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第35話

ヨル・ヒックの水晶玉がキラキラ輝きながら

石ころで街中が埋もれていく様子を映していた。


覗き込む食堂の一同。


「ヒビ入ってなかったっけ、その水晶玉に~。」

シド・ファが言った。


「・・・・・・。直った。」


「未来が復活しちゃたからなの?」

レミ・ファが聞く。



「・・・・・・。」

黙っているヨル。



「もう!ベガルがせっかく逃した人工モンスターを研究所に送っちゃうから!」

リンコがキッとベガルを睨みつける。


「んな事言われてもな。」

ベガルが頭を掻く。


「まぁまぁ、知らなかったんだから、仕方ないよ。」

リンコをなだめるディーク。



「とにかく、研究を中止するように話をしないと。」

アランが言った。


「それで未来が変わると思うー?」

ケイトが自分のほっぺをツンツンしながら言う。



「出来る事をやるしかありません。」

アランは立ち上がった。






アラン、ケイト、ディーク、ベガル、リンコ、レミ、シド、ヨルの8人が

研究所に着いた。



「ランラン・シェライタと話がしたいんだが。」

ベガルが受付に言う。



しかし、出てきたのは、マリッサ・リズであった。


「また、あなた方ですか?」

怪訝そうな顔をしたマリッサ。



「あ、どうも。マリッサさん。」

アランが挨拶する。


「あなた方が来た日に、実験用生物が逃げた。そしてクエストを放棄・・・。」

マリッサがジッとアラン達を見つめる。



「どうするの!?なんか怪しまれてる気がするけど。」

リンコが小声で言った。


「堂々としていれば、大丈夫だよ。」

ディークがニヤリとして言う。



「ランランさんは、今は手が離せません。代わりに私が用件を聞きましょう。」



「このまま実験を続けたら、世界が危ないんです。」

アランが決心して言った。


「ふむ、確か未来が見えるという話でしたよね?」


「そうです。マリッサさんにチョコレートの缶を

 渡すことになる事も水晶玉のおかげで、あらかじめわかっていた事なんです。」



「ヨルの水晶玉は、ちゃんと未来を当てるの!ホントなんだから!」

レミが言った。


「信じてもらえないかも知れないけど、本当なんだよ~!」

シドも言った。



「しかし、研究を止めるわけにはいきません。

 私が個人でやっている研究ならともかく、税をつぎ込んで進められている

 プロジェクトなのですから。」


「そんな事言ってる場合じゃないんだよー。世界が石ころに埋もれちゃったら

 研究も何も無くなるんだよ!?」

ケイトが耳をピーンとさせて言う。


水晶玉を取り出したヨル。

しかし映っているのは毛皮のコートを着て、ご満悦のベイカ・モニークだった。



「ああ!もう!肝心な時に映らないなんて!!」

リンコが叫ぶ。


「困ったね。見てもらえば話は早いと思うんだけどね。」

腕組みするディーク。



「とにかく、お帰りください。これ以上研究の邪魔をされては困ります。」


「困ってるのはこっちなんだよー!」

跳ねながら叫ぶケイト。


「そう!意味もなく邪魔しに来てるわけじゃないんだから!」

リンコも叫んだ。



「一体何をそんなに騒いでいるのかしら・・・?」

ランランが出てきた。


「ランラン!良いところに!!」


「ランラン!聞いてくれ!!」


一斉に皆が喋る。


「待って、順番に喋ってくれなきゃ、わからないわ。」






「実験が成功すると、石ころが増えすぎて街中が埋もれるのね?」

話を一通り聞いて、ランランが頷いた。


「そんな話、信じられますか?」

マリッサが言った。


「物質の無限増殖を起こすことばかりに意識が行っていて

 それの危険性についてまでは考えていなかった。ありえない話じゃないわ。」


「・・・しかしっ!」


「実験を止める必要はないと思うわ。」

静かにランランは言う。



「えー、ランラン!?」


「そんな!?」


「どうしてだ!?」


皆が悲鳴に近い声で叫んだ。



「研究を止めるんじゃなくて、方針を変えれば良いんじゃないかしら?」

ランランが笑って言った。


「と、言いますと?」

マリッサが尋ねる。


「冒険者にとって、ドロップアイテムが、やたらに増える事よりも

 減る可能性が無くなるほうが嬉しいんじゃないかしらって事よ。」



「無限増殖を研究する前に、物質自然消滅について研究するべきだと?」


「増えすぎた物質を消滅させる方法がわかっていれば

 石ころが増えすぎて困ることは無いはずよ。」



「・・・・・・!?」

ヨルが手に持っていた水晶玉が、転がり落ちた。


地面に水晶玉がぶつかり、パリーンと音がする。



「あ!割れちゃったね~!?」

シドがしゃがんで水晶玉の破片を見つめながら言った。


「これは、未来が完全に変わったってことよね!?」

レミも破片を見つめて言う。



「・・・・・・。一件落着。」

ヨルが低い声で言った。

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