オマエ、セットク、スル。」
「・・・・・・。」
これも立派な政治家になるためだ。嘘にするわけにはいかない。
「ごめんアラン。面倒なことになっちゃったね。」
「仕方ありませんよ。私も手伝います。」
ゴブリンファイターの道案内で
レンガの小路を辿って竹林にたどり着き、竹林を抜けて洞窟に入っていった。
「ジブン、ナマエ、ごぶろお。」
「ゴブローっていうんだね。
なんで、みんなファイターになれって言うんだろうね。」
「ふぁいたあ、ミンナ、ナリタイ。
ジブン、カワリモノ。ナリタクナイ。」
「それは、おかしな話ですね。なりたい人がなれば良いではありませんか?」
「ジャンケンデ、カッテ、シマッタ。」
ファイターをじゃんけんで決める時に勝ってしまったという事のようだ。
「やりたい人だけでじゃんけんすれば良いのにね。」
「ヤリタクナイ、ジブン、ヒトリダト、オモウ。」
「なるほど。」
「ツイタ。ごぶりんムラ。」
広くなった空間。壁には発光水晶がはめ込まれている。
「ゴブリンの村なんて初めて見ました。」
「ボクも―。」
あちらこちらからゴブリンが出て来て、アランとケイトのまわりに集まってきた。
「ニンゲンダ!ニンゲンダ!
ごぶろお、ドウイウ、コト?」
「ジブン、ふぁいたあ、ヤメタイ。」
「マタ、ソノハナシカ?」
「ジャンケン、キマッタ。メイヨアル、シゴト。モンクイウナ。」
「ゴブローは、自分が弱いって思ってるみたいなんだよ。」
ケイトが他のゴブリンに話しかける。
「実際どうなんですか?」
アランは聞いてみた。
「ウーン、ツヨイ、チガウ。」
「やっぱり弱いの?」
「ウーン、ヨワイ、ソレモ、チガウ。ドッチデモ、ナイ。」
普通の強さらしい。
「ならさ、やりたい人がやればいいんじゃないかな?」
「ミンナ、ヤリタイ。ケンカニ、ナル。」
「ゴブロー抜きでじゃんけんをすれば良いんじゃないかな?」
「ナカマハズレ、ヨクナイ。」
「ジブンハ、ソレデイイ。ジブン、ヌキデ、ヤッテホシイ!」
ゴブローが声をあげる。
「ゴブローさんが、それで良いと言っているんだから良いのでは?」
「ワカッタ。モウイチド、ジャンケン、スル。」
解決した。
ずいぶん簡単だった気がするのだが。
「フタリ、タスカッタ。アリガトウ。」
「いいのいいの。報酬・・・もらえるのかな、これ?」
「オレイ、ワタス。チョット、マテ。」
ゴブローはポシェットから金貨を2枚だした。
「ケガ、セズニ、スンダ。2ごーるど、ワタス。」
「ラッキー!!ほんとにありがとうゴブロー!」
「なんかすみません。ありがたく頂きますね。」
「うわぁ、ゴールドゲットだよ!すごいや!」
「そうですね。時間はかかりましたが。」
現在14時。
昼食時は11時に食堂が開放され、12時に食事が配られ・・・。
13時には閉まってしまう。
まあ冒険者が時間に遅れるのは、ありがちな事なので
部屋まで食事を持って行き食べれば良いのだが。
「あーっお腹減った!
ねー、食堂閉まってるだろうし、ボクの部屋で食べよう?」
「いいですよ。そうしましょう。」
「すごいですね。」
思わず固まるアラン。
ケイトの部屋には大量のぬいぐるみ。
10体以上あるのではないだろうか?
「ボク大家族だからさー。1人で寝るの寂しくて。」
「なるほど。」
「この子の名前はピノ、こっちの子はパロ。そしてこっちはビビ。
それでその子はクック。そっちの子はマル。あっちはポン・・・。」
「とりあえず食べながら聞いていいですか?」
「あ、ごめんね。食べよっか。」
18時に食事が始まる。
宿に戻ってきたのが結局15時だったので
食べ終わってからクエストに行くには半端な時間かもしれないな。
壁に掛けられたキンイロスナトカゲの絵を見ながら
冷めきったスープを飲むアランであった。